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アルバムレビュー - Meitei『Komachi』

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広島在住の作曲家によるデビューアルバム(セルフリリースを含むと2ndになります)。「the lost Japanese mood」というコンセプトで活動し、怪談のサンプリングを用いるなどしているようですが、本作ではわかりやすく奇怪な音使いが前景化したり語りの音声が現れる場面はなく、とても心地よく、安らげる音楽です。

基本的には柔らかさやチャーミングさを感じさせる音色と音階のループフレーズを基調として、小節ごとに明確にシーケンスの変化や抜き差しがあるビート・ミュージックやテクノ~エレクトロニカ的な成り立ちの音楽だと思うんですが(そういう音楽をしっかり作っていたキャリアとかありそう)、聴き心地はハメるっていうよりフワ~っと流れていく感じのほうがだいぶ強くてとてもアンビエント。くすんだ感じのローファイともいえるようなサウンドの手触りがかなり独特でどういう機材で作ってるのかとても気になります。(2019年の末の広島でのライブイベントでDos Monosと共演していることで気付いたのですが、両者のサウンドにはどことなく通じる質感があるように思いますし、Meiteiのサウンドもヒップホップ的な機材構成で生み出されているのかもしれません。)

推測ですが、今作においては怪談のサンプリングなどもわかりやすく異物感やある種のエキゾチックさを出すためというより、そういうローファイなサウンドに紛れ込ませて微かに独特な“ムード”を付すような用いられ方がされているのかなと。テクノやエレクトロニカ的な技法による音楽でありながらフワフワと漂うようなアンビエント感を見事に表現している音楽という意味では個人的はsora『re.sort』(ド名盤)に非常に近しいものを感じました。そういえば『re. sort』は夏の夜に聴くのが最高なんですが本作もそんな感じしますね。これは正に怪談的。といえるか(?)

前作では怪談の語りらしき音声が大胆に用いるので併せて聴くと面白いと思います。

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