8年の推しがさいたまスーパーアリーナで歌唱した話


さいたまスーパーアリーナ。

埼玉県が誇る最大であり唯一の誉。収容人数は3万人を超えるという。音楽ライブ嗜好の是非に関わらず、広く人々に存在を知られている大型の会場であることは言うまでもない。


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2016年8月末。彼女がメジャーデビューの門を潜りちょうど丸8年。全くもって易しいとは言えない道のりを経て本日に至る。

しかしながら、過去にこのような大規模会場でのライブ経験が彼女にとって皆無なものだと言う訳ではない。
かつての「両国国技館」や初夏のKING SUPER LIVEにおける横浜Kアリーナなど、その経験値にも箔が付いてきた。箔といっても、観光地で売られているような金箔ソフトクリームくらいか、あるいはそれよりもまだ僅かな量だと言うべきなのかもしれない。


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開場が始まり、各々が決められた座席へと向かう。私自身、このような大きな会場でのライブも多少なりと経験してきたつもりではあるが、通路から会場の檻の中に入る時の高揚感は何度味わっても感じずにはい居られない。

思い思いの色、モノ、気持ちを抱えながらステージを待ちわびる様。今日もやってやろうと気を引き締められるばかりである。
平日の朝起きる時にも、このように思える人間であれたらどれだけ人生は楽であろうかと思うばかりである。


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順番はいつか、曲目は何か、そもそも何曲歌うのか。

きっと同志たちはこの辺りのクエスチョンがあったであろう。
「その時」は思っていたよりも早く訪れる。頭から数えて8曲目

はるか先────────とは言えない距離の先に1人立っていた。


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Queen of the night。
正直なところ、タイアップ曲の中でもやらないであろうと踏んでいた曲目に呆気にとられる。
それ以前に、このステージの上に立ち歌っているという事実自体を受け止めきれていなかったということも、それに寄与したのかもしれない。

「同調」の力が作用しやすい日本人の国民性がここでも働き、なんとなくの雰囲気で会場の色味は青に染まる。
同調と言うと悪く聞こえるが、こういった場においてはむしろ団結の象徴として舞台のチューニングをしてくれる。

後述のイロドリにおいては、盛り上がりや昂りについてもある程度想像できたが、Queen of the nightの歌唱についてもこちらから探しにいかずとも好評さに出会うことが出来たのは驚いた。

実際のところ、近辺の参戦者の中にもUO(一時的に強いオレンジの光を発するサイリウムのこと。ウルトラオレンジの略)の出番を与えている者もおり、こちらの心にも日が灯った。


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対バンライブ、ないしライブイベントの本質は
思いやりとリスペクトである。

誰かにとっての推しは他の誰かにとっての全く知らない人や聴かない人であってしまうのは必然であり、それに対して無関心でいることは大変楽だが、おそらくそこには温もりがない。

冷ご飯でも全然食べれるので、わざわざレンチンはしなくても良い。と言われてしまったら返す言葉がないが、やはり自分の推しに対して少なからず好意にして貰った人(やその人の推し)にはこちらも同じ形で気持ちを返したいと思う。

これは「地蔵」という概念への否定や批判では全くもって無いが、空間の共有者である他人への敬意表明は互いへの調和であり、平和的で目指すべきマナーの最高潮なのではないかとすら感じる部分もある。


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曲間MC。この時間すら想定していない節もあったが、しっかりと己のやるべき事、あるいはそれ以上のパフォーマンスをやってのけた。

「佐賀は日本のどこにあるかわかりますか?」

小学校5年生への質問かと耳を疑ったが、こういった都道府県の位置に対する人々の認識は想像を絶する程壊滅的であり、佐賀県に限らず多くの都道府県の場所すら正しく理解出来ていない人間が大勢存在してしまう実状である。

佐賀には水族館がないから、今この空間を水槽にして染めてくれよと言ってこう歌う。


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イロドリ。
ほとんど内定といって差支えがなかった楽曲。今や世間的にもこの曲のイメージは大変大きくなったのではないかと推し量れるが、MCからの曲入りが大変好評な様子だった。確かにその通りで、単純な導入としてもヨルクラ視聴勢にとってもおそらく清々しく滑らかな前振りだったように感じる。

注目すべきは落ちサビのUO骨折率の高さで、それまでに真っ青に染め上げたフロアを眩さの限りであるオレンジが包んだ。

この光景にタイムラインでは「UOで海洋生物やられたやろ」との声も見受けられたが、重要なのはその色よりも個々人が持つこの曲への思いが可視化されることなのだろう。


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タイアップ曲、と一概に言っても、その姿かたちは全くもって異なっている。
これまでにもCMや楽曲提供など様々な形でタイアップを行ってきたことからもその事実には気づいていた。

そういう意味では、今作はそれらとは一線を画すレベルで彼女を知らしめた楽曲としてこれからも残り続ける、そんな希望さえ感じる。

もちろん大前提としてタイアップ元である「夜のクラゲは泳げない」という作品自体の完成度や、それとの親和性などが混ざりあった結果に違いないが、そういった作品に携わり、作品のファンにも愛してもらえていることがつまりそういう事なのだろうと誇らしく思う。


