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色を科学するシリーズ

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色彩工学、カラーサイエンスの基礎の部分、テキストにもあまり書かれていない内容を丁寧に、図を用いて説明します。ソースは学生時代の授業、学生実験、研究、先生とのディスカッション、テキ… もっと読む
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#ユニバーサルデザイン

色を科学する その⑫ どうして色が見えないのか?

 どうして色が見えるのか?と銘打って、色覚の仕組みを解説するコンテンツはいろいろありますが、逆を考えてみました。  我々の目の網膜には、色覚を担う3種類の光受容細胞(センサー)があります。主に長波長に感度ピークを持つL錐体、中波長にピークを持つ、M錐体、短波長にピークを持つS錐体です(色を科学する その⑨ 色覚の多様性が色彩学の難題を解くカギ<後編>)。  このうち1種類が欠損していたり、(マジョリティと比較して)感度やピークずれがあると、色の見え方が変わったり、特定のペ

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色を科学する その⑧ 色覚の多様性が色彩学の難題を解くカギ<前編>

 色覚多様性(いわゆる色覚異常)が色彩学100年にわたる難題であった「ヒトの目の感度」=錐体分光感度を知るカギになったというお話。長いので<前編>と<後編>に分けて書きます。 色彩学100年にわたる難題 残念ながら、等色関数はヒトの目の感度、すなわち錐体分光感度ではなく、それを"間接的"に表すものです。1900年代前半では、錐体分光感度自体やそれを調べる方法も確立できておらず、等色実験により"間接的に表すもの"を求め、1931年に制定して、代替として使ってきたという次第です