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ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』を読んだ
つい最近まで名前も聞いたことなかったフランスの作家ジョルジュ・ペレックによる大作『人生 使用法』、フランス文学を研究している友人の "日本での一般的な知名度は低いのが現状なのですが、意外とそれほど難解ではありません" との薦めで読んでみたのですがめちゃくちゃ面白かったです。感想は読みながら逐一ツイッターに書いてたのですがだいぶ細切れなので、備忘録として時系列順にこちらにまとめておきます。
一度読み通したのみの現状で、この作品を総括するようなことはあまり言いたくないのですが、ひとまず私はこの作品を深淵な「戯れ」の書として楽しみました。というか半ば踊らされた、もしくは溺れさせられたといったほうが正確かもしれません。下記のツイート群では作品の内容自体にはほとんど触れていないので、少しでも興味持ったら是非ご自身で読んでみてください。後述する少なからぬ悪戯心から、大変お薦めいたします。中古で買うと安くはないですが、ちょっと大きめの図書館になら多分あると思います。
ペレックの『人生 使用法』まだ序盤も序盤というところだけど、絵の説明が異様というレベルで多い。ページの大半がそれで埋まってるみたいなことも珍しくない。
— よろすず (@yorosz) June 26, 2023
ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』、最初の10章くらい読んだところでなんとなく小説全体の成り立ちというか趣を察し、登場人物の背景や関係性など書き出しながら最初から読み直して、ようやく第一部(21章)を読み終えたが、なかなか面白くなってきたぞ。
— よろすず (@yorosz) June 29, 2023
ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』第二部読み終えた。だいぶ登場人物に対する自分の意識や記憶にグラデーションができてきて、次の章に入るたびにその差異を泳がされるような経験が楽しい。しかしまだここにきて初めて聞く名前も出てきたりするので侮れない。
— よろすず (@yorosz) July 5, 2023
『人生 使用法』、部屋の住人のいる光景の描写からそこにある絵の説明に移り、更にその絵の題材となった逸話なり作者の生い立ちなどに潜り込む、みたいな展開が多くて、本の中のあちこちに異なる階層が(それぞれ別の意味で)潜んでるみたいな面白みがある。たまに自分がどの階層にいるのか見失う。
— よろすず (@yorosz) July 6, 2023
ペレックの『人生 使用法』、章の書き出しの統率具合がとても心地よくなってきていることに気付く。この感触何かしらの表現で真似したいので覚えておこう。
— よろすず (@yorosz) July 13, 2023
形式を決めて何かを作る時の感触の変化に思いを馳せる。それがぎこちない枠に感じられる段階から身体化された通用口となるタイミング、そしてそこに至って初めて機能し始める「形式が飛翔を招き入れる」あの感覚。
— よろすず (@yorosz) July 13, 2023
ペレックの『人生、使用法』、その構成上まず登場人物のとんでもない細部やサイドストーリーを知った後に主だった人となりを知らされるみたいなことが珍しくないんだけど、これを日本語の頭こんがらがるような修飾語を経てやっと主語や述語出てくるみたいな文章で読むことにおかしみを感じる。
— よろすず (@yorosz) July 16, 2023
第70章で語られるジグソーパズルを解くうえでの精神状態の揺れ、コラージュ的なやり方で曲作ってる時の感覚に近いところもありすごく印象に残った。面白い。
— よろすず (@yorosz) July 16, 2023
ペレック『人生 使用法』読んでるといたるところで自分の中に潜んでいる悪しき本質主義が起動しかけているのを感じる。言葉で執拗に物や空間の細部が描写される時、私はそれ自体を(それが行われる必要性なしに)そのまま飲み込むような胆力が、「読む」ということに対してはおそらくまだない。
— よろすず (@yorosz) July 17, 2023
映画で特段必要なさそうな物や景色のズームアップが挟まれていたり、定点のショットが妙に長く続いたりといったことを、自分はそれがたとえ後に何かの意味を持ったりしなくとも面白がったりが一応できると思うんだけど、小説にこのような感覚を抱くことはもしかしたら全然できていないかも……。
— よろすず (@yorosz) July 17, 2023
映画におけるこのようなショットの存在を自分がどう面白がっているのかと考えると多分「間」として面白がってるんだろうと思うけど、小説において私は「間」をどのように感じ取っている?と考えると具体的な言葉を出すのがとても難しいな。
— よろすず (@yorosz) July 17, 2023
ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』を読み終えた。読み終えたばかりだからこそというのもあるが、第99章の大まくりっぷりに予想してないレベルのロマンチックな情感を食らっている。(時に想像上のものとも化す)ある一瞬の描写というものが持ちうる深淵と戯れを見せられた気がするし、その在り方は
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
