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イチローさんから紐解く、「にほんでいきる」人たち (note再開します)


 「共生」という二文字では整理できない、外国人が他国に住むこと。日本でのそのことを今のように意識し出したのは、幸運にも引退試合を東京ドームで観た、イチローさんの引退会見でした。

 後世に語り継がれるのは「後悔などあろうはずがない」のフレーズ。でも彼は、その前に自身がアメリカで外国人になった時の心境を語っています。当時の新聞記事には、「アメリカでは僕は外国人ですから。外国人になったことで、人の心をおもんばかったり、人の痛みを想像したり、いままでなかった自分が現れたんですよね。」と。

 『同僚は外国人』という本に出会った2020年の春、足りない労働力にあてがわれる技能実習生や特定技能1号の在留資格者が、家族を連れて日本で働ける日が来ることを想像しました。

 それがようやく、家族帯同が認められる特定技能2号の対象職種拡大という形で検討されることは、小さな一歩。でも、そこに至るまで何年ひとりで異国の暮らしをするのか、思いを馳せる人がどれだけいたでしょう。日本人は、企業によっては単身赴任制度すら縮小している中で。

 中小企業診断士としても、この先の世を見越した企業を応援できればと、2021年に所属支部で始まったコラム「逆算の経営」第1回で、株式会社LTBさんを紹介しました。

 この頃はスタートアップ企業も在留外国人向けの仕事や居住、そしてコミュニティに関するサービスを立ち上げています。でも僕はそれ以上に、在留外国人との心理的な壁を壊したり低くすることに活路があるはずの、日本人事業者が行うサービスこそ環境整備が必要であり、市場も大きいと考えます。だって、労働人口が減り、高齢化率がさらに上がり、1票の格差是正のように都市部に集中し、それでも日本人は減るわけですから。

 そして、常々気がかりなことが2つ。

 ひとつ。事件報道ではよく、「●●人が」といった表現で外国人であることや、心に病があること、生い立ちの境遇が犯罪加害者の素性に付け足されるニュースを見かけます。けれど、それらと犯罪の因果や相関関係ってあるんでしょうか。報道やジャーナリズムだってアップデートされるべきで、書く以上はそれを示してほしいです。警察や行政も、犯罪を元から減らすのに統計を生かせないでしょうか。

 彼らは外国人だからでなく、孤独だから日本で生き苦しい。追い込まれた人のごく一部が、日本の法制度を逸脱してしまう。それがまた、溝を深め壁を高くしてしまう。海外旅行好きな人でも、異国で寝床と職場の往復だけで言葉も通じない生活を、好き好んで続けないでしょう。預金どころか借金抱えてでは、なおさら。原則は転職もできない=閉じた世界に身を置く技能実習生や、資格外活動許可を得て週28時間のアルバイトでやりくりする留学生に、日本にいても母国でのひとときを思い出せたり、息抜きができる場づくりをしようなんて事業再構築計画を立てる中小企業が出てこないかなあ(大企業でもOKです)。

 もうひとつは、定住者や家族滞在などで、日本語教育が必要な子どもたちの環境。就学状況が不明な外国籍の子どもが少なくとも1万6000人いることを調査報道した毎日新聞の「にほんでいきる」に衝撃を受けて以来、どうやって解決できるだろうかと思案します。でも、まだ浮かびません。他言語AIチャットポットの企業様に実演してもらった時は、その進化が医療翻訳や行政相談など役に立つと期待しました。でも、子どもの言葉の壁は、人生を左右する。両親が非正規雇用の環境で育った子に、目先の賃金よりキャリア形成に目標を持ってもらうのが難しいと、国際交流協会で聞いたのと同じように。

 SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」と掲げている企業のみなさま、掲げたからには、国籍を問わず日本語教育が必要な子どもたちに「誰ひとり取り残さない」を実践してほしいです。

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