金魚L

金魚 2006/6/24

僕は何にも縛られず自由に空を飛ぶ鳥
新しい世界を見て回る 
そして生まれたばかりの新鮮な空気を体中に吸い込む

あなたは狭い鉢のなかで グルグルと回りつづける魚
作り物の空気と餌をもらえなくなるのが怖くて愛想を覚えた悲しい金魚

人の視線を浴びてどれだけ綺麗な姿で泳ぐかで人生が決まる

だけど、それをあなたには言ってはいけない
それを否定してはいけない

僕は鳥で あなたは金魚に生まれただけ

狭い鉢の中 窓の向こうに飛ぶ僕を見つけた
その窓の端から端に映る空と僕だけがあなたの真実
その窓の向こうでどんな空を僕が飛んでいるのか想像も出来ない鉢の中

自分が狭い鉢のなかでしか生きられない
それに気づいたあなたは僕をうとましくも思うだろう

あなたは言う

「空を自由に飛ぶあなたにはわからないのよ」

僕は言う

「そうだね わからないよ 僕は鳥だもの」
いくらでもあなたの不満を聞こう
僕は自由だから 違いがありすぎるから

僕は鳥
僕は生まれた時から空は自由だと知っている
自由に飛び回る分汚れることも知っている

あなたは金魚
生まれた時から狭い鉢のなかで生きている
自由は与えられるものでしかないと教えられる
鉢から飛び出たら生きていけないことを教えられる

でもあなたにそれを言ってはいけない
僕があなたを否定してはいけない
哀れんでいることをみせてはいけない

僕が空で鳥であるように あなたは鉢であり金魚なのだから
僕の幸せは自由     あなたの幸せは安定

呼吸が止まり安らかな眠りにつくその時に初めて鉢をでる

あなたは金魚

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