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アルバムレビュー:James Holden『Balance 005』

UKを拠点にDJ/プロデューサーとして活動するJames Holdenが2003年に発表したMix CD。James Holden(単にHoldenを名乗ることも結構ある)はクラブ・ミュージックに疎い私でも十年以上前からその名前を知ってるくらいな相当な著名アーティストですが、Discogsによると本作が彼の初のMix CDのようです(それ以前からトラックメイカーとしては既にいくつかのリリースあり)。
Joris Voornによる名ミックス『Balance 014』の印象が強いEQ RecordingsのBalanceシリーズの第5弾としてリリースされていた本作、私は2022年の正月ににんずさんの年間ベスト記事で興味を持って聴いてみたんですが、初聴時からもうマジでめちゃくちゃ素晴らしくて、結局今年一年間全く飽きずに繰り返し聴き続けた作品になりました。2022年に知った旧譜の中で間違いなくダントツに聴きまくった大切な一枚(二枚組なので正確には二枚)です。
このミックスがリリースされた2003年はHoldenが自身のレーベルBorder Community(Ben FrostなどがリリースするBedroom Communityと似ていてややこしい笑)をスタートした年でもあるようで、彼にとって様々な意味で重要な転換点であったことが伺えます。本作のDisc 1ではそのBorder CommunityからリリースされているThe MFA「The Different It Makes」、Nathan Fake「Outhouse」、Petter「All Together」、Auv「Real」などが非常に映えるかたちで使われていて、自身が提示したい音楽的ビジョンのたしかさ、そのプレゼン能力の高さに心底唸らされます。
この時期のHoldenの音楽性は調べてみたところプログレッシブ・ハウスやプログレッシブ・トランスと呼ばれているようで、特にDisc 2は先のにんずさんの記事の紹介からもわかるようにその系統の非常に優れた集成としての価値を持っているようなんですが、ダンス・ミュージックの細かなジャンル的差異をあまり掴めてない私はそこのところあまり気にせずに聴いていて、しかしながらそれでもめちゃくちゃ楽しめてしまっているので、(こういう表現はジャンルの差異を識別できる人間が用いないと説得力は生まれないと思いますが)多分ジャンル的枠組みを超えて多くのリスナーにアピールできる力を持った作品にもなっているように思います。
Disc 1の後半、Nathan Fakeのトラックが出てくるところの幻惑的なクライマックス感とか、ラスト3曲PQM「You Are Sleeping (PQM Meets Luke Chable Vocal Pass)」~Petter「These Days (Instrumental)」~Herrmann & Kleine「Leaving You Behind」の最高にドラマチックな展開なんかは、マジで「こんなの引き込まれない人いるの…?」となってしまうほど魅力的。
他にもクライマックスと呼べるような瞬間がいくつもあって、どちらのディスクも退屈さを一切感じさせず、音で意識を飲み込んでくれます。
レビューというか単なるレコメンド文になってますが、とにかくめちゃくちゃいい音楽ですので読んだ人とりあえず聴いてみてください!


Holdenといったら自分はこのアルバムの印象が強かったんですが(めっちゃいいです)、そういえばDJミックスを全然聴いていなかったのは不覚……他にも多分すごいのいっぱいあるんでしょうし、おすすめありましたら是非とも教えてください!


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