相談センター

テーマ「物に感情が宿って話しかけてくる話」
(1000字程度)

「お電話ありがとうございます。本日はどういったご相談でしょうか」

『主人から暴力を受けているんです』

「なるほど、辛かったですね。それはご家庭内での被害、という事でしょうか」

『いえ、家庭内ではないです。大勢の人々に見られながら、力の限り頭部を机に叩きつけられているんです』

「そうでしたか……その中に一人でも貴方の主人を止めたり、貴方を助けようとした人はいなかったんですね？」

『はい。それどころか私を机に打ちつける時の「彼」は悪魔のような奇声をあげ、私を何度も叩いて笑っているんです。周りの人達も彼それを見て同じようにゲラゲラと笑っています』

「……大変でしたね。ですがもう大丈夫ですよ。私たちは貴方の味方です。警察にも事情を話せばすぐに動いてくれます」

『いえ、それは無駄だと思います』

「え？」

『私に対する「彼」からの暴力はこの国、日本の全国民が黙認しているんです。警察なんかでは絶対的に「彼」を止めることは出来ない』

「……それは、どういうことでしょうか」

『そのうえ私の存在意義は「彼」に叩かれることでしかない。そして叩かれる時間は必ず毎週やってくる。逃げ道はないのです』

「……でも！」

『貴方もですよ』

「え？」

『貴方も「周りの人達」の一人なんです。私が「彼」から暴力を受けている映像は日本の電波を通じて貴方の目にも止まっているはずです。それなのに火曜の……』

「ちょっと」

『火曜日の二十時に「彼」を……

「明石家さんま」を止めてくれる者はいなかった......！』

相手はそう言ってガチャリと電話を切った。

もしかして私いま……

『踊る！さんま御殿！！』のさんまさんが持ってるあの恐竜の棒からずっと相談を受けてたんですか？？？

(715字)

【教授からの感想】