直希

写真展をしながら全国を旅しています。 小説に載せるほどでもない、ままならない出来事を書…

直希

写真展をしながら全国を旅しています。 小説に載せるほどでもない、ままならない出来事を書いています。 お仕事はこちらから kida-naoki.com

マガジン

  • 東京社会人日記

    社会人になったと同時に地元岐阜から上京し、都会での生活を始めた。 右も左も分からない場所で、初めての仕事、初めての生活、初めての出会いと別れを平凡に経験する。 そして2021年10月に夢までの2歩目、第二回地域密着型写真展「I was here.」を終え、第3回目開催までの猶予期間がここに記されている。

  • 写真持論

    写真に対しての気持ちを、雑多に。

  • 記憶の旅行

    これは試作品のようなものです。 大学2年生の春、僕らはオーストラリアにいた。 一ヶ月の研修で訪れた国は、大学生の僕らにとって程よく退屈で絶妙に刺激的だった。 ただ、また行きたいという気持ちよりも、あの時間を恋しく思っていることは確かだ。

最近の記事

  • 固定された記事

社会で闘っている皆様へ。

こんにちは、47都道府県で地域密着型写真展を開催予定の直希です。 今回は第二回地域密着型写真展「I was here.」で展示した日記で最も共感を得られた小説風日記を、特別に公開したいと思います。 また実際に展示した写真も文中に挿入してあります。 もしお時間ありましたら読んでみてください。 僕らはバランスを取りながら生きている  社会人になってからしばらく経った。上司の意向で最低限のマナー研修や会社についての説明などは入社日から数日で終わり、それからすぐに業務に移った。

    • 「入り口の自販機はまだ100円のままなんだね」

      「甘酒いる?」 お父さんは100円で買った安っぽい紙コップに入った甘酒を差し出してきた。 僕たち家族4人は、毎年屋台が立ち並ぶ伊奈波神社には案の定人混みができていたので、少し離れた金神社に来ていた。旧市役所の目の前にあるその神社には、安っぽい黄金の鳥居が控えめに立っている。 時代遅れの映えを求めて金の鳥居の下に集まる人たちの横を通り過ぎると、チーズハットグやタピオカがごちゃ混ぜに売られている売店が一軒だけあって、少し悲しくなった。 両親と妹は参拝の後に手際よくおみくじを引き、

      • 生徒会が終わってすぐ、下駄箱に彼女の靴があるか見に行った。

        僕らは全員が満遍なく集まりやすい錦糸町で会うことになった。 2019年の冬、就活で東京を練り歩いた7人は社会人になると同時に7人とも上京し、そのうち2人はもうすでに東京を離れていた。 「実は転職してたんだよね」 社会人になってまだ1ヶ月目のとき、社長に連れられてクルーズ船に乗ってくる、と嬉々として話していた彼が、東京から離れた今どこで何の仕事をしているのか知らない。 「1ヶ月ぶりやな」 2回目の個展に来てくれたトモヤとは、久しぶりじゃない。 「1ヶ月ぶり!」 ナツキも個展に

        • 今まで居酒屋で使ったお金を集めるとどれくらいになるんだろう

          「その格好は絶対寒いでしょ」 ユウトくんとナヅカさんはもう中目黒の正面改札で待っていた。冬の13時はもう夕方の雰囲気を感じさせるほど穏やかで温かい。ユウトくんは緑のコーデュロイパンツに上はブラウンでまだ秋っぽかったが、ナヅカさんはもうマフラーを巻いていた。 今年は12月と同時に急に寒さが増した。一番好きな季節が今年はすっ飛ばされたような気がする。 「直希くんは今いくつだっけ?」 「今年25になりました」 「そっか、、なら俺らの4つ下になるのか」 「俺らフナくんと同い年だから

