マガジンのカバー画像

色を科学するシリーズ

19
色彩工学、カラーサイエンスの基礎の部分、テキストにもあまり書かれていない内容を丁寧に、図を用いて説明します。ソースは学生時代の授業、学生実験、研究、先生とのディスカッション、テキ… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

色を科学する その⑬ 🌈虹の7色は錐体分光感度が創る

 虹の色の話ですが、色彩工学なので、「ニュートンが音階と結び付けて…」ではなく、錐体分光感度との関係を解説します。下手すると虹が3色だった可能性も!  「色を科学する その⑫」では、下記のような話をしましたが… 実は、単に3種類あればよいというわけではないのです。 感度のオーバーラップが重要 スペクトル=虹は下記のように、連続的に色が変化し、いわゆる"7色"を呈しています。つまり、380nm-780nmの単色光を見ると、(三色型色覚の人には)このように見えます。  実

有料
100

色を科学する その⑫ どうして色が見えないのか?

 どうして色が見えるのか?と銘打って、色覚の仕組みを解説するコンテンツはいろいろありますが、逆を考えてみました。  我々の目の網膜には、色覚を担う3種類の光受容細胞(センサー)があります。主に長波長に感度ピークを持つL錐体、中波長にピークを持つ、M錐体、短波長にピークを持つS錐体です(色を科学する その⑨ 色覚の多様性が色彩学の難題を解くカギ<後編>)。  このうち1種類が欠損していたり、(マジョリティと比較して)感度やピークずれがあると、色の見え方が変わったり、特定のペ

有料
100

色を科学する <番外編>CIE L*a*b*を自分で計算してみよう!

 「色を科学する その⑪」でお話ししたCIE 1976 L*a*b*色空間(CIELAB)のExcelでの実際の計算方法です。  アクセス状況を見ると、最近「XYZを自分で計算してみよう!」が一番人気なので、CIE L*a*b*でもニーズがあるかと思い、書いてみました。 L*a*b*値の計算式CIELABの計算式をおさらいすると↓です。  ここで、XwYWZwはそれぞれ、完全拡散反射面のXYZです。完全拡散反射面とは、入射した光を余すことなくすべての方向に均等に拡散反射

有料
100

色を科学する <番外編> CIE 1976 L*a*b* 開発秘話

 CIELAB開発秘話。知る人ぞ知る(ホントにあまり語られてない)お話しです。色を科学する その⑪ 均等色空間と色差<後編>で書ききれなかった分を書きました。 CIELABのできるまで CIELUVはU*V*W*の改良版として作られましたが、CIE 1976 L*a*b*色空間(CIELAB)の開発経緯は全然違い、アダムス(E. Q. Adams)、ニッカーソン(D. Nickerson)、グレイサー(L. G. Glasser)という3名の研究を組み合わせてできました。ち

色を科学する その⑪ 均等色空間と色差<後編> CIE 1976 L*a*b*とL*u*v*

 <前編>で均等色度図、<中編>で明度関数ができたので、それらを組み合わせて、いよいよ均等色空間と色差が完成します!これによりようやく色の違いを語ることが可能となるのです。シリーズ完結編!  ※本コンテンツは有料となっていますが、無料で最後まで読めます。<前編>から苦節4か月、結構大変でした、、、共感いただける方はサポートよろしくお願いします。 CIE 1964 U*V*W*色空間 CIEが1964年に勧告した均等色空間です。明度関数W*と色みを表すU*V*からなり、U*

有料
100

色を科学する <番外編> グレーカードはなぜ18%???

 カメラの露出を決める際よく使われるグレーカード。「18%グレー」とされていますが、なぜ50%でなく中途半端な18%なのか?ディスプレイで再現する時のRGB値は?など。※「明度関数」に関する記事からの派生です。 明度関数をよく見てみると... 明度関数は、Y(相対化した輝度)に対し、上に膨らんでいる形状となっています。つまり、45度の直線(いわゆる正比例)より全体的に上に凸になっています。なので、「中間のグレー(マンセルN5)」を再現するにはY=50ではなく、もっと低い値、

色を科学する その⑪ 均等色空間と色差<中編> 「log」や「べき」で明るさを表す

 <前編>で均等色度図のことを書きました。均等色度図はその名の通り、色相と彩度のみの情報を持ち、明るさの情報がありません。そこにヒトの感覚に合致する明るさ尺度(モノサシ)である「明度関数」を組み合わせることにより、均等色空間が完成し、その空間での距離が色差となります。  ※本コンテンツは有料となっていますが、無料で最後まで読めます。共感いただける方はサポートよろしくお願いします。 輝度以外のモノサシが必要 明るさのモノサシの一つである輝度(や物体色のY)が有効なのは、同じ

