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エモクロア/よるにつがえVer.SD

「やあ、お疲れ。今日は救急も来なくて静かだね。しかし、当直に研修医を二人だけって、この病院大丈夫なのかな?まあ、なにかあれば先輩たちが出張ってくれるから、問題ないのかな。とりあえずコーヒーでも飲むか。
え?退屈しのぎに昔話?まあいいけど。なにを話そうか。オレの地元の話?そんなの聞いて面白いのかね?まあいいか。
前にも話したかもしれないけど、オレは小学校低学年から高校までを、関東のハズレの田舎町で暮らしてきた。そうだね、仮に衣替町としようか。背後に九綱山という山を擁するその町には目立った産業もなく、農業と観光で生活を維持するようなありふれた田舎町だった。
その町には九綱祭、という祭があってね、毎年夏におこなわれるその祭では、神楽舞と弓による神事が行われていたんだ。高校当時のオレは弓道部に所属していて、その神事の弓士に選ばれた。舞手に選ばれたのは同級生の水本伊那って娘だった。彼女はオレとは違って町の古い家柄の娘でね、まあ大事に育てられたんだろうな。いかにもいいところのお嬢さんといった感じの品の良さがある反面、こう、一本芯の通ったところがあってね。長い黒髪が似合う、キレイな子だったよ。そう、黙っていれば、美人だったなあ。
勝ち気、というか、高飛車、というか。身内と見定めた人間には気安く話すしなにくれと気を使うんだが、そうでないとおとなしい、というか、きっぱりと線を引く、そんな娘だったかな。
その娘のとの関係?別に面白いことはないよ、ただの幼馴染のクラスメイト。それだけだね。好きだったのか?馬鹿言うな、そんなんじゃないよ。
町の名家の娘だった彼女が、転校してきたオレのことをなんで気に入ったのかはわからない。だけど、ぶっきらぼうで引っ込み思案なオレが、なんとか周りに馴染めるようになったのは、水本と晴彦おじさんのおかげだったんだろうと思うよ。
ああ、晴彦おじさんってのはね、町で唯一の医者の跡取りでね、当時は若先生って呼ばれてた。転校してきたばかりのオレをなにかと構いつけて、おれが弓道をやる、と知ってからはいろいろと指導してくれていたんだ。ああそう、彼も若い頃に弓道をやっていたんだそうだよ。
まあそれはともかく。
神事に出ることになったオレたちは祭に向けて稽古を進めていたんだが、ある日、そのオレたちの前に一人の女の子が現れたんだ。そう、彼女はヤヒロ、と名乗っていた。中学生か、小学生の高学年か、そのぐらいの年頃で、日本じゃあ珍しい白い髪が印象的だったな。あと口調が不思議だったな、「なんとかなのじゃ!」とか「お主は〜〜」とか。のじゃロリ、ってやつだったのかねえ。その子が祭を見てまわりたい、とそういうものだから、オレと水本は九綱祭をいろいろ案内することになったんだ。
そのころ町ではなんだか不思議な病気が流行っていてね。それまで健康だった人がムカデに刺されたと思ったら、いきなり寝込む、みたいな。そんなわけないって?オレもそう思ったけどさ、でもそうだったんだよ。
ああ、そのときは、騒動の裏話とか、ヤヒロの正体、とか、そういうのには全然気づいていなかったんだ。晴彦おじさんがなにを考えてたのか、とかもその時は全くわかっていなかったな。
……そろそろ回診の時間だな。じゃあ行ってくるわ。え?話の続き?
ああ、そういえばおれさあ、最近TRPGって遊びを始めたんだけどさ。それのシナリオのネタにな、この話がぴったりだと思うんだよ。だから、この先は秘密。
おまえもオレの卓に参加するなら、ことの顛末がわかるかもな。
システムはエモクロア、シナリオタイトルはそうだなあ、「よるにつがえVer.SD」ってことろかな。なにを言ってるのかわからない?遊びに来たら詳しく説明するよ。じゃあな、回診いってくるわ」

こんな感じですださんDLのエモクロア「よるにつがえVer.SD」を遊びました。すださん、あやめさん、濃密な3夜、ありがとうございました。養分をありがとう!

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