大阪モデルの問題点

コロナもとりあえずは落ち着きつつあるようです。大阪府は段階的に自粛要請を解除しています。ここでは大阪府の基準となっている「大阪モデル」の問題点を考えます。

大阪モデルの問題点

「大阪モデル」は具体的な数値目標に基づく行動計画を提示したことで高く評価されています。しかし、数値目標は適切なものを選ばないとかえって逆効果です。

大阪モデルでは4つの指標を用いて1)市中での感染拡大状況、2)新規陽性患者の発生状況・検査体制の逼迫状況、3)病床の逼迫状況を把握するものとされています。

まず、1)市中での感染拡大状況の把握には①新規陽性者における感染経路(リンク)不明者前週増加比と②新規陽性者におけるリンク不明者数を用いることになっています。しかし、どちらの数値も市中での感染拡大状況とはあまり関係がありません。例えば検査体制が拡充され、リンクを追跡する以外の新規陽性者が増えるとかえってこれらの指標は悪化します。

また2)の把握には③確定診断における陽性率を用いることになっています。しかし、検査対象を拡大しても陽性率は低下します。新規陽性者の発生状況を表すものであるとはいえません。また、検査体制の逼迫状況は普通に考えて検査までの待ち時間などが指標でしょう。

最後に3)の把握には④患者受入重症病床使用率を用いることになっています。重症病床の使用率は感染者が増えた後しばらく経ってから増えていきます。潜伏期間があったりや重症化するのに時間がかかるためです。なので、現在の病床の使用率を基準にしているとそのあと病床使用率が急に増えてそれから自粛をしても間に合わない、といったことがあり得ます。

ではどうするか

最近話題の「実効再生産数」(Rt)という数値があります。ある患者さんが回復するまでに平均何人の人に病気をうつすかを表した数値です。Rtが1より大きいと感染者が増えていきます。1より小さくなれば感染者は減っていきます。Rtは一つの目安になるでしょう。重症化する割合がわかれば、Rtと組み合わせて重症病床の使用率の予測も立てられます。

Rtを正確に見積もることは簡単ではありませんが、いろいろな手法で推定がされています。「8割おじさん」西浦教授のグループの推定ではこのようになります。

画像1

計算プログラム

私も僭越ながら推定を行なっています。

画像2

論文

西浦教授のグループは確認された感染者のデータのみを使っています。私の推定は未発見の感染者の割合も推定しようとしています(難しいですが)。私の推定は潜伏期間が考慮されていないので、西浦教授の推定に比べて変化が遅く出るようです。

まとめ

「大阪モデル」は基準の根拠が曖昧です。科学的根拠に基づいた基準作りが必要です。


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