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指伝話と音声ガイドについて

はじめに

 指伝話メモリで作成したカードを、視線(Skyle)や音声コントロールで操作している動画を、勉強会の資料としてアップしました。

 これをご覧になった方からの質問がありました。

1.カードの読み上げが早口なのは何故?
2.それはiPadの設定で行うのか?

 動画を作った背景を説明し、ご質問にお答えします。

 掲載した映像はこの2つです。

音声には3つの目的がある

 指伝話メモリで使う時の音声には、3つの目的があると考えました。それは、ガイド・会話・フィードバックです。

① ガイド:読み上げ音声でカードの内容をiPadがユーザに伝える声
② 会話:指伝話メモリで選んだカードの発話でユーザが周りの人に話をする声
③フィードバック: 指伝話メモリが操作の内容をユーザに伝える声

① ガイド:読み上げ音声でカードの内容をiPadがユーザに伝える声
 iPadのアクセシビリティ機能で、視覚障害への対応としてVoiceOver機能があります。また身体障害対応としてスイッチコントロール機能があり、そこには読み上げ機能があります。これは、「いま選ばれているのは〇〇のカードですよ」というように、画面の状態や内容をユーザに伝えてくれます。
 iPadがユーザに操作のサポートをするガイドとして話しかける声が①の声です。

② 会話:指伝話メモリで選んだカードの発話でユーザが周りの人に話をする声 
これは指伝話メモリの基本機能で、カードをタップすると流暢な合成音声でことばを伝えます。
 ユーザがカードを選んで「こんにちは」「水を飲みたいです」などと、近くにいる人に話しかける使い方です。電話やZoomであれば「近く」でなくてもいいですね。また、話しかける相手は「人」だけではなく、スマートスピーカーでもいいのです。(飼い犬に話しかけている方もいました。)
 ユーザが自分の声で話す代わりに相手に話す会話の声が②の声です。

③ フィードバック:指伝話メモリが操作の内容をユーザに伝える声
 指伝話メモリのカードの選択では、発話する以外にも、メッセージを送る・音楽を再生する・他のページに移る、という動作の実行も可能です。
 発話しないで動作だけの場合には、ユーザへのフィードバックがあった方が良いこともあります。それを指伝話メモリで実現しています。
 指伝話メモリがユーザに話しかける声が③の声です。

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早口にする理由

 実際にVoiceOverやスイッチコントロールの読み上げを使っている人の設定を見せていただくと、ガイドとして使う声はものすごく早口でした。聞き取れないのでは?と思うくらいでしたが、毎日使う決まった内容ですし、慣れるとガイドがゆっくり話しているのはまどろっこしいものになります。今回の動画では、そこまで高速にしませんでした。何を言っているのかを動画を見る人が理解できるようにです。実際に使う時は、ユーザさんに確認をしてもっと高速にしてもよいと思います。特に会話の場合は、テンポよくやりとりをしたいですからね。

 また、指伝話が発話する声と、ガイドやフィードバックの声が同じでは、ユーザさんはわかるとしても、周りにいる人が混乱してしまうので、声質を変える工夫をしました。

設定について

① スイッチコントロールのガイドの音声
 スイッチコントロールの読み上げ機能は、iPadの音声で読み上げます。設定はスイッチコントロールの読み上げの設定で行います。
 ここで、速度が変更できます。また、「項目の属性を読み上げる」をオフにしておくと、タイトルを読み上げた後に「ボタン」という属性説明を読み上げなくなります。指伝話メモリではすべてのカードは「ボタン」なので読み上げなくてもいいという方はここをオフにしてください。

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 今回の2つの動画では、①の声は使っていません。ユーザさんの中には、画面を見ずに指伝話メモリをスイッチで使用している方がいます。その方たちはこのガイドの音声を聞いて、どのカードを選ぶかを決めています。

 スイッチコントロールの読み上げには、指伝話メモリの場合、カードのタイトル欄の内容を読み上げるようになっています。

 ちなみに、VoiceOverの読み上げは、アクセシビリティのVoiceOverの設定で行います。スイッチコントロールの読み上げとは機能が異なりますので、設定場所も別です。指伝話メモリでVoiceOverを使う時の読み上げも、タイトル欄の内容をiPadが使用します。

 一般のアプリでは、スイッチコントロールの読み上げやVoiceOverの読み上げなど、iPadの読み上げ音声の内容をユーザが変更することができませんが、指伝話メモリは自分で変更できる点が魅力です。

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② 指伝話メモリの読み上げ音声
 指伝話メモリのカードをタップした時に読み上げて相手に伝える内容は、カードの編集画面で読み上げテキストの欄に設定した内容です。音量・速度・音程は、セットの動作設定で指定します。
 特定のカードだけ読み方を変更したい場合は、読み上げテキスト欄で指伝話タグを用いて話者・速度・音程を変更することが可能です。それについては③でも触れます。

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③ 指伝話メモリのフィードバックの音声
 指伝話メモリのカードを選択した時に、フィードバックの音声を発声するようにしています。「このカードが選ばれましたよ」とユーザに伝えるためのものです。
 ②の声と同じだとわからなくなってしまうので、フィードバックとして使うカードは、読み上げテキスト欄で指伝話タグを使って、少し早口で伝えるようにしました。

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フィードバック音声を使う理由

 フィードバックの音声を出す・出さないは自由ですが、今回、音声コントロールで使用する場合に、画面を見ずに音声だけで使用するケースもあると考え、フィードバックの音声を設定しました。

 指伝話メモリは、画面上にカードが整列しているので、音声コントロールはわかりやすいという点で相性が良いです。

 音声コントロールの動画で使用した指伝話コミュニケーションパックの画面は、1画面に9枚表示にしています。16枚・25枚でもいいのですが、画面を見ずに使用することを考え、表示画面の内容を覚えておける程度の9枚としました。

 また、各画面は、1:メニューに戻る、2:前ページ、3:次ページ、9:説明として固定し、4〜8の5つの選択肢がそれぞれ画面によって変わるというルールにしました。説明のカードは、画面の内容を説明するためのヘルプカードです。「Tap 9」といえば、いつでもいま表示している画面の内容を音声で確認できます。

 ここまで決まっていれば、音声を聞くだけで画面を見なくても操作しやすくなります。

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 視線入力で操作している動画でも、所々でフィードバックの音声を使っています。カードを選んでショートカットが動いて音楽が再生されるカードの場合「再生」と言うようにしていますが、曲が始まるまでに「ちゃんと選ばれたな」ということがわかるので安心して待っていることができます。

指伝話メモリはアプリの余白が多い

 指伝話メモリは、画面を指でタップするだけでなく、マウス、トラックパッド、スイッチコントロール、スイッチコントロールを使わないスイッチ操作、音声コントロール、ヘッドトラッキング、視線など、さまざまな操作方法に対応しています。操作に慣れるまではカードの枚数を少なくしたり、滞留コントロールがしやすい画面にしたりといった工夫がしやすい作りになっています。

 何よりも、使う人の興味に合わせた内容を組み立てていけることが最大の特徴です。

 目的も、使う人の状態も、使い方も作り方もさまざまです。それはコミュニケーションそのものだと思います。

 指伝話は、代替音声アプリではありません。コミュニケーションのきっかけとして使っていただきたく、さまざまな機能を加えています。でも使う人にとっての「カードを1枚選ぶ」というシンプルさを大切にしています。

 使い方はあなた次第!楽しんで使っていただければ嬉しいです。

いただいたサポートは、結ライフコミュニケーション研究所のFellowshipプログラムに寄付し、子どもたちのコミュニケーションサポートに使わせていただきます。