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iPhone/iPadをスイッチで操作することについてのご質問と回答

ご質問
 いままで、iPhoneを指でタップして操作していましたが、腕を上げるのが辛くなってきました。体を大きく動かさずとも指先などの少しの動きでスイッチを使ってiPhoneが操作できると聞きました。いま、iPhoneで電話をしたり、生協の注文をしたり、ネットでニュースを見たりしています。そういったこともできますか?
回答
 はい。そういう方法でお使いいただくことができます。
 スイッチも使い方も設定もいろいろあります。いくつかのポイントがありますので、それぞれ分けて説明をします。
 なお、ここでの説明は、全体的なことをご理解いただくことを目的にしています。個々の細かい設定については言及していませんが、ポイントとなる項目は挙げてあります。少し分量がありますが、ご一読いただければ、基本的なことを知っていただけると思います。

はじめに

 iPhone/iPadには、スイッチ で操作するための機能「スイッチコントロール」が標準で備わっています。スイッチ操作ではこの機能を使うのが一般的です。アプリによってはスイッチコントロールを使わない方法もあります。その方が操作しやすい場合もあります。これについては、先に全体のことをご説明した上で後ほど説明を加えることにします。
 なお、スイッチによる操作は、iPhone/iPadの設定、スイッチの選択と設定と使い方、使うアプリの選択と設定など、様々な要因によって使い勝手が大きく異なります。これは「設定が大変だということではなく、身体に合わせた設定をすることができる」ということです。

スイッチについて

 スイッチには、さまざまな種類があります。押しボタン式のもの、握るタイプ、紐を引っ張るタイプ、空気圧を使い弱い力で押せるもの、皮膚の表面のしわの動きなどのわずかな力を感知するピエゾスイッチなど、それぞれ機能や操作が異なります。また同じスイッチでも設置の仕方によって使い勝手は大きく異なります。
 動画では、使用例として使っている様子がわかりやすいスイッチで説明しています。実際にお使いになるスイッチは、作業療法士や理学療法士と相談をして、身体の状態や動きにあったスイッチ を選ぶことが大切です。

note 初めてのスイッチ .003

画面操作をスイッチでする方法

 画面をタップするかわりをスイッチで行うというのは、次の2つの動作をスイッチを押すことで行うことになります。
  1)タップする場所を決める
  2)タップする動作を指示する

 iOS/iPadOSでは、グライドカーソル と呼ばれる場所決めの線を使う方法と、項目モード と呼ばれるタップする画面上の項目を順番に選ぶ方法の2つがよく使われます。
 これらとは別に ヘッドトラッキング という方法もあり、頭の動きで画面上のポインタを動かすマウス操作のような方法もありますが、説明は割愛します。なお、頭を動かすのではなく、マウストラックボールを動かしてiPhone/iPadを操作することも可能です。それについてはスイッチコントロールを使わない方法のところで説明します。

グライドカーソル(ポイントモード)
 グライドカーソルは、UFOキャッチャー方式です。画面上のタップしたい位置を決めます。まず画面左から右に動く線(グライドカーソル)が選択したい場所にきた時にスイッチを押し、次に画面上から下に動く線が選択したい場所に来た時にスイッチを押して、縦横の線が交差した場所がタップされる方式です。

 なお、グライドカーソルの移動速度は調整することができます。
 狙う場所がある程度大きな範囲の場合は、スイッチ操作2回で画面上のどこでもタップができるので便利です。この方法はシングルモードと呼ばれています。選択するのが小さな場所になると難しいと感じます。その場合には、選択の段階を2段階(微調整)または3段階(正確)にすることができます。
 次の映像は、2段階(微調整)での選択です。

項目モード
 画面上の項目を順番にカーソル(四角の枠)が移動します。タップしたいところにカーソルが来た時にスイッチを押すとその項目がタップされる方式です。この場合、カーソルを動かす操作は、自動で動いていく方法と、自分で動かす方法のどちらかを選ぶことができます。使えるスイッチが2つあれば、一つをカーソルを動かす操作、もう一つをその場所をタップする操作に使うことができます。
 使えるスイッチが1つでも、スイッチの押し方を短押しと長押しの2種類に分けてできるなら、短押しをカーソルを動かす動作、長押しをその場所をタップする動作に使うことができます。
 画面上の項目数が多い時、1つずつカーソルを動かすのは大変なので、グループ化して操作することができます。そのような細かい設定は他にもいろいろありますが、いろいろな設定があるのだということをまずは知っておいていただければ十分ですので、ここでは説明を割愛します。

 次の映像は、項目モードでカーソルの動きが自動、タップしたいところでスイッチ を操作しています。

 次の映像は、2つのスイッチを使っています。青いスイッチを押して次の項目に移り、赤いスイッチを押してその場所を選択しています。

操作の内容

 iPadを操作するといっても、いろいろなことができるiPadですから、操作もいろいろあります。スイッチで操作することを前提に考えると、次の2つの操作内容に大きく分けて考えることができます。
  1)画面を閲覧する
  2)文字を入力する

 基本的にiPadは、画面上をタップする操作が中心です。それは、先ほどのグライドカーソルや項目モードによる操作で行うことができます。画面をタップするだけでなく、スワイプ・ピンチ・ドラッグ・指2本でタップなど、さまざまなアクションも行うことができます。
 文字の入力は、基本的に画面上に表示されるキーボードを使って行います。キーボードの操作もグライドカーソルや項目モードによる操作で行います。

