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その向こうに行くには準備が必要だよ 大丈夫? もう行ってもいいのかな? 戻ることは出来ないし 記憶のなかの世界に縛られることもあるんだよ その向こうに行くには覚悟がいるんだよ 時折後悔しても 「それも人間らしさ」 で自分を慰めたりすんだよ それでも行きますか?? そっか… じゃあ行かなければね “扉の向こうの 扉を 開く為に” その向こうに行く準備は出来ていたんだね それじゃ その先に幸あらんことを
息をすることの理由を知ってしまうと 魔法が解けたようで 嫌になる 空気がないと生きていけない それだけの存在だと 笑顔も泣き顔も 恨みも喜びも 思いでも 可能性も 過ちも 幸せも 酸素のない空間では 5分もせずに全てが消えていく それだけの存在だと 息をすることの理由なんて知りたくなかった 息をしたいからする それがすべての世界にずっと住んでいたかった 常識を着こなしたつもりで 絡まって 意識も知識も見栄をはる 一日は24時間 一年は12ヶ月 365日で区切ら
風の音や 本がめくられる音 葉っぱがそよぐ音 目を閉じて 心を開いて聞ける音 じっと じっと 聞いている 水面の真中に石が落とされた 波紋が広がる 次々に 石が落ちてくる あんなに真っ直ぐだった水面が揺れて崩れて止まらない だから じっと じっと 待っている 水面が 平面を取り戻すまで もう一人の僕を置いて じっと じっと
この小さな小さな橋を渡れるかい よーく眼をこらして見ていないと踏んづけてしまうよ 大きくまたいでは駄目なんだ 簡単に渡れる橋ではないんだよ かと 思えばいつのまにか渡っていたりするんだよ その橋を キミは 今 渡れるかい それは キミしだい よーく眼をこらして 眼を閉じて渡るんだよ あると思うから見えない橋 渡りたい から 渡る そんな橋 さぁ キミは渡れるかい
真っ直ぐ進み続けた ずっと進み続けた ときに走ったり ときに後ろを振り返ったり 止まれないんだ 恐怖 そう呼ばれているそのものから 追われているから どれくらい距離を離せただろうか? 時間が経つにつれて確かめる為に後ろを振り返ることも怖くなった 止まれなくなった 苦しいのか 苦しくないのかもわからない 恐怖がなんなのか どれだけ逃げたら助かるのか それすらもわからない ただ 進み続けるだけだ 恐怖につかまらないために
僕は何にも縛られず自由に空を飛ぶ鳥 新しい世界を見て回る そして生まれたばかりの新鮮な空気を体中に吸い込む あなたは狭い鉢のなかで グルグルと回りつづける魚 作り物の空気と餌をもらえなくなるのが怖くて愛想を覚えた悲しい金魚 人の視線を浴びてどれだけ綺麗な姿で泳ぐかで人生が決まる だけど、それをあなたには言ってはいけない それを否定してはいけない 僕は鳥で あなたは金魚に生まれただけ 狭い鉢の中 窓の向こうに飛ぶ僕を見つけた その窓の端から端に映る空と僕だけがあなた
『少しでもいいので一緒に乗せてもらえませんか?』 舟に乗った人が言う 「どうぞ どうぞ 次の岸までしかいきませんがいいですよ」 『それで構いません 乗せてくださるだけで十分です』 彼は舟に乗せてくれた人がどんな用事で次の岸までいくのか訪ねた 舟に乗せてくれた人は「大事な家族を養う為」だと柔らかくも威厳のある顔で話してくれた そして こう聞き返してきた 「それで あなたはなぜ 舟に乗りたいんだい?」 話してくれたお返しにちゃんと答える 『そうですね この川の先に
『とにかく先に行きたいのでその船に乗せてください』 船の主は一言 「いいですよ」 『では乗せてもらいます ありがとう』 思ったよりも遠くにいかず船はとまった 船の主が言う 「着きましたよ」 “先に行きたいから と言ったのにこんなところで降ろされるなんて…” 『これくらいしか乗せてもらえないんですか?』 「…………」 船の主は言葉もなくあきれた眼を残して去った 『せっかく乗せてもらったけど あんな冷たい人だったな
値踏みされても なんのその 価値をつけられても嬉しくないんだ 今更言い訳がましく突っぱねる 仕方がない 多分 そういう結果になるだろうと思ってた 別に期待されたいなんて1mmだって思いやしない 今更ながら 寂しさは隠せぬ 赤面ものの防御策 さりとて ∞の可能性 が 持ち味のゼロポジション 恥さらして 鼻水垂らして 堂々と 大風呂敷に包んだ小物を抱えて 闊歩 闊歩 悠々自適に 闊歩する ∞の可能性が持ち味 ゼロポジション
僕は生まれた 命を与えられて 何年経っただろうか でも 僕は 今 生まれた 命を削り声に変える その時僕は生まれた 生きているんだ 生きているんだ それだけを伝える為に 鳴く為に生まれたんじゃない 生きているんだ と 気づいてほしいから 生まれた 生きている事 を 伝える為に生きているんだ と鳴く 僕は死ぬ 生きていたことを誰かが気づいてくれたから それは寂しいことじゃない 生きていたから 僕は死ぬ それだけのことさ 僕は生まれた
撫でながら 笑顔がこぼれる その場所はいつのまにか それが住み着いた どれだけゆっくり歩いてきたのかな どれだけ長く歩いてきたのだろう もしかしたら あの猫が気持ちよさそうに通っていた路地裏を 肘をついて 膝をついて 後についていったときだろうか いや もしくは 僕の嫌いなあいつに挑みかかって 何度も 何度も 倒れながら ぶつかっていったときだろうか あっ あれかも まだ太陽がすっかり目覚める前の あの時間 一滴の 朝露がこぼれ落ちてしまわないように 滑り込んで 両
前向きと後ろ向きとでバランスをとって立ってるんだ ぐらぐら よろよろ しながら 不安で 左胸にある塊から鼓動が聴こえてきそうでも 形のない不安じゃない 辿りつきたい場所を見据えたからざわつく 楽しくもある いつだって 相容れない感情を抱えて それが楽しい 決して晴れない曇りでも その雲の上にだって 消せない太陽があるんだと 想像を超えて 確かに在るんだとわかる いつだって
宝箱が隠された洞窟。 大人では入らないような隙間に無理やり体をねじ込み、頭をこすりつけ這いつくばって進んだ。時間の感覚がなくなる程の暗闇の先。 とうとう見つけた宝箱。 とんでもない財宝が入っているに違いない。 残り僅かなランプに火を灯し、足元に置いた。 そして、豪華な飾りのついたその宝箱をゆっくりと慎重に開けた。 ところが。 中にはこんな手紙が入っていただけだった。 『何の為にここまできたの?』 怒り。 自分の非を覆い隠してしまう怒りがこみ上げる。 声に