ファンタジストと武豊が好きだ

 「ファンタジスト鞍上、武豊」
 その一方が入ったのは2週間前の火曜日のこと。嬉しかった。本当に。一年前からの夢が、半分叶った。

 一年前から夢。小倉2歳を見た時に確信した。来年は、ファンタジスト。だから一年後のスプリンターズステークスをベストな場所で見る為に、混み具合を確認する為に、現地に赴いた。土砂降りだった。ファインニードルが差し切り、ラブカンプーが粘り、武豊跨るラインスピリットが3着。馬券は馬連を取った。ユタカさんは3着だった。それまで凡走続きだったラインスピリットで。その時、思った。来年は、主役。

 その来年が来た。来年のスプリンターズステークスまで、あと3日。ここまで色々な事があった。朝日杯で初の敗戦を喫し、明けて春はクラシック戦線へ。彼がダービー馬になる姿を、夢見た。が、夢は叶わなかった。血統には敵わなかった。サラブレッドとして生まれ持った宿命、血統。それは時に長所になり、時に短所になる。クラシック戦線では、その短所が出た。どんどん延長されていった距離も、結局千二に。千ニ復帰初戦、北九州記念14着。惨敗だった。出遅れた上、道中着いて行く事も出来なかった。そして、鞍上交代。ショックだった。このコンビが大好きだったから。ファンタジストが凡走したら鞍上交代もあるという事は常に頭の片隅にあった。が、考えないことにしていた。凡走、そして鞍上交代。二つの悪夢が同時に、現実となった。

 前走を見て、時間が掛かる、今年のスプリンターズステークスは無理だ。そんな想いと、少しの期待を持って、彼の出走するレースで初めて単複以外の馬券を買った。馬券は外れた。でも、感動した。掲示板でも御の字。その予想を見事に裏切ってくれた。あれだけ負けた馬が、たった一走でここまで来た。和田竜二の好騎乗もあった。が、彼に自力がなければ、前半3Fを33.2で行って、上がり3Fを34.0で纏めることなど、不可能。確かにタワーオブロンドンは強かった。が、逆に言えば、タワーオブロンドンにしか、負けていない。それにセントウルステークスが目標だった訳じゃない。それでも、あれだけのパフォーマンスを魅せてくれた。前走が目標ではなかったのだから当然、上積みはある。そして鞍上には再び、武豊が戻ってきた。

 コンビ再結成。やっぱりファンタジストは武豊だ。彼の手綱をデビュー以来執ってきた武豊が、一番ファンタジストを解っているし、何よりこのコンビが好きだ。このコンビが再び見れる。それもスプリンターズステークスで。それだけで嬉しかった。本当に。一年前からの夢が、半分叶った。あと半分。それは勝つ事。武豊跨るファンタジストが先頭でゴール板を駆け抜ける姿を、目撃したい。

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