有料
100

色を科学する その⑪ 均等色空間と色差<前編> xy色度図で色の差を語るべからず

CIE XYZ表色系ができ、① 色を数値で表すこと、② 2色が同じ色であるか?の判定、が可能となりました(②に関してはいろいろ制約ありますが→その⑦ XYZのトリセツ)。 ※本コンテンツは有料となっていますが、無料で最後まで読めます。共感いただける方はサポートよろしくお願いします。 均等色空間を作れば色差ができる 何度も言うように、上記①②は、色彩科学や色彩工学における大きな一歩であり、すばらしい成果です。しかし、2色が同じ色か?は判定できても、どのくらい違うのか?までは

有料
100

色を科学する その⑩ 色彩計は色を測ってない!?

 色彩計とか測色計と名乗りながら色を測っているのではない、というお話。キャッチ―な面白話ではなく、この事実は色彩学を学ぶにあたり、結構重要だと思っています。  以前、分光測光器を捨てるときに、回折格子を取り出しておいた、という話を書きましたが、実は分光センサも取り出しておきました。 光を電気に 詳細は不明ですが、光を電気信号に変換する光電素子であるシリコンフォトダイオードがずらーっと並んでいます。  片側だけに青いフィルタがかかっていますが、これは何だろう?短波長のみ通

色を科学する <番外編> XYZを自分で計算してみよう!

 XYZを計算する∫やΣを使った数式、眺めていてもよくわからず、結局わからないまま…。そんなときは、自分で計算してみるのが一番だと思います。Excelを用いて1ステップずつ手順を説明しますので、やってみましょう! ⓪物体色のXYZ計算式のおさらい ↓この式です(物体色の場合)。色関係の検定試験で出てきて、拒否反応が出る人が多いようです。  S(λ)は光源の分光分布、R(λ)は物体の分光(立体角)反射率、x(λ)、y(λ)、z(λ)は等色関数です。光、物、眼の分光特性を掛け

有料
100

色を科学する その⑨ 色覚の多様性が色彩学の難題を解くカギ<後編>

 色覚多様性(いわゆる色覚異常)が色彩学100年にわたる難題であった「ヒトの目の感度」=錐体分光感度を知るカギになったというお話。<前編>のつづきです。 <前編>のあらすじ 前編では、色覚多様性(いわゆる色覚異常)の人が、見分けられない色から、ヒトの錐体の色度座標がわかるというお話をしました。具体的には、見分けられない色を結ぶ、複数の直線が交わる点が、ヒトの錐体の色度座標であり、錐体色度座標がわかれば、錐体分光感度もわかるというものです。そして、見分けられない色、それらを結

色を科学する その⑧ 色覚の多様性が色彩学の難題を解くカギ<前編>

 色覚多様性(いわゆる色覚異常)が色彩学100年にわたる難題であった「ヒトの目の感度」=錐体分光感度を知るカギになったというお話。長いので<前編>と<後編>に分けて書きます。 色彩学100年にわたる難題 残念ながら、等色関数はヒトの目の感度、すなわち錐体分光感度ではなく、それを"間接的"に表すものです。1900年代前半では、錐体分光感度自体やそれを調べる方法も確立できておらず、等色実験により"間接的に表すもの"を求め、1931年に制定して、代替として使ってきたという次第です

色を科学する その⑦ XYZのトリセツ

 X, Y, Zの各数値が一致したら「色が同じ」と言うためには、いくつかの制約があり、実はかなり非現実的な条件なのです。もちろん、その条件でないと等色が全く成立しない、というわけではないですが、ずれは生じます。XYZ表色系の特性を知り、振り回されないようにするために、そのトリセツを書きました。 1. 大きさが「視角4度以下」の対象に使用すること 「大きさ」なのに単位が「角度」というのが不思議に感じるかもしれませんが、視覚(「しかく」が2種類あってややこしい、、、)に関係する

色を科学する その⑥ 射影変換で色度図をつくる

 ディスプレイの色再現域(Color Gamut)の表現でよく見かける「色度図」はどうやって作られたのか? また、2色を混ぜた結果はなぜ直線状にのるのか? シリーズ6回目でようやく色度図にたどり着きます。 空間から平面へ 「色を科学する その⑤」で色が3次元空間内のベクトルで表現できること、加法混色がベクトル合成で表現できることを書きました。  ただ、空間(3次元)ってちょっとわかりにくいですよね。紙やディスプレイといった媒体も平面(2次元)なので表現しにくい。また、色み