安楽死ジェットコースター
モノをとりあえず持つ才能がありすぎる。
自分でも何をどのように持てているのかわからないまま、あれこれごちゃごちゃと持ち替えながら駅の階段を降りていた。
習い事終わり、慌ただしく出てしまって。
ホームに降り、そのままベンチに座っていたが、さすがに収まりが悪いので整理することにする。
電車も来ていないのに隣の席が空いたので、持っていたモノどもを置いていく。
ファイル。切符。グリーンダカラ。傘。携帯。着るのを後回しにしたジャケット。
ちいさなみずいろの席が簡単に埋まってしまう。
計7つをこの手に収めていたのだから驚きである。
リュックに入れるものは入れ、ジャケットを着て、切符をポケットに収める。グリーンダカラは飲み干した。
リュックを背負い直して傘を持とうとしたら、うっかり背中合わせに置かれている反対ホーム側のベンチの背にあたり、カンッと鳴らしてしまう。
思ったより甲高く鳴った音に驚いて直立不動になる。
その隣に座っていた若い男が振り返り、目が合う。
ア、なにか、ア、エ、謝る? 今日のわたしと髪型同じ、と思っている間に向こうをみてしまう。
が、またこちらを見る。すごく目が合う。
おそらく何かをしたんだろうが直立不動なわたしのことを奇妙に思っている。わたしもどうすればよいかわからず目を逸らせない。
え、でも謝る? この微妙な距離で? 向こうイヤホンしてるのに? マスクつけてない。肌綺麗、いいな、化粧水買わなきゃな、アッまた見ているそりゃそうですよね、目が怖い、アーまた見られてる。アー電車きた。アー。絶対呟かれる。
アー。
という感じでした。青年、驚かせてごめんなさい。
隣に座ってたのにわたしが座ったら立ってどこかに行った女の人もごめんなさい。
安楽死ジェットコースターは関係ありません。アー、あぁ……
あそんでみてください ↓
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