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一杯のラテと、二人の笑顔がつなぐ想い

飯野 里奈さん / BEAR COFFEE 店長
沖縄県生まれ東京育ち
東京の有名コーヒー店にて店長を務めた後、結婚を機に、寄居町へ移住。現在は、お義母さんとともに、寄居町で本格ラテアートが飲めるコーヒー店「BEAR COFFEE」の店長を務める。

飯野 佳代子さん / BEAR COFFEE オーナー
埼玉県寄居町出身
寄居町に生まれ、寄居町で育つ。昨年、息子さんの結婚を機に、お嫁さんとともに、「BEAR COFFEE」をオープン。現在は、カフェのオーナーを務める。

暮らしてきた環境とのギャップに、驚きだった

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- ご主人との結婚をきっかけに寄居へ移住されたとのことですが、ご主人と出会う前に、寄居町って聞いたことありましたか?

里奈: 正直なところ、まったく無かったですね。(笑)
最初は、どこだろう?とわからなくて、ざっくりとした説明では、秩父の方だよ、ということだけ聞いていて。
埼玉の北部は、母方の祖母の出身が秩父で、それで来たことがあるくらいだったので。

- 実際に寄居に来てみて、どんな印象でしたか?

里奈: 山が見えるぞ、って思いました。(笑)
あとは、家同士が隣接してないというか、一軒家がボンとあって、お庭とか畑があってというのが、東京だと、家もアパートも全部隣り合って建ってるので、間が空いている、ということにも驚きましたね。

佳代子: 彼女が初めて来た家が、男衾という田園地帯で、特に田舎の地域なのでね、畑の中の一軒家という感じで、びっくりしたと思いますよ。(笑)

- 都会から来ると、普段見れない景色かもしれないですね。

里奈: あとは、人が少ない…とは思いましたね。(笑)
駅とか電車を利用した時も、座れるんだ!ってびっくりでした。
今まで育ってきた環境とは違うというか、ギャップがあって。

- その中で、いいなあと思ったところはありましたか?

里奈: やっぱり自然が多いところですかね。
もともと釣りとか、そういうアウトドアなことが好きだったので、「近くに川があるって、いいな。山にも登れるじゃん!」という感じで。
なので、休みの度に、釣りに行ったりしていました。

田舎に来るのは、自分にとってプラスだった

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- 寄居に頻繁に来るようになって、印象が変わったところやもっと見えてくるものはありましたか?

里奈: 人がゆったりしていて、優しい雰囲気の人が多いなって思いました。
歩いていると、おじいちゃんおばあちゃんが挨拶してくれたりとか、来て感動したのはそこでしたね。

- 確かに、東京だとなかなかないですもんね。結婚のタイミングで、寄居に住むことは決まっていたんですか?

里奈: もともと、主人が働いているところがこっちだと聞いていたので、最初から特に「どうする?」とかもなく、「じゃあ、住むなら寄居だね〜」と。

- 田舎に移り住むことに対して、なにか抵抗はありましたか?

里奈: それが全然なくて、どちらかというと釣りとかが好きだったので、「お、遊べるじゃん!」くらいの気持ちで、ちょうど東京の人混みも嫌だなと思っていた時だったので、田舎に来るというのは、自分にとってはプラスでしたね。

趣味だったコーヒーを、仕事にしたいと思った瞬間

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- 東京にいらっしゃった時に、有名なコーヒー屋さんで店長をされていたと伺いましたが、これまでのことを少しお聞きしてもいいですか?

里奈: 学生の時は、一応バリスタを育てる専門学校に通っていたんですけど、もともとバリスタを目指すことになったきっかけが、以前働いていたお店のオーナーのラテを飲んで、趣味だったコーヒーを仕事にしたいなと思ったことだったんです。

- 私も以前、お店に伺ったことがあるのですが、海外のバリスタもいて、異国感のあるかっこいい雰囲気のお店ですよね。

里奈: オーナーがもともとバリスタの世界チャンピオンということもあって、外国人のバリスタが勉強したいと、わざわざ来るようなお店でしたね。

- 学生時代に、忘れられない出会いがあり、コーヒーの道に進むことを決めたのですね。専門学校卒業と同時に、そのお店に就職したのですか?

