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【道の子】自然のなかで、しなやかに。じぶんの道を歩める子

大阪府高槻市にある「道の子」は
2024年4月に開校した里山の小学校です。

厳しくもあたたかい自然のなかで、たしかな強さを育てていける場所。

今回のインタビューでは、「道の子」のはじまりと日常についてお届けします。


ヨリミチは「色々な選択肢があること」を発信することを目的に活動しています。最近、「居場所」と呼ばれる場所は増えてきましたが、運営側の想いに触れられる機会は意外と少ないのが現状です。
そこで、私たちは「想い」を持って活動をされている方々にインタビューを行い、記事として世の中に発信していきたいと考えています。

今回は、大阪府高槻市の「道の子」の想いをお届けします。

お話を伺ったのは、道の子の代表 上村さん。

明るい笑顔のなかに、確かな信念を感じる方。

心もほぐれてきたころ、少しずつ上村さんのこれまでについて聞いてみる。

「中学生くらいから、教育の道に進みたいと思っていて、大学では教育学部に。小中高の教員免許を取ったんですけど、自分は教科を教えるよりも、子どもの成長や先生としての関わり方に関心があったので、小学校の先生を選びました」

そのまま、公立の小学校に勤めることになった。

「ただ、学校特有のルールとか、授業に違和感を覚えることが多くて」

「大人の都合が先行していることがすごく多くて、子どもの前で正直でいることが難しくなってくるんですよね」

正直でいられない。
上村さんは、どんなふうに子どもたちと関わりたいと思っていたんですか?

僕はどうしても、目の前で起こる出来事を最後まで丁寧に扱いきりたくて

「子どもたちのトラブルとか、喧嘩とか。それを丁寧に扱うことで、子どもたちにとっての学びになると考えていて。
でも、学校の先生ってやらなきゃいけないことが多いんですよね」

なにかトラブルが起きても、短い休み時間のなかで子どもたちの本音を聞き出し、向き合うことは難しかった。授業には遅刻できないし、たった2人の問題でクラスの38人を待たせてしまうと思うと、これ以上時間は割けない。
子どもたちにしっかり向き合えているのか、自信が持てなかった。

「後悔というか、反省というか、罪悪感みたいなものが渦巻いていました」

「みんなはもっとお互いのことを理解して、本音でぶつかって、社会に向き合っていく力をつけられたはずなのに、できてないなっていう気持ちがずっとあって」

もっと正直に、思い切って生きていきたい

3年間勤めていた学校を辞めて、
自ら教育をやっていくことを決意しました。

道の子のはじまり

こうして始まった、まだ見ぬ理想の教育への挑戦。
現在に至るまで、どのような経緯があったのでしょうか。

「2021年に、『道の子』の前身となる『なんとかスクール』を設立しました。」

「なんとかスクール」は、フリースクールとオルタナティブスクールを区別しない教育の場。


フリースクールとオルタナティブスクールって、
どんな違いがあるんですか?

フリースクールは、学校に行かない子の居場所の役割を担う場所としての意味合いが強いかな。
オルタナティブスクールは、『学校教育じゃなくてこっちの教育を受けさせたい』と思った人に向けた、積極的な意味を持つ教育の場所。」

「最初はこの2つを分けずに運営していたんですけど、それだと全くターゲティングができなくて。僕たちの方針に賛同してくれている人たちにも届かない、ということが起きていたんです」

「教育を通して、子どもたちにとって公教育で学ぶよりも大事なことを伝えたいと思っていたので、オルタナティブスクール一本で行こうと決めました」
2024年4月。
このタイミングで、オルタナティブスクール「道の子」が開校しました。

現在、道の子には11人の子どもたちが通っているそう。
ここで、「道の子」という名前に込められた意味について伺ってみました。

「そうですね、理念も含めてお話しますね。

…僕たちは、子どもたちを強い子に育てたいんです」

強い子。それは、自分の道を歩める子。

「教育って、いくらでも現実逃避できてしまうんです。今の社会が悪いから、今の日本が悪いからって。でも、厳しい状況かもしれないけど、そこから離れたらいけないと思っていて」

「子どもたちは、今の社会のなかで一歩ずつ自分の幸せを掴みにいくんですよね。自分の道から足を離さずに歩いていく。」

そういうことを大事にしたいと思って、「道の子」と名付けました。

自然のなかで過ごす、道の子の日常

道の子には、学校のような時間割はありません。
子どもたちは、手作りの小屋と自然豊かな山のなかで毎日を過ごしています。

「自然の中って、ありのまましかないんですよね。
人に対して忖度してくれないんです」

手加減してほしくても、してくれない。
家庭や学校で簡単にできることも、自然の中ではうまくいかないこともしばしば。
そんな自然の中だからこそ、子どもたちに本当の達成感が生まれるそう。

