『わたしが涙したのは』
『わたしが涙したのは』
そういうのに使ってよ。奇跡を残すような、さ。なんでも見えるんでしょ。なんでも喋れるし、まだこの中に吸収できる余地はあるのなら、それなら、悲しいって、それだけでいっぱいにならないでよ、もっとわたしを見て。
そうだったね、悲しいと思えるって、とても素晴らしいさ。君が涙したのは、君の心が綺麗だからなのかもしれないけれど、わたしが涙したのは、わたしが、わたしでいるのを辞めていないから。
いくつもの悲しい場面がこれまでもあって、これからも、この先もずっと、待ち受けてるんだって思うと悲しい。それほど、いまを必死に生きていて、それと矛盾して、考えてばかりいる。何度もぶつかって、夜になると夢を見る。
夢を見て、夢から醒めて、それでもわたしは、
わたしがわたしを見ることはない。
まだ、この世界に触れていて、君にまた、無駄話を聞いてもらえるのなら。わたしは、悲しいに縋っている心のことを、邪険になんかしないで、一緒になって悲しみたいと思う。
君の悲しいとわたしの悲しいは、違う。
だから、今日を生きてるんじゃないかって、思う。