蘇った
嬉しかった。彼が2着でゴールしたことが。馬券は今週当たっていないのに、無茶苦茶、嬉しかった。
北九州記念の惨敗を見て、正直、復活までにあと2走、スプリンターズステークスには間に合わないと思った。良くて掲示板、奇跡が起きても複勝圏内まで。だから2-6のワイドと6の単勝。マテラスカイが軸だった。
ゲートが開いた。僕は真っ先に6番を見た。和田が押して押して前に着けた。よし、いいぞ!と声が出た。然し乍ら、先行するということは即ち、マテラスカイのペースについて行くという事。諸刃の剣。600のハロン棒を通過した時。ヤバい、飲み込まれるかも。そう思った。が、4コーナーで2番手へ。前にはあと一頭。差せ!差せ!声が出た。200を切る。タワーオブロンドンがマテラスカイとファンタジストを抜き去る。ファンタジストは未だ2番手。粘れるか。持ち堪えられるのか?あのペースで?だとしたら、相当凄いぞ。そんな興奮と前走のフラッシュバックとで半信半疑乍ら、また声が出た。粘れ!粘れ!粘れ!
粘った。ファンタジストは2着でゴールした。
前半3F33.0で行ったマテラスカイと殆ど変わらない位置で競馬をしての、2着。然も上がりはメンバー中3位の34.0。フロックじゃない。奇跡なんかじゃない。実力。ファンタジストは強かった。ファンタジストは凄かった。ファンタジストは、蘇った。
今回ここまでやれるとは夢にも思っていなかった。スプリンターズステークスにも出られないと思っていた。今、賞金的に出られるのかという話は知らない。が、少なくとも挑戦者に値する馬であることは、証明した。だからもう一つ、夢を見たい。叶えて欲しい。漸く、胸を張って言える。
僕は見たい。ファンタジストがGⅠを勝利する姿を。