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道草植物図鑑No.25「スベリヒユ」

隣駅までのお出かけ。
涼しかったら、徒歩も楽しい距離です。

だけれども!ゆっくり散歩するにはまだ暑い。

早々に「よし、電車でいこ〜」と決めてしまいました。
仕方がないので、最寄り駅まではてくてく歩きます。

道中ふと目に止まったのは、ぷっくりした葉っぱのあのこ。

最近流行りの多肉植物の一種「スベリヒユ」です!

ヤマトシジミが蜜を吸いに来ていました。

電車の時間も気にしなければいけせんが、
「おお〜吸ってる吸ってる」と、
ついじっくり見入ってしまいます。

人が近づいても全く気にしない。
単にあまり警戒心がないってだけなのかもしれないけれど、
スベリヒユ、さぞかし美味しい蜜を作ってるんだなぁと勝手に感心。

「暑い中、本当にご苦労様です」と労ってあげたくなる...!

スベリヒユは熱帯に広く分布する植物です。
つまり“暑い”は慣れっこ、暑さ対策に余念のない植物なのです!
ここでスベリヒユの暑さ対策を2つご紹介します。

スベリヒユの暑さ対策❶
道でスベリヒユを見つけたら、ぜひ葉っぱを触ってみてください!

周囲の草たちとは違う。
弾力と厚みのある葉っぱだとわかると思います。

ぷっくりした葉っぱ可愛い♡
これは多肉植物全般に言える特徴ですが、この分厚い葉っぱや茎に水を貯蔵することができます。

スベリヒユの暑さ対策❷
水分を溜め込めるなら、もうそれで充分でしょ!
と思いきや、さらに複雑な方法で水分の損失を防いでいます。
その方法は「光合成」の仕組みにあります。

一般的な植物は、日中に気孔を開いてCO2を取り込み、光合成をして糖を作り出します。
光合成は太陽の光が必要なので、日中にCO2を取り込むのは自然なことですね。

ざっくり光合成説明図

けれど乾燥が激しい場所や熱帯地方でこれをすると、気孔からの水分喪失がかなり痛手になります。


一方でスベリヒユは、水分が奪われにくい夜に気孔を開いてCO2を取り込み、
一時的にリンゴ酸という物質に変えて貯蔵します。
そして、太陽の光が得られる日中にCO2に戻して光合成行うのです。

ざっくりCAM説明図

こういった仕組みをもつ植物をCAM植物と呼び、サボテンもCAM植物です。

この2つの方法で体内の水を守っているおかげで、真夏のアスファルトやカラカラの砂地でも元気に生育しています。

アスファルト
カラカラの砂地

徹底した節水技術に感心してしまいますね!

また本で調べていると、なんとこの可愛い花の雄蕊!触ると刺激の方に動くのだそうです!

昆虫が蜜を吸いに訪れた時に、きちんと花粉をくっつける工夫ですね。

そんな話を聞いたら、触ってみたくなります。
翌週のお休みの日、またスベリヒユに会いに行きました!

さっそく指を使って、こちょこちょしてみる。

真ん中動いた雄蕊
端っこに動いた雄蕊

確かに、微かだけどにゅ〜んと動く!
夕方に見に行くとみんな蕾なので、午前中に行くのがベストです!
あまり強く触りすぎると動かないので、優しく触ってあげてください。

さらに周囲を見てみると、しばんだ花や結実した果実もありました!

しぼんだ花
結実した果実

道端の植物は短いスパンでどんどん姿形を変えていくので、同じ場所で観察しても飽きないですね。

また、スベリヒユの特徴としてよく言われるのが、“美味しい”ということです。
ネットで「スベリヒユ レシピ」と調べると、たくさんのレシピが出て来ます。
確かに、どれも美味しそう!
しかもスベリヒユはビタミンやミネラルなどの栄養も満点!
昔から里山などでは、一般的に食べられていた野草なのだそうです。
今度、スベリヒユ料理作ってみよう!

カラカラの暑い土地でも元気に生きるスベリヒユの生存戦略は、体内の水分を徹底して守ること。
それくらい生き物の体には水が必要なのです。
人間の体はそこまで徹底した節水は難しいので、皆さんこまめに水分補給をして夏を乗り切りましょう!

後日談
硬いアスファルトの上でこんもり育ったスベリヒユがいました。

元気をもらえる光景!

食べてみました!↓


スベリヒユ
Portulaca oleracea
スベリヒユ科スベリヒユ属

在来
開花期:7〜9月
生育地:路傍、畑地など日当たりの良い場所


出典:雑草・野草の暮らしがわかる図鑑/岩槻秀明
   誰かに話したくなる雑草のふしぎ/森昭彦
   おもしろ植物図鑑/花福こざる
   二訂版スクエア最新図説生物neo/吉里勝利

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