作中に異常な量登場する「絵画」と
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
いう存在の持つ特質と共鳴するものでもあるように思える。
アパルトマンの各部屋ごとの光景〜人物、その周辺なり背景を描いていく、と聞けば一見並列的だけど、部屋の中の絵画なり本なり潜り込む局面がそこかしこにあることで読んでいくうちに記憶が全然並列的に管理できなく(立体的に、迷宮的に)なっていく変遷がとても愉快だった。何というか小説を読むうえ
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
でネガティブな障壁となりがちな記憶の不完全さを、そのまま飲み込むことに愉悦が生じる読書体験でなかなか新鮮。読み終えた今ぱっと思い浮かぶあの人のあの話は結局どこに繋がった(または繋がらなかった)んだっけ?とか一回だけ出てきてやけに記憶に残っているあの部屋の描写はそれ以上深入りできん
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
のか…とか、読んでいくことで生まれた記憶の中のまだら模様が愛おしい。そして今私がその頭の中のまだら模様から広い上げ、組み上げているあれとこれ、これとそれの連鎖のどこかにも、ペレックの仕掛けた罠があるのかも。でもそれが全然復讐に思えないな笑
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
群像劇にするとどんな悲劇も喜劇っぽく見れてしまうみたいな効果ってあると思うけど、これは群像劇のラスト付近でまあよくある集約の加速がはぐらかされるような手順が踏んであるためか(それでも集約への引力は生まれているけど)、感じ取れる喜劇性がどこまで効果と割り切っていいものなのか今はまだ
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
だいぶ戸惑うな。
— よろすず (@yorosz) July 22, 2023
「終わり」があるからこそあらゆるものは素晴らしいみたいな思念が年々強くなってる一方で「消える」ことには自分はどこか抵抗したい人間っぽいなとも思っていたんだが、ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』読んで少しだけ考えが変わったような気もする。
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
Stephan Mathieuのあのメッセージを思い出しながら。
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
自分は映画観てると観てる最中というより終わった瞬間に全部が面白くなるみたいなことがとてもよく起こるんだけど、小説にはどうもその感覚があまりなかったっぽいことに『人生 使用法』読んで気付く。この小説にはめっちゃそれ(記憶の中での不気味な反響)があるので。
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
読んでる最中はまあ面白いけど自分の性に合うかというとあんまり合わないかなと思ってたのが、ちょっと留保したくなってきた。
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
『人生 使用法』の訳者解説を読んだが、〈ウリポ〉での試みについてそんなことできるのか?みたいなのがいくつも書いてあってヤバい。本当にそんな「制限」のもとで小説なんて書けるの?
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
あとこのツイートでも書いてる「必要性」について笑っちゃうような種明かしがあった。簡単にへーそうなんですかと飲み込めないレベルなのでまだ半信半疑。 https://t.co/V4os0sEEOx
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
ペレックの『人生 使用法』、面白かったので人に薦めたくなってるんだけど、そこには単に面白いもの紹介したいとかだけでなくある種の嫌がらせというか悪戯心が少なからず混じってると感じる。そしてそれこそこの小説の独特の味わいといえるようにも思う。
— よろすず (@yorosz) July 23, 2023
『人生 使用法』のアシカゲ・ヨシミツなる人物と三自由人党なるマルチ的な組織が登場する第3章、会員資格を得るための試練の描写がめっちゃハンター×ハンターっぽくて面白い(でもおそらく全部スモトフの妄想なのでこの後一切出てこない)。
— よろすず (@yorosz) July 25, 2023
『人生 使用法』全部読み終えたうえで改めて第51章読み直すとめちゃくちゃ感慨深いと同時にまだまだ拾えてない細部の多さも知らされるようであり、この小説の沼としてのポテンシャルに慄く。
— よろすず (@yorosz) July 25, 2023
ペレックの関連で知ったフランスの言語遊戯の実験工房〈ウリポ〉、創作における制約と飛翔についてめっちゃいろいろやってそうで惹かれる。『人生 使用法』がその極地と(も)いえるんだろうけど。
— よろすず (@yorosz) July 29, 2023
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