        • 固定された記事

        社会で闘っている皆様へ。

        • 「入り口の自販機はまだ100円のままなんだね」

        • 生徒会が終わってすぐ、下駄箱に彼女の靴があるか見に行った。

        • 今まで居酒屋で使ったお金を集めるとどれくらいになるんだろう

        マガジン

        • 東京社会人日記
          13本
        • 写真持論
          5本
        • 記憶の旅行
          5本

        記事

          「来月いっぱいで辞めるのよ」

          今日も定時後まで仕事をしている彼らに小さく挨拶をしながらオフィスを出る。 「木田ちゃん、今からお帰りですか?」 エレベーターへ向かうと、営業部で入社したときからお世話になっている先輩がコートを羽織りながら、下までご一緒していい?と笑っている。 「まだ帰らないんですか?」 「そうね、8時に新橋行ければ良いからまだ居座るかなあ」 「奥さんと晩酌ですか?」 「いや、ミキヒコ。覚えてる?」 彼は、2年ほど前に会社を辞めた。一度だけその先輩のエクセル講座かなんかに参加したことがあったが

          「来月いっぱいで辞めるのよ」

          写真と同じくらい記憶を蘇らせる音楽という表現は、正直ずるい。

          カーテンの下の方から冬の朝日が揺れている。 今日もカーテンを開け忘れた。忙しさに波のある僕の仕事は、今日は落ち着いている。 ベッドのヘッドボードに腰掛け、下半身はまだ布団の中。 垂れ流しにしていたSpotifyから、大橋トリオの「HONEY」が流れてきた。 仕事中、視覚にあった意識が聴覚に移っていくのを感じる。 写真と同じくらい記憶を蘇らせる音楽という表現は、正直ずるい。 2年前、愛媛にいたときによくmononofuというカフェに通った。 松山の道後温泉商店街の少し外れにあ

          写真と同じくらい記憶を蘇らせる音楽という表現は、正直ずるい。

          多くのストレスと小さな幸福を連れて生きている

          「今日遅くない?」 ミクニさんとくるみさんとエスカレーターで一緒になる。 「ウチナミさんいなかったんで。あの人いないとしんどいです」 同じ部署に3人しかいないと、一人が休んだときの仕事量が異常に増える。 休日が待っているからか、いつもより遅く出たオフィスなのにちらほらと仕事人たちは残っていた。他部署のこの二人と帰りが一緒になるのは初めてだった。 「どう〜?慣れた〜?」 港区にいそうな茶髪ロングのくるみさんは、いつも喫煙室を経由して出社する。 「いや、結構きついっす笑だいぶしん

          多くのストレスと小さな幸福を連れて生きている

          たまたま駅で会った友達の友達のような風景だった

          「すみだリバーウォーク行こうよ」 浅草寺に軽く挨拶をしてから、23時の仲見世通りを歩いていた。日本人と外国人が半々くらいの中、普段あまりお酒を飲まないのに4.5杯のハイボールを飲んだ新くんと、ふらふらしながら3秒に1回のペースでしゃっくりをしているウダくんとスカイツリーの方角へ向かっている。 道の端で地面にへたり込んだ酔っ払い彼氏の横でケータイをいじっている女性に、 「大丈夫!ごめん!」 と、ウダくんは酔っ払いながら女性にエールを送ると同時に、しゃっくりが止まらないことへな

          たまたま駅で会った友達の友達のような風景だった

          「私たち、頑張ってる方だよね?」

          4人が集まったのは、昨年11月の栃木旅行以来だった。 中禅寺湖でキャンプをしようと盛り上がっていたが、栃木の県境を越えた瞬間に雪が降り始め、着いたら着いたでほぼ雪国だったのでキャンプは断念した。 結局僕らは、中禅寺の中のストーブでぽかぽかに温められた部屋で写経をして、どこでも食べれるような定食を食べてドライブをした。 「またすぐ集まろ!」と言って解散した後、僕は東蒲田から引っ越して4人の家は近くなったが、一度も会わなかった。 僕の個展が終わったことを機に、大学では毎日のよう

          「私たち、頑張ってる方だよね?」

          一年で一番クリスマスが好きという人の北海道弁が懐かしい。

          「木田ぁ〜」 前から甘ったるい声が聞こえる。 パソコンから目を離し顔を上げると、別部署の同期が壁にもたれながら胸の位置で小さく手を振っている。 背景一面の窓ガラスから見える浜松町は、もう夜景だった。 「久しぶり、いつ会社辞めるの?笑」 定時を少し過ぎてオフィスを出る。木金が出社の僕にとっては、木曜日の今日が月曜日の気分だった。 当たり前のように定時を過ぎても仕事やミーティングをしている彼らに、邪魔にならないように小さく挨拶していく。彼らの横を通って先に帰ることへの何処か恥ず