 初めてスイッチでの操作を試す時には、キーボードを使った文字入力の練習から始めると少々大変だと思います。iPadには予測変換もあります。短文登録をすることもできます。アプリによっては文字を打たなくても選ぶだけでメッセージやメールを送ることができるものもあります。
 いきなり五十音表から文字を選ぶことから始めずに、できることを増やして楽しんでいただきながら、楽な操作方法をいろいろと知っていただくと良いと私たちは考えています。

スイッチとiPhone/iPadの接続

 スイッチには、3.5mmミニピンプラグがついているものが標準的です。それをそのままiPadに接続することはできませんので、スイッチ接続のためのアダプタを使います。Apple純正のものはなく、サードパーティー製のものが各社から発売されています。
 各社の製品の違いは、価格、接続できるスイッチの数、特定のアプリとの親和性などです。

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 オフィス結アジアでは、スイッチ接続キット を販売しています。初めてiPadとスイッチを接続して使う方にも簡単に使っていただく仕組みになっています。身体の動きが制限され、指先のわずかな動きでスイッチを操作される方でも、電気をつけたり・消したり、音楽を再生したり・止めたり、会話をしたりといったことがしやすい仕組みを、指伝話メモリ(アプリ)とともに提供していますので、何を買っていいか迷っている方は特に、スイッチ接続キット がお勧めです。

 スイッチ接続キットは2つの部品から成り立っています。1つ目の部品は、使用しているiPhone/iPadの電源ケーブル接続口が、LightningUSB-C かによって、また、電源プラグをつける口があるかどうかによってアダプタが変わります。また2つ目の部品は 変わる君 というスイッチを接続するものですが、単に3.5mmミニピンプラグを接続するための形状変換を行うだけでなく、用途に応じて内部的にプログラムを埋め込むことができます。それができると1スイッチだけの操作でより多くのことが行いやすくなります。

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 接続アダプタの代わりに USB2BT Plus という機材をつければ、iPadと変わる君の間が無線化できます。

 詳しくは、オフィス結アジアのホームページをご参照ください。
 https://yubidenwa.jp/switch/sc123-connect/

日常生活を便利にする仕組み

 iPadをスイッチで操作できるということは、iPadでできることができるということです。当たり前なのですが、つまり、できることは、単に呼び鈴を押す、合成音声で話す、文字を選択することだけではありません。

 最近は、赤外線リモコンで操作できる家電を、iPadから操作できるようになっています。iPadの画面をスイッチでタップできれば、電気をつける・消す、テレビをつける・消すといったこともできます。

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 スイッチ を操作し、自分の声ではなく合成音声を使って、いま流行りのスマートスピーカーに話しかけるといったことも可能です。

手間を減らす仕組み

 指伝話メモリは、カードタイプのコミュニケーションアプリです。基本はカードをタップすると合成音声でことばを伝えるものですが、LINEを送る際のメッセージの入力をするといったことも可能です。

 まず、グライドカーソル(ポイントモード)で、メールを作成して送信するまでの様子の動画をご覧ください。

 次に、指伝話メモリで作成したカードを選択し、メールを送信する様子の動画をご覧ください。この方法だと、文字入力をする必要がないので、操作の手間が減り楽です。

 さらに手間を減らして、指伝話メモリのカードを選択すると、あらかじめ設定しておいた内容のメールを指定した宛先に送ってしまうことも可能です。

 次に、同じく指伝話メモリのカードを選択して、LINEのメッセージを送る様子の動画をご覧ください。これも文字入力をする必要がなく、操作ステップが少なくて済みます。

 これらのように、単に指で操作していたことをスイッチに置き換えるのではなく、アプリの工夫をすることで、スイッチでの操作が楽になります。スイッチ操作は緊張を強いられるので、少しでも楽にできる方法を準備するのが良いです。

 ウェブサイトを開く場合、ブラウザを開いてURLを入力するのは大変ですが、お気に入りに登録した中からサイトを選択するのは少し楽になります。指伝話メモリのカードを選択すると指定しておいたサイトが開くという操作も可能です。

 このように、楽になる仕掛けを利用すると、スイッチ操作でできることも増え、操作が楽になり、時間にも余裕が持てるようになります。

スイッチコントロールを使わない方法

 スイッチ操作を挫折してしまう人は、スイッチコントロールの設定がうまくいかず、使い始めることができないということが多いようです。また、小さい子どもや初めてiPadやスイッチに触れる方にとって、スイッチ操作と画面の動きの因果関係を理解するのに少し時間がかかるものですが、その際に設定に手間取ってしまうと、やる気を失ったり、面倒臭いと思ってしまう(本人も周りも)ことがあります。

 そんな時には、スイッチコントロールを使わずに操作する方法が有効です。下の動画は、オレンジ色の風船に少し触れると、iPadの中の笑顔日記(写真に一言つけたもの)を、ページめくりした後にタップし合成音声で読み上げる操作をしています。めくって・タップするという2つの動作を1回のスイッチ操作でできていますし、スイッチコントロールを使っていないので設定も不要。これなら最初のスイッチ操作が上手くいきます。

 中身の写真を自分や家族のものにすれば、楽しみもあって上手に操作できるようになります。

 次のリンクのページには、1スイッチでの操作で、スイッチコントロールを使わずに指伝話メモリを操作し、メッセージを送ったり音楽をかけたりする映像も紹介してあります。参考になさってください。 
https://yubidenwa.jp/switch/oneswitchmemory/ 

iPadで電話をかけたり受けたりする

 これについては、別の note で説明をします。

参考資料

 iPadのスイッチ操作 https://www.yubidenwa.jp/switch/


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