マガジンのカバー画像

棚|よるの木木

10
レビュー
運営しているクリエイター

#詩

手紙と宛先『死のフーガ』パウル・ツェラン

手紙と宛先 パウル・ツェラン『死のフーガ』を読んで。 (『パウル・ツェラン散文集』ほか所収) ぼくらを朝に昼に夕に命令する彼は夜、恋人に手紙を書き、夜空の星々をあおぐ。 死のフーガのなかで、ことはすすみ、旋律はかさなるように掛けあい、ことはすすみ、ぼくらの入る墓はすすみ、ぼくらの腹を黒いミルクが浸し、ぼくらの誰かに銃弾は命中し、ことはすすみ、ぼくらは煙となって立ち昇る。 ぼくらは彼から「贈られる」命令を飲む、朝に昼に夕に、飲む。 きらめく星々の下で彼によって書かれた手紙は