蒸気活劇RPGスチームパンカーズ/Progetto Arca

1933年、蒸気都市ロンドン。 家庭教師バージット・ホロウェイは、教え子マーガレット・テイラーの失踪を知る。隣人の話では数日前から家を空けている様子だという。前回の訪問で特に変わったことはなく、旅行の予定などもなかったはずだが、一体どうしたのだろう。

一方ここは王立蒸気技術研究所。
蒸気工学の研究員、リュシアン・ラシュレーは、同僚の数学者、ジェフリー・テイラー博士が欠勤を続けていることに気付く。三度の飯より数学が好き、新型クロックエンジン「トリスタン」の開発が佳境に入った今、研究室に寝泊まりすることも珍しくない博士が一体どうしたのか。そう訝しむラシュレーは研究所長のもとを尋ねる。

カッパーボーイ試行8号の朝は早い。
「人類を守護し、家族の安全を守るのが使命ですから」 爽やかに語る彼の手には、今日も大量のパンチカードが握られている。パン屋の仕事もこれがあれば,難なくこなすことができる。
準備を整え部屋を出ようとしたそのとき、見慣れた小包が届けられた。
「やれやれ、仕方ありませんね。パン屋の仕事はお休みです。お父さんとお姉さんの安全はぼくが守らなければ」

そんな感じで始まった蒸気活劇RPGスチームパンカーズ「Progetto Arca」です。行方不明になった父娘を追って、一行はロンドンを遠く離れ、巨大な陰謀に巻き込まれるのでした。パンカーズの、テイラー親子の運命や如何に!(ばばーん)

すださんのバージット・ホロウェイは、イタリア出身。
幸福とは言い難い子供時代を送り、やがてマフィアに売られます。“仕込み杖”と呼ばれるまでに成長した彼女は、ある出来事をきっかけにマフィアを足抜けし、霧と蒸気の国にやってきました。鍛え上げた筋肉と日焼けした肌。
ですが恋する乙女にはそれは邪魔でしかないのです。 強くてかっこよくて健気でかわいらしい。 最後に乗り込んだ汽車は、番ではなく家族を乗せた方舟となりました。

遥唯祈さんのリュシアン・ラシュレーは、最初コメディー枠かと思ったんですよ。大仰で芝居がかった態度で「蒸気技術などではない。これは、蒸気魔術なのだ!」とか言ってたので。
ところがどっこい。同僚であるテイラー博士をリスペクトするとともに、その要求を実現に導いてくれるよき工学者でありました。 そしてカッパーくんを見守る眼差しの優しいこと。開発チームの一員、という立場を越えてまるでお兄さんのようでした。
バージットに対しては、その素性を疑いつつも、任務に当たってはしっかり共闘するというプロの仕草が素敵でした。エンディングも素晴らしかったです。(語彙力)

ありろさんのカッパーボーイ試行8号は今作の癒やし枠。シーンシーンでの言動がいちいちかわいくてかつマジメで純真です。てえてえ。
テイラー博士の研究室で開発され、ロンドン市中で市井に紛れて実証実験の真っ最中。のはずが、いつの間にかパンカーズとして活動し、MI5にまでコネクションを作る始末。
決め台詞「カッパーくんとお呼びください」の誕生秘話となったシーンではマーガレットとの関係性の解像度がより深まり、カッパーくんの「人類を守護し家族を守る」という使命感の出所が鮮やかに描き出されました。カッパーくん、そうだったのか……。

そんなこんなでシナリオは無事大団円を迎えました。 多分、ですが、賑やかな家族が一つ、生まれたのかなと思います。

まあね。相手はサイクロンです。自然現象ですから、しかたがありません。

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