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本公演への参戦が決まった時、こんなにも大きなステージで輝こうとする推しの姿をみて感涙するに違いないだろうと思っていた。
実際のところそれに近しい段階には到達したが、それが零れ溢れることはなかった。

あくまで私は応援者としての一個人な訳であるが、先述した2曲の歌唱を目の当たりにして感じたのは「まだまだここから」なのだという感覚だった。

ここまで来るだけでも選ばれた人間だけが成せる叡智である。しかしながら、その中でも上下、優劣はどうしても存在してしまうのが世の常であり、そうである以上這い上がるしか無いからこそ、私の心はその答えを選んだのだろう。

これはあ彼女の目指す先がある前提の話だが、あくまで自分勝手な願いを掲げるとすれば、更なる飛躍が見たいのだと思う。


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きっとこの日から始まる新しい出会いがたくさんあるのだろうと信じてやまない。
そんなまだ見ぬ同志らと共に、次のページを彩りたいと心から思い本文を終えることとする。


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あとがき


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この度は一個人の戯言ライブレポートを閲覧頂き誠にありがとうございます。
筆を執るのが久しぶりになったこともあり、正直あまり納得のいくものは書けませんでした。率直に今感じたことを直ぐに形にすることを重視したため、多少の齟齬や語弊もあるかもしれませんがご容赦頂けますと幸いです。

ここまで読み進めている人は、おそらく過去の文章も読まれている方々と勝手にお見受けしているので、この辺りでスイッチを切らせていただきます。


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8/31、大変良いライブでございました。本文ではとにかく「カノエラナ」の話をしっかりとさせて頂きましたが、ここから先は他の演者様についても少しだけ触れていこうと思います。


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ここ暫くはシンガーソングライター以外の界隈にも属していることがある関係で、こういったイベント関連についても最低限は知識をもって臨むことが出来たかなと思ってはいました。

が、実際のところはそんなことは全くなく、本公演を通して得た学びも多数あり、それでいてあのライブの満足感ですのでこれで16000円(一般席に至ってはそれ以下?)は安い…(末期)と思うなどしました。


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出演者のジャンルのゾーニング的に多くを占めるのが声優さんになると思うので、そこをベースに記していきます(一部布教含む)。


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まず挙げさせてもらうのはTrySailです。ライブをやる以上、盛り上がりという観点から逃れることは出来ないでしょう。そういう中で、後半のあの出順でラストに向かってキラーパスを放ち去っていく(道中もおジャ魔女で風吹かせるなど)のは凄まじかったです。

それでいて曲も良く、また個々人のパフォーマンス力が高いがポイント。どうすりゃいいんだ。

この日の披露曲以外でのオススメはadrenaline!!!、TAILWIND、azureです。
それぞれがソロアーティストでも活動しており、そこにも良い曲沢山あるので是非。

最後に私情を挟ませてもらうならば、雨宮天とかいう歌うま激マブモンスター最強すぎる。


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次点はMyGO!!!!!。ここはもうバンドマンの顔つき過ぎました。めちゃくちゃな自論を言わせてもらうと、もうこれはペンラとか振らなくていいんじゃないか、と。

ペンラより拳が似合うくらい、「バンド」としての味が強くて美味しかったです。まあそんなん言いながらめちゃくちゃペンラ振ってたんですけれども。これが「同調」です。弱い。


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愛美さんもここでの言及は避けられないでしょう。バンドセットでは初見ですが、やはり格好よすぎます。
MyGO!!!!!に関してもそうですが、声が「歌を歌え!」と言われて作られたような声をされているので歌唱で映えないわけが無い。

彼女には別コンテンツでもお世話になっていますが、そちらのキャラの歌唱においてもソロアーティストの時とそれほど声色が変わらないのが印象的です。

彼女が演じているキャラは特に推しだと言う訳ではありませんが、ソロ曲(複数ある)については全キャラの中でもトップ級に好きな曲なので、そちらも機会があれば是非視聴を。
(ミリオンライブ ジュリア ソロ で検索。)


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最後に早見さん。今回はハニワフィーチャーの分とご自身の分とで2回の登壇がありましたが、差がえぐすぎる。
この人は本当に素の声がいい声すぎるので、無限時間MC聞ける(MCの時の空気洗練されすぎてて逆に困惑したまである)と思います。

ああいうライブが出来る人間はそんなに多くないのでは無いでしょうか。少なくとも、出そうとして出せるものでは無いです。


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一部ではありますが以上で締め切り。座席の真後ろをトロッコが通る神席だったので、トロッコ乗車のおみほと内田さんの話もすべきだったかもしれませんが、ほちらはまたの機会にさせて頂きます。

とにかく、こういう規模感のライブは来るべきだと改めて痛感しました。「推しが出るから」というきっかけだったとしてもひっかかる部分は大きいと思いますし、新しい扉を開くことが出来ると思います。きっと現地参戦された皆様も何かしらのフックが外れていないことでしょう。

次の機会があれば皆様も、同じ会場で同じようにペンライトを振れたらと思います。

それではまた次回。




〇Thanks.
出演アーティストの皆様
スタッフ等関係者の皆様
勇者の皆様
お会いしてくださったヨルクラ勢
カノエ良すぎるツイートしてくださった方々
カノエでUO折ってくださった方々
etc…


〇ゴミ
台風10号
お前だけは絶対に許さん。金返せ



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