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起きて夢をみる獣

夕方、自販機でミルクティーを買う。
恐る恐るひと口飲んでみる。
すると、お腹が「ん?うーん…」と唸った。
これは受け入れていいものだろうか、と迷っているようだ。
私はいいんだよ、受け入れてごらんとお腹に話しかける。
久々の甘い飲み物に、身も心もこわごわだ。

治ってきたからといっていきなり揚げ物なんかを嬉々として食べるわけにもいかず、まずはおにぎりなどでお腹を慣らしている。
腸炎になって苦しんだ一週間はとても長かった。
いつの間にか四月になってはいたけど、一日一日をゆっくりと考えながら過ごすのは初めてのような気がしていた。
いや、初めてじゃないな。
小学2年生の時に喘息で一週間入院した。あの時と似ている。
退院した日は少し寂しくなったものだ。
そうか。
昨夜、食事やその他の家事、やらなきゃいけないことなど自分の生活におけるあらゆることが急に遠く感じられ、妙だった。
なにか言葉にならない寂しさがあったのは、そういうことだったか。
今日まで支えられ、回復できたことをありがたく思う。

わたしの中でずっと燻っていた野心が、顔を出そうとしている。
わたしはそれがこんなにも大きくなっていたことに驚く。
いつか、日の目を見るだろうか。
わたしという獣は、いつだって貪欲だ。

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