一般男性の記憶

「頼人、多分嫌われてるよ」

遠い昔の朧気な記憶。
私がまだ小学生くらいの頃の記憶だ。

友人に言われた記憶はあるのだが、誰に言われたか定かではない。呼び捨てにされているくらいだからそこそこ距離は近い人物から言われたのだろう。

--嫌われている? 私が?

当時小学6年生の頼人少年にはあまりにも鋭利な一言だった。彼の心に刺さるには十分すぎた。

当時の彼はいわゆる「おませさん」だった。しかも目立ちたがり屋でわがまま。自分が目立ちたい、自分の思い通りにしたい。
ここまで要素が揃えば嫌われるには十分だった。

それでも彼は「自分は好かれている」と思っていた。好かれていると思っていたし、人気だと思っていたし、「面白いと思われてる」はずだった。

小学校低学年の頃からそうなった。
幼稚園に通っていた彼は、自分から話しかけることが苦手なせいか友人が少なかった。砂場で1人で遊び、1人で折り紙をし、1人で寝ていた。
変わりたかったんだろう。そんな自分から。
小学校に進学するにあたって一念発起した彼はグイグイと前に出るようになった。
自分から行動を起こし、笑ってもらいたい。そう思うようになったのである。

それが何年も続いた。ありがたいことに友人はそれなりに増えた。話しかけられることも増えた。だから正しいと思っていた。

それが一瞬にして打ち砕かれたのだ。冒頭でのあの一言に。

その言葉を言った某友人も「多分嫌われてる」とぼかしたのは私に直接伝えるに際してどこか後ろめたさがあったのだろう。

ほぼ間違いなく当時の彼は嫌われていた。

何故?

彼はわからなかった。だってふざけて、前に出て、そうすれば友人って出来るじゃないか。それの何が良くないんだ。


小学生最後に湧き出したその疑問に対して結論が出るまで、3年かかった。

私は「人をイジるのが下手くそ」だったのだ。

つまり全く空気を読めていなかったのだ。

「自分が、自分が」と思うあまり空気を読まずにただ突撃していただけ。他の人の話題になっても「そんなん知るか、この前さぁ」とでも言わんばかりに自分の話をしたいだけだった。自分が中心に居ないと気が済まなかった。
さらにイジり方もほぼただの暴言。好かれるわけが無かった。

それがわかった瞬間、私は今まで信じていた「正義」を全てかなぐり捨てた。

「イジられよう。」

ただそう思った。

ここから先の私は今と変わらないスタンスで生きている。
これが全て正しいとは思わないし、私の周りの人は笑ってくれてるのか私を笑っているのかはわからない。ただ今の立ち位置が1番気持ちよく落ち着ける。

最後に質問です。

あなたの周りの友人は「友人」ですか?
あなたが優位に立とうとしていませんか?

ありがとうございました。