「だから、ありのままの自然が子どもたちにとって最適な場だなと思ったんですよね」

「子どもたちは、誰かに『ありがとう』って言われたときとか、必要とされてるって感じる瞬間にすごく光って見えるんです。
めちゃめちゃ頼りになるし、すごい誇らしそうに笑うんですよね。
それが、やっぱり僕は好きやし」

そう話す上村さんが嬉しそうで、思わずこちらも笑顔になる。

「今日もね、まあ、よくあるんですけど」
と、子どもたちの様子を教えてくれた。

朝10時半ごろ。
基礎学習の時間を終えたら、子どもたちは「今日やること」を話し合う。

作戦会議の時間

1人の子が「今日紙芝居をやりたい」と言い出した。

「僕のほかにもう1人スタッフがいるんですけど、その方とずっと紙芝居作ってて。」

道の子のスタッフ 児島さん 


「でも、今日はもう別の子たちとスポーツする約束をしちゃってたんですよね」

スポーツをするには、遠くの公園に行かなくちゃいけない。
どうにも折衷案が出せない状態だ。

「明日とあさっては雨なんですよね。スポーツは今日しかできないけど、紙芝居は明日でもできるじゃないかって話になったんですよ」

確かに。

「でも紙芝居やりたい子は、理屈に関係なく今日やりたいんです(笑)
『今日じゃないと絶対ダメ』って言ってて、なにがそんなにダメなんかはわからないけど、でもその気持ちには共感できるじゃないですか」

そこで、別の子がくじ引きを提案したそう。

当たりを引いたのは、紙芝居の子だった。スポーツをやりたかった子は泣き出してしまう。くじ引きで決めたから文句は言えないけど、涙は止められない。

周りの子たちも、その様子をみて「紙芝居は明日でもできるんちゃうん」と話していた。

「ほんならその子はね、もうずっと悩んでるんですよ。隣でスポーツやりたい子は泣いてるし。最初は『もう今日は紙芝居に決まったから』みたいな感じだったんですけど、少しずつ気持ちが変わっていくのを感じてて

その子は『紙芝居は明日でもできるし、俺もスポーツやるわ』って譲ったんですよね」

「スポーツをしたかった子は、その子が無理していないか心配しながら、
『でもありがとう。また今度こういうことがあったら、俺が逆の立場になれるようにする』って伝えてました」

譲る側と、譲られる側。
ただそれだけじゃなくて、お互いを思いやりながら着地点を見つける。

「日常茶飯事なんですけど、結構いいんですよ、こういうの。
いろんな気持ちが揺れ動いていて。

自分の思いも聞いてほしいし、相手の気持ちも想像する。
なにがすごいかって、譲った方がね、結構晴れやかな表情をするんです。

目の前のことに手いっぱいになると、どうしても足りない部分に目を向けてしまいます。

そんな日常のなかで忘れがちな「与えることの豊かさ」を、道の子の子どもたちはよく知っていました。

当たり前の選択肢になれたら

「今は、やっぱり小学校に行くことしか選択肢にないと思うんです。
なにを言うてんねん、って思われるかもしれないけど、僕は道の子の教育が王道だと思っていて。

将来的には、本当の意味での教育の選択肢になれたらいいなと思ってます。

そのために、もっと道の子を盤石にしたい。
今は、スタッフの集め方とか、色々な人へ広める方法について困ることが多いんですけど…そういった問題を早く突破していきたいです。

『小学校もあるけど、私は道の子かな』って思ってもらえるくらい当たり前の選択肢になれたらと思います」

(2024/10/2 取材 ヨリミチ ゆきの)

最後までご覧いただきありがとうございました。
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オルタナティブスクール 道の子

在籍
11名(2024年10月現在)

募集対象

小学1年生から小学6年生

時間
平日9:30~15:30
*祝日、夏期・冬期・春期の長期休みあり

定員
20名程度

学費
月額30,000円 *入学金10,000円

場所
集合場所:大阪府高槻市原989 
活動場所:道の子ファームとその周辺

現在、今年度と次年度の体験・入学を受け付けております。

ご質問や体験、入学などお気軽にお問い合わせください。

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https://www.instagram.com/yorimichi_siyou/

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