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マティス_自由なフォルム


マティス展 展覧会場の様子

マティスのフォービズムの作品や切り絵の作品はもちろん知っていましたが、とても多彩な表現活動をした芸術家だったということを知った展示会でした。
画家、彫刻家、素描家、版画家としてのたゆまぬ活動の一部が紹介されており、生涯で本もたくさん執筆されていることもわかりました。

彫刻と絵画の並行

マティスはしばしばモデルの同じ姿勢を、絵画と彫刻の両方で実現することを試みている。<農奴>のためにポーズをとった男性モデルは、ポール・セザンヌの影響が色濃く認められる1900年頃の油彩<裸の男>にも描かれている。一方、1903年の彫刻<マドレーヌⅡ>における女性のコントラポスト(片足に重心を置いた、彫刻のモデルの古典的な姿勢>は、1899-1900年頃の油彩<青の裸体習作>にも現れている。また、1937年の<横たわる裸婦Ⅱ>における、横たわった女性が左肘を地面につけ、右手を頭の後ろに回し、右足で左脚を跨ぐ姿勢もまた、マティスの絵画に幾度となく現れる馴染みの姿勢である。しかしながらマティスは、絵画と彫刻が異なることについてはっきりと次にように書いている。「私は彫刻家のように彫刻をやったわけではありません。彫刻が語ることと絵画が語ることは違います。絵画が語ることと音楽が語ることは別です。これらは並行した道であって混同することはできません。」

アンリ・マティス 図録より
横たわる裸婦Ⅱ 1927年
赤い小箱のあるオダリスク 1927年

1909年の<蛇女>には、この彫刻のためにマティスが参照したとされる女性の写真が残されている。女性は左肘を高い台に乗せ、足を交差させて立っており、その体はS字を描いている。マティスは1940年に、蛇女>についてレシギエ修道士に次にように語っている。「小さなずんぐりした女性です。私はこれをどんな視点からもすべてが見えるように仕上げました」。「しかしながら実際には、見るものはこの作品のすべてをどの視点からも決して見ることはできない。事態はむしろ逆で、作品の周囲を回って眺めれば、体の各部分と高い台の組み合わせによる形態が様々な様相を見せるのがわかるだろう。

アンリ・マティス 図録より


蛇女 1909年
<蛇女>のための写真資料 19世紀後半

感想

マティス_自由なフォルムを学生時代の友人と観覧。会場と同時に入ったにも関わらず結構な人でした。本展示は学芸員さんの工夫が随所に感じられる構成でした。後半の切り絵&ステンドグラスを楽しみに来場したのですが、前半の彫刻、スケッチとバリエーションに心を奪われました。

マティス自身が「いつも制作は実験的で冒険だ」と述べているように、スケッチが連続して何枚も書かれるそのプロセスはまさに実験的。角度を変えたり書き方を変えたり、省略や追加がされる。彫刻では立体的な表現を、絵画では彫刻的思考でさまざまな角度で切り取って、定着させようとした試みも感じられる。立体と平面との行き来が興味深い。

彫刻では支える腕にかかった重量感や曲げられた腕から透けて見える空間が感じ取れる。反対側に回れば、真後ろが、横から見ると支持している構図が見て取れやすい。
立体にはこうした角度による理解の違いがあり、平面では理解され切り取られた風景が定着される。
定着する前の試行錯誤される思考の試行が立体では実験され、忘れ去れないうちに、スケッチで書き留められたというマティスの体験が感じ取れた。


写真の女の子が微笑ましかった。

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