          一年で一番クリスマスが好きという人の北海道弁が懐かしい。

          未完成である美しさ

          「ハウルになりたい」 大井町東口を出ると、小さな朝市が開かれていた。野菜や果物に集まるおじいちゃんたちを通りすぎスタバに入ると、すでにコーヒーを頼んでiPadを触っている彼がいた。 「朝早いのにありがとうございます。」 「こちらこそ、NGないんで何でも聞いて笑」 僕がPICTEを一旦抜けてからのその後を軽く聞いた後、写真や展示に関するインタビューを受けていく中で、僕は逆に気になっていたことを彼に聞いた。 「いつも撮っている写真のコンセプトは何?」という僕の質問に彼はそう答え

          未完成である美しさ

          人生はもしかしたら、本当は必要ないことでできているのかもしれない。

          「__がグループを退会しました。」 誰もいない日曜日の朝、8年前に作られたLINEグループから彼が抜けた。 彼は繊細で自分のことを偏屈だと言い、高校の時よりも色々考え込んでいるようだが、僕にとっては変わらない。 2回目の個展終わりに恵比寿で飲んだ時も、変わらない彼と2年ぶりに会えたのが嬉しかったが、酒は飲まなくなっていた。 2年前に彼が書いた歌を今でも聞く。 その歌は「高く評価した動画」で上野大樹さんのラブソングとカロリーメイトのcmに挟まれている。 高校一年生の時に作ら

          人生はもしかしたら、本当は必要ないことでできているのかもしれない。

          永遠に保存され、写真フォルダで腐っていく

          「生きているうちにもう見られへん。」 彼女からの電話は、僕が応答ボタンを押す前に消えた。 どうしたんだろうと少し焦りながらトーク画面を見ると、立て続けに何通かメッセージが来ていた。 「つきみて!」 「なくなっちゃう!」 「ごめん電話できやんねん」 普段全然ニュースを見ない僕は、仕事中の彼女からのメッセージで今日が皆既月食であることを知った。 ちょうど現像を出したいと思っていたから、使い切ったフィルムを封筒に入れて、ほぼ部屋着の状態で家を出る。もう長袖でも寒い夜になった。

          永遠に保存され、写真フォルダで腐っていく

          第二回地域密着型写真展「I was here.」と今後のnoteの使い方について

          こんにちは、47都道府県で地域密着型写真展を開催予定の直希です。 今回は第二回地域密着型写真展「I was here.」と今後のnoteの使い方について書こうと思います。 まずは小説風の日記について。 僕は今後も、下の記事にも書いたように地域密着型写真展を開催しながら生きていきます。 記事には愛媛で開催した第一回目のことが記載されていますが、つい先日、2022.10.19-24に恵比寿で第二回目となる地域密着型写真展「I was here.」を開催しました。 準備期間は

          第二回地域密着型写真展「I was here.」と今後のnoteの使い方について

          大塚製薬的な写真

          こんにちは、47都道府県で地域密着型写真展を開催予定の直希です。 前回の続きです。 "I was here."をコンセプトにした写真とは別に、大塚製薬的な写真を撮りたいと思っています。 皆さんご存知の大塚製薬のcm、特にカロリーメイトの広告が大好きです。 ポカリスウェットの広告も好きなのですが、カロリーメイトのクリエイティブが本当に好きです。 この記事にも書いてあるのですが、ターゲットやテーマ、キャッチコピーや写真など、どれをとってもコンセプトからブレてません。 そ

          大塚製薬的な写真

          写真で何を表現したいのか

          こんにちは、47都道府県で地域密着型写真展を開催予定の直希です。 周りの友達が結婚したことや子育てしていることをインスタで見るようになって、もうこんな年になったのかと思うようになりました。 第二回目の地域密着型写真展を開催するだいぶ前に、自分の将来のことについていろいろ考えたのですが、逆算的に考える中で、どんな写真を撮っていきたいか?という問いにぶつかり、自分の中である程度の答えが出ていたので、今回はそれを記事として残そうと思います。 僕は岩倉しおりさんに憧れて写真を始

          写真で何を表現したいのか