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302. 「異性愛主義」って何ですか?

「異性愛主義」(ヘテロセクシズム(heterosexism))というのはさまざまな性的指向の中で異性愛が一番いい(ものだ)とする考え方を指します。

性的指向(セクシュアル・オリエンテーション sexual orientation)は誰や何を性的対象とするかということです。代表的なものは異性愛(世の中の多くを占める男女の結びつき)、同性愛、両性愛、無性愛などがあります。

しかし異性愛主義の考え方は

① すべての人が異性愛である、もしくは異性愛であるべきである
② 異性愛は他の性的指向よりも望ましいものである

さらに、徹底した考え方になると性的指向ばかりではなく、男性・女性のありかたにも強いこだわりを持ちます:

③ 女性として生まれた人は女性としてアイデンティティを持つべきであるし、逆に男性として生まれた人は男性としてのアイデンティティを持つべきである

これからすると、LGBTはこの異性愛主義の考え方の人たちにとって、「存在してはならない」人たちであり、矯正治療をして「異性愛になるべき」人たちであることになります。

また、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルは「望ましくない」もので、「価値がなく」、「劣っていて」、「不自然で」、「異常な」人たちであるとされます。

ここから偏見や差別が生まれます。

さらに、体の性と心の性の不一致などということはあり得ないことで、そういう人たちは「病気」なので治療が必要だとされます。

表現する性で言えば、異性愛主義の考え方では男性が女性の格好をしたり、女性っぽい仕草をしたり、逆に女性が男性のような髪型・格好・言葉遣いをすることはあり得ませんし、そういう人たちは「頭がおかしい」とされます。

ほかの事柄とは違い、「多数=正しい」ということはセクシュアリティや性自認といった性に関することには当てはまらないと思います。

例えばあるグループの中で意見が分かれた。じゃあ多数決で決めようと言って全員の意見を調べたらAの意見が圧倒的に多く、グループの9割がAだった。じゃあAということにしましょう。残りのB,C,Dの意見の人たちはAに従ってください。

このやり方は民主的のように見えますし、実際そうでしょう。

しかし、人の性的指向(セクシュアリティ)や性自認(自分の心の性)は多数決で決めるものではありません。異性愛が世の中の約90%だからという理由でそれが正しいわけではありません。

ましてや、数が少ないからといって無視されたり、居ない存在として扱われたり、異性愛の人たちに無理やり言うことをきくようにされたりすることはないはずです。

それでも、私たちは異性愛が約90%を占める社会の中で育ってきて、それが「当たり前」だと思って疑いません。そこから性にかんする「~べきだ」という思い込み決めつけが生まれるのです。

「異性愛主義」という言葉は知らなくても、この記事を読んでいる方の中にはいつのまにか「男は女を愛するべき」「女は男を愛するべき」「男は男らしくするべき」「女は女らしくするべき」という考え方をしている人はいませんか?

あなたのそのような性にかんする思い込みや決めつけが性的マイノリティを苦しめることがある、ということを覚えておいてください。


画像:Photo by Sharon McCutcheon on Unsplash