講演会

講演会セット

 「ICTは機械ではなく機会です」をテーマに、講演会でお話しすることがあります。挨拶をし、自己紹介、最初の話題のあたりまでは、指伝話を使ってお話しします。

 こんな感じです。

 指伝話を使って話しをすると「あぁ、この人はこう頭ガンか何かで声がだせない人なんだ」と思ってじっと聞いてくださる方が多いです。途中から自分の声で話し始めると「あちゃー、だまされたー」って言う人もいますが、だましたつもりはありません。見た状態で勝手にそう思っただけだと思います。😁

 日本語だって人前で話しをするのはドキドキなのに、もし外国に行って英語でプレゼンをして欲しいと言われたら、かなりドキドキするでしょう。そんな時でも、こうして準備してあれば、慌てずに格好良くできそうですよね。

 たいてい、講演会では少し遅れてくる方がいらっしゃいます。そういう時には「途中退場者」場面用のセットを使います。

 そうすると、「え?なになに?」とびっくりされますが、他の観客の方は「おぉ、こういう突然の時にも使えるんだ」と感心されます。実は私にとっては突然のことではありません。想定の範囲内で、準備してあるものです。その場面に対することばのセットを用意しておき、そこから選んで話しをします。

 講演会では、突然プロジェクタが映らなくなったり、照明が消えたりするトラブルもあります。そんな時には「トラブル時」セットを使います。

 「なーんだ、そういうことか。準備してあるのね。」と言う人もいます。がっかりですかね?いやいや、自分の声で話しができる人だって人前で話す時はたいてい準備していると思います。フリートークで話している人もいますが、それでも普段からそういう場面では何を話すかということを考えている、つまり、準備しているものです。

 準備がしてあれば、自分の声が出せなくても講演会で話したり、人前で意見を述べることができます。講演会で話すことは毎日はないでしょうが、コーヒーショップで「キャラメルマキアートのホットをトールサイズでお願いします」と注文をしたり、レストランで「Bランチお願いします」と言うような場面は多くあると思います。そんな時に指伝話で準備がしてあれば、すぐにことばで伝えることができます。

 もちろん、手話や筆談、指差しなど、いろいろな方法がありますし、どれが良くてどれが悪いということではありません。それらと同じように、合成音声を使って伝えるという選択肢が増えることは悪いことではありません。

 交通系ICカードを使えば、電車に乗る時に誰とも話さなくても良いし、金額計算で困ることもありません。そのままコンビニに立ち寄れば、セルフレジで誰とも話さなくても買い物ができます。とても便利な世の中になりました。でも、お店に入った時に「こんにちは」「今日も寒いですね」なんて声をかけると、お店の人はこっちを気にしてくれますし、時には天ぷらが1つサービスされたりということもあります。

 ところで講演会といえば、年に一度開催されるリハ工学カンファレンスという集まりがあります。

 障害のある方のリハビリテーションを支援する機器や技術について、リハビリテーションに関係するさまざまな分野の参加者が互いに理解できる言葉で納得できるまで討論することを目的として、毎年1回開催されています。(一般社団法人日本リハビリテーション工学協会 ホームページ より )https://www.resja.or.jp/conference/index.html

 このカンファレンスでここ数年、当事者発表のセッションで指伝話に関係した発表が続いています。

講演会.002

 いずれも当事者セッションの中で、指伝話に関係した話題で発表された方たちですが、上の図の中で指伝話のロゴが名前の前についている方たちは、発表を指伝話の音声を使ってされました。

 この中で、「指伝話」とツールの名前を発表の中で口にした方は2名だけです。そしてすべての人が、指伝話を紹介することが目的で発表したのではなく、自分の意見や考えを伝えるために発表をされ、たまたま自分の声で話しをするのが難しいので指伝話で発表をした、ということでした。

 聞いている方々は、指伝話の合成音声は流暢なのであまり違和感を感じず、話しの内容に聞き入った方が多かったと聞きました。「自分は声が出せないからツールを駆使している」ことを発表するのではなく、自分の意見や考えを伝えたいと思って発表し、聴衆はそれを聞きました。指伝話の会社としては宣伝になってない状態でしょうが、ここはツールが目立つ場面ではありませんのでそれでいいのです。

 自分の声で話しをするのが難しいからといって人前で話しをする機会を持てなかった人が、ICTの力を使って発表の機会を得る。コーヒーを自分で注文できるならお店に行ってみようと思う。緊張した時にはこれを使えばいいと安心することで緊張せずにすむ。外出のきっかけ、そしてコミュニケーションのきっかけになっています。

 講演会の時に指伝話を使って話しをするのは定番ネタだったのですが、もうネタバレですので、今後の講演会は少しスタイルを変えていきたいと思います。:-)

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