里奈: そこが第一希望だったので、バイト面接ではなくて、本社に直接直談判をして、面接にこぎつけたんです。

応募だけで、300人以上来ることは知っていたので、書類だと落とされてしまうと思って、直接、面接してくださいと言った方が早いだろうというか、会ってもらわないと、次に進まないと思ったので。

- すごい、熱意が伝わったのですね。働く時には、やりたいことも決まっていて、第一希望が通って、不安もなく、ワクワクという感じでしたか?

里奈: そうですね、ただお店にいるバリスタのほとんどが世界大会に出場するような感じで、みんなレベルが高かったので、カフェ店員として働くのが初めてだった分、ついていけるかどうかは不安でしたね。
もともと経験者で、レベルアップのために移籍してくる人が多かったので、いきなり入って大丈夫かな、、というのはありました。

今が頑張りどころ、と奮闘したラテ漬けの日々

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- その不安を、どう克服していったのですか?

里奈: とにかく毎日ラテ漬けで、お店入ったらひたすら練習、家に帰ってもお風呂場にピッチャーを持ち込んで、アートを描く時に「対流」と言ってスチームミルクの流れを作るんですけど、それをお風呂のお湯で練習したり、動画を見てイメトレしたり、秒数を計算して書き出したり。

お店でラテを提供できるレベルに早く達したいというのと、他のバリスタについていきたかったというのがあって、結構やり込みましたね。

- 本当に努力の賜物ですね。すぐにラテを出せるようになったのでは?

里奈: 1ヶ月半くらいで、一応出させてもらえるようになりました。
専門学校に入ったのが年齢的に遅くて、周りで働く先輩や同期も、自分より年下の人が多かったので、なんかそれが悔しくて、すぐに追いつきたいというか、1番になりたいという想いがあったかもしれません。

結果的に、同期の中で1番早くラテを出せたんですけど、その順番で入れる店舗も変わってくるので、中でも本店はなかなか難しくて。
でも、どうしても本店に行きたかったので、「今頑張らないと!」と思って、頑張りました。

- 大会にも出場されたんですか?

里奈: 勤めてから2年くらいかけて、ラテアートの大会にも出るようになりました。
想像以上にレベルが高くて、技術よりも緊張との戦いでしたね。

でも不思議で、自分がうまくいったと思っていない時の方が、得点が高かったりするんですよ。
上手に描けたと思っても、周りと同じ絵柄だと点数がなかなか上がらなくて、一人飛び抜けて違う絵を描いていると点数が上がったりするので。

自分では想像も出来なかった、諦めようと思っていたら…

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- 中学生の頃から好きだったことを、実際に仕事にしようってすごいことだと思いますが、コーヒーを好きになった原点はどこにありますか?

里奈: きっかっけは、お母さんがカフェで働いていたり、おじいちゃんがコーヒー好きだったので、飲んでいる姿が美味しそうに見えて、私も飲みたいなあというところから始まっているんだと思うんですよね。

- 3年以上、ずっとそのカフェで働いてきて、結婚を機に辞めるとなった時は、ご自身の中で葛藤はありましたか?

里奈: 結婚に関しては、マリッジブルーとか全くなかったんですけど、唯一、お店を離れることへは、悲しさと言うか、そこはなんとか出来たら良かったなという気持ちはありましたね。
周りの人にも恵まれたし、1番やりたいことを、やりたかった場所で出来ていたので。

- 寄居で何かできたらな、という想いはあったのですか?

里奈: その時は、1番好きだったお店も辞めるし、寄居にカフェもなかったので、結婚・引っ越しを機に、バリスタは諦めようという気持ちだったんですよね。

前のカフェで、店長になるという目標も果たせたし、大会も出れたからいいかな、と。
寄居でやりたいという気持ちはなかったわけではないけど、お店もないし、チェーン店で働くのはちょっと違うかなという感じだったので、もう切り替えようと思ってたんです。

- そんな中、どういった経緯でお店を始めることになったのですか?

里奈: そこで、お母さんが「お店をやるから、一緒にやらない?」と誘ってくれて。
私がそういう仕事をしてたと伝えた時に、「もったいないから、お店をやったらいい。」と言ってくれて、ラテアートも諦めなくていいと、いいマシーンまで入れてくれて、自分としては想像もしていなかった話でした。

ご縁とワクワクから、お互いのやりたいことがカタチに

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- 佳代子さんとしては、里奈さんのお話がある前から、お店をやってみたいという想いがあったのですか?

