近ごろのわたしたちは

2022年になった。コロナ禍と言われる状態に世の中がなってからもうすぐ2年が経とうとしている。
初めの混沌とした半年間が過ぎ、ロックダウンが明けた2019年の夏から、上海市内の市中感染者はずっと0だった。
公共交通機関、オフィスビルやモール、病院学校ではマスクの着用が義務付けられているが、基本ノーマスクが普通になっている。
大人数での会食にも制限はなく、国内旅行を楽しむ人も多い。

秋口から単発的に市中感染者が出るようになってきたが、陽性患者の行動記録をすぐトレースして公表し、住まいも公表の上、通った場所は全て48時間封鎖されて全員がPCRを受ける。その中で陽性が出たら検査を受けた全員も濃厚接触者とみなされ全員14日間の入院だ。

濃厚接触者も同様の扱い。けれども1年前は濃厚接触者が一つ出ただけで半径2km封鎖して全員一斉検査をしていたことを思えば随分と緩くなっていると思う。
けれども、先日日本からやってきた1人の日本人が2週間のホテル隔離後の1週間の健康観察期間(出勤、登校、食事や買い物などは許可されているが不要不急の外出を控える期間)にゴルフや飲み屋に出かけたのちに陽性となった時は、8000人が濃厚接触または濃厚接触者の濃厚接触者とみなされ全員48時間隔離対象となり、その対象者の多くが日本人の上うちの近所に集中していたため一時期日本人社会も騒然となった。その騒ぎも追加検査でさらに一名の陽性が判明して終わった。

国内でも感染を広めないためにはきっと中国のやり方が一番正しいんだと思う。
自分のいるところから移動したらまず隔離で健康観察する、日々の行動をアプリで記録管理する、国外との移動についてはさらに長い隔離期間を設け、ビジネス目的以外のビザ発行は厳しく制限する…
上海の入国時の隔離期間は強制ホテル隔離14日プラス7日の健康観察で、これは中国国内では一番短い。最長の場所は合計56日。最近の上海での入国時の感染増加を危惧して、上海市の隔離期間の短さが非難されているとも聞く。けれども、もうすぐオリンピックが開催される首都北京を感染から守るために、外国人の入国を上海のみに絞っているため、上海市政府も盾になっている自負から強気に隔離期間の延長はしない方向で拮抗しているようだ。
けれども例えば入国後の目的地が別にある場合は、目的地の隔離規定も加算される。なので、入国→2週間隔離→(健康観察7日→目的地へ移動)→目的地の規定で隔離(最低2週間〜4週間)…という感じになる。最低でも1ヶ月半隔離と待機にかかる計算だ。括弧内は以前は健康観察期間に飛行機での移動が可能だったが、現在は車移動に制限されているため(健康観察期間中に陽性になった日本人の影響とも言われている)、車移動可能な距離の目的地なら移動できるが遠方だと待機するしかないことに変わっている。

学校からも休暇中の市外への移動は極力避けること、市外に出た場合は2週間自宅待機と2回のPCRを受けてから登校するように言われている。要するにどこにも行くな、ということだ。夫は国内出張を再開しているが、万一出張先で感染者が出た場合は自宅に戻って来られない覚悟の上で行っている。

もちろん私と夫はワクチン接種は済ましているが、こちらの国産不活化ワクチンが日本で認められていない。子供への接種は秋から始まったが、デルタへの効果が懐疑的なことからためらっているうちにオミクロンが出てきてしまった。オミクロンはmRNAワクチンに耐性があるという話も聞いて、娘への摂取をどうするべきか、結論はまだ出せないでいる。

もちろん日本にも帰れず、息子と娘にも会えていない。息子は会えない間に大学院に進み、会えないまま卒業になりそうだ。娘の大学入学式にも成人式にも結局なにもしてやれないまま。ビジネス以外のビザの停止も続いているので、こちらに呼ぶこともできない。
私達が一時帰国できなくはないが、前後約1ヶ月半の隔離、さまざまな検査と証明書、何より日本に自宅も持たず日本の携帯番号も持っておらず運転免許も失効してしまった私達が今日本に帰ってどのくらいの期間自由に過ごせるのか…考えたら気軽には動けない。
ずっとオリンピックが終わればきっと帰れると思っていた。けれども今はそんな楽観的なことは誰も言えない。私たちは一見自由で、でもきっとものすごく不自由を強いられている。
マスクもせず自由に生活できる場所、けれどもそれはここから一歩も動けないことも意味する。皆普通に毎日を過ごしながら、どこかに行きたい気持ちが澱のように溜まっていく。
テレビで自由に旅する人達をありえない世界のことのように眺める。羨ましさも出てこなくなった。だって私たちもここで自由に過ごしている。ここだけなら。世界中の品物を網羅するネットショップもあって、買い物にも困らない。習い事もできるし映画もコンサートも楽しめる。
ただ動けないだけだ。

気がかりは日本にいる子供達だけだ。万一のことがあってもすぐに会いにいけない私の大切な子供達。どうか会える日までずっとずっと健康に親のことなんて忘れるくらい楽しく過ごしていてほしい。だから連絡は少ない方がいい。きっと楽しいことでいっぱいだろうから。

2022年は日本に帰って家族全員があって過ごせる日が1日でもあったらいいな。それが私の今年の願いだ。新年早々愚痴ばかりのつまらない文章を最後まで読んでくださったあなたに感謝します。ありがとう。あなたの2022年の願いも叶いますように。