佳代子: 何年か前からお店をやりたいという願望はあったんですけど、そういう経験がなかったもので、コーヒー屋さんをやろうという発想は全くなかったんです。

でもやっぱり、里奈ちゃんとの出会いですよね。
仕事を辞めて、それだけのスキルを持った人が、東京から寄居に来るわけじゃないですか。
なので、これはもったいないな、と思って。

最初、冗談で「一か八かやってみようか〜」という感じだったんですけど、話の流れでね。(笑)

里奈: ほんと、お庭でバーベキュー食べながらね。(笑)

佳代子: 酔っ払って言った冗談話から、「やっちゃおうかー!」となって、でも、落ち着いてからもやっぱりやろうか、やりたいね、という感じで。

- 「やっちゃおう、いいじゃんいいじゃん!」の勢いで、本当に実現してしまったのですね。

里奈: 私としては、「結婚もできた!やりたいこともできちゃった!」っていう感じで、いっぺんに叶ってしまった状態で、(笑)もう一回大会目指せる、ラテも淹れられる、お嫁にも行ける、あれれ?と、本当にびっくりしました。(笑)

- お母さんのサポートのおかげですね。

佳代子: いやいや、ご縁があってということで。

一人だったら、出来なかった

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- お姑さんとお嫁さんという関係性の中でお店をやってみて、気付くことはありますか?

里奈: まずは、びっくりされますね。
「えー!」という感じで。(笑)

佳代子: 珍しいパターンなので、それはありますね。
「大丈夫なの?」っていうか、嫁と姑というのが、世間一般的にね。(笑)

でも、お嫁さんが色々と経験してきていて、私は頼るばっかりなので、感謝の気持ちしかないです。
教わることが多いので、毎日勉強させてもらってます。

里奈: お義母さんのバックアップがしっかりあるからこそ、自分がキッチンに立てているので、そもそもお店なんて一人だったらできなかったですし。

大会があれば、「とにかく練習しなさい」と、こちらが「そんなに言ってくれるの?」と思うくらい応援してくれて、商品のロスも気にせず練習させてもらえたりとか、とてもいい環境でやらせてもらっています。

佳代子: もう、どんどん腕を磨いていただきたいと思うのよね。

コーヒーの美味しさを伝える、みんなが集える場所

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- 今後、里奈さん個人として目指す姿はありますか?

里奈: 寄居に来て思ったのは、カフェとかでコーヒーを飲むという感覚があまりない気がしていて、コーヒーと言うと、コンビニや缶コーヒーだったりするので、もっと幅が広くて美味しいんだよ、こういうコーヒーもあるんだよ、っていうのを広めていきたいですね。

コーヒーを飲む文化は、流行してると言えど、やっぱりまだ東京とかに留まってしまっているイメージがあるので、もっと町でイベントとかをいっぱいやって、初めての方でも安心して楽しめるような場を作りたいですし、そこでコーヒーに興味を持ってもらえたら嬉しいです。

- 佳代子さんから見て、里奈さんはどんなお嫁さんですか?

佳代子: お嫁さんとしては、本当に素晴らしい方が来てくれたって思いますし、田舎も気に入ってくれて安心しました。

コーヒーについては、、お恥ずかしい話、それまではお茶派だったんですけど、里奈さんが淹れてくれたコーヒーは、やっぱり味が違うんですよね。
そこで、プロのコーヒーの味ってこういう味なんだ、コーヒーってこんなに美味しいんだ、って感動して。

あと、息子がどんどんコーヒー好きになっていくというね。(笑)
お砂糖を入れないとコーヒーを飲めなかった息子が、コーヒーについて語るようになって、本格的なコーヒーを淹れたりしていて。(笑)

なので、里奈ちゃんとの出会いで、うちの家族がコーヒーを飲めるようになって、コーヒーに興味を持つようになったんですよ!

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- 里奈さんとの出会いが、人生を変えたんですね!
最後に、
BEAR COFFEEさんとして、今後、寄居の中で、どういう存在でありたいですか?

里奈: みんなの集まれる場所になれたらいいなって思います。

佳代子: お客様からもよく、歩いて来れるところに集える場所ができて良かったと言っていただくので、そうなれたらいいなと思いますね。