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疑念の残る米捜査当局の発表 - 日米一丸の水原一平の賭博問題の幕引き

一週間前の日本時間 4/12、連邦捜査局(FBI)、米内国歳入庁(IRS)、米国土安全保障捜査局(HSI)合同の記者会見がLAで行われ、賭博問題で水原一平を訴追した件が発表された。容疑は銀行詐欺。同時に、連邦検事から「大谷翔平は被害者とみなされる」という表明もあった。翌日(日本時間 4/13)、 水原一平はLAの連邦地裁に出廷、短い審理後に保釈が決まる。その後、「真相」を告げる報道が相次ぎ、テレビのワイドショーはずっとこの話題で番組を埋めてきた。「真相」報道は、大谷翔平の無関与と完全潔白を念押しするものばかりで、その影響を受けて、以前に大谷翔平の関与を疑う発言をしていた者たちへの強烈なバッシングが続いている。少しでも疑念を差し挟む者、過去にそれを口にした者には、容赦ない罵倒が浴びせられ、袋叩きの攻撃が続いている。疑問の発出が禁忌化された言論状況だ。

理性的に正視すれば、かなり出来過ぎた捜査当局のショーだと看取される。大谷翔平を被害者に固めて疑惑を否定し払拭するための、US権力による演出されたデモンストレーションだ。今、若い頃の立花隆がいれば、率直にそう感想を言うだろうし、そこからジャーナリズムの眼を光らせ、鋭意、真実の究明と仮説の提示・検証へと向かうだろう。忌憚なく、彼らしい洞察を述べ、われわれを覚醒と興奮に導いたはずだ。いわゆる健全な批判精神を持った者なら、4/12 の始終を見て、そこで説明された内容を聞いて、ますます疑惑を深め、彼らの辻褄合わせの作為を直観し、その意図を推し測る想像をめぐらせただろう。実際、矛盾はいたるところにある。綻びは幾つも見えている。常識で考えれば、FBIの説明とその後のニューヨークタイムズの報道(リーク)は謎だらけだ。奇妙な点が幾つもあり、鵜呑みにはできないと怪訝に思う。

まず第一に、大谷翔平が自分の銀行口座に3年間アクセスせず、残高を一度も確認しなかったという「神話」である。この説明は信じられない。盗まれた金の総額は24.5億円だとされている。エンゼルス時代の大谷翔平の年俸は、2022年が8.2億円(550万ドル)、2023年が45億円(3000万ドル)で、2年合計で53.2億円である。球団から給与が振り込まれた口座は、水原一平がボウヤーに送金した口座と同じで、つまり、この口座に入っていた金額の半分が消えていた勘定になる。2年間に稼いだ年俸の半分が盗取されていたのに、それを大谷翔平は 3/20 まで知らなかった、そんな話があるだろうか。それが事実だとすれば、大谷翔平は自身の生活費や小遣いをどう用立てていたのだろう。現金をATMから引き出すことはなかったのか。残高や入出金明細を確認することは一度もなかったのか。水原一平ママから現金を受け取っていたのか。

第二は、水原一平の賭博回数の多さと頻度の異常であり、その事実に大谷翔平は全く気づいてなかったのかという素朴な疑問だ。FBIの捜査では、水原一平は2年間で1万9000回の賭けが確認され、1日平均25回も行われていたと報告されている。1日25回。ギャンブルの専門家に訊きたいが、この実行と準備に必要な時間はどれくらいだろう。水原一平の場合、賭けは常に負け越しで負債が膨らむ過程であり、したがって勝って取り返そうと必死だったに違いなく、データ収集と知識習得と分析研究に懸命だっただろう。その水原一平の日常は、朝から晩まで、大谷翔平の通訳兼マネジャー兼トレーナー兼ボディガードとして、生活全般を補佐し介助するスーパー執事として多忙を極めていた。大谷翔平の手となり足となり口となって、常に傍に付き添っていた。賭博はスマホで行われていたが、本当に大谷翔平は相棒の「ギャンブル依存症」を知らなかったのか。

第三は、3/19 のESPNの90分取材に対する回答と翌 3/20 の変転の奇異である。記者の最初の取材に対して、水原一平は、大谷翔平と相談して借金肩代わりを依頼し、大谷翔平が承諾してくれたのだと証言している。このとき、電話取材の現場には、危機管理担当広報のマシュー・ヒルチックが同席していた。おそらく、代理人のネズ・バレロが急遽雇って対応させたのだろう。取材はきわめてクリティカルな問題で、対応を間違うと命取りになる。だが、結果的にこのときのチーム大谷の判断と対処が間違っていて、事態は深刻な騒動へと発展してしまった。その点は、問題が表面に出た当初に菊間千乃が指摘している。明確にしないといけないのは、このとき、ESPNの質問にどう答えるかは、チーム大谷で調整して事前に準備していたということだ。水原一平が、個人でその場で即興でベラベラ喋ったわけではないのである。

つまり、「大谷が肩代わりを認めてくれた」という 3/19 の返答は、危機管理担当を含めたチーム大谷の公式声明であり、突如発生した賭博疑惑のアクシデントに対して、チーム大谷が臨んで応じたトラブルシューティングのレスポンスなのだ。ビジネスのアカウンタビリティだったのである。バレロ(と弁護士と会計士)は、それで済ませられる、troubleshooting を done できると楽観したのだろう。ところが、その想定は甘く、それを知ったド軍(法務)が仰天し、それでは大谷翔平も幇助で捜査対象になってしまう法的判断の危機に慄き、ド軍主導で 3/20 の旋回(=水原一平が窃盗した )に至ったと推測される。ド軍はチーム大谷の迂闊と失態に激怒したに違いない。以上の推察を根拠づける一つの情報として、アメリカの広告代理店関係者の匿名の見解をネット記事が紹介している。非常に興味深いし、核心を衝いた見方だと思われる。

上の段で、私は「チーム大谷」と書き、ESPNの最初の取材への応答 - 失敗の発火点 - を用意した責任者はバレロだと書いた。が、ここで考えなくてはいけないのは、それでは、大谷翔平はそれを何も聞いてなかったのかという問題だ。ESPN記者の取材経緯が時系列で整理されている。米国時間 3/18 午後3時(韓国 3/19 午前4時)にESPNがバレロに連絡、危機管理担当広報が取り次いだ後、3/18 午後8時30分(韓国 3/19 午前9時30分)電話取材が開始され、「大谷が肩代わりしてくれた」という説明が返ってきた。当然、この回答はバレロが責任者として決定・指示したものだが、果たして、大谷翔平の耳には何も入ってなかったのか。電話で記者に応答し発信すれば、その情報はESPNの記事になる。全米全世界に報道される。その大事な中身について、当事者の大谷翔平が、事前に何も知らなかったとは到底思えない。

そう推理すると、おそらく、大谷翔平が借金を肩代わりしたのは事実なのだろう。ともかく、24億円も大谷翔平の口座から盗んでいて、それが将来に亘って発覚しないと水原一平が考えていたなどあり得ない。2年間の年俸の半分をボウヤーに送金している。盗んでいれば必ずどこかで露呈する。大谷翔平が口座をチェックした時点で表面化する。発覚すれば大泥棒の犯罪者だ。現在は「窃盗」の事件像が既成事実化されていて、水原一平は日に日に極悪人にされて悪玉表象が刷り込まれている。マスコミとネットの誰もが水原一平を口汚く罵り、激越な憎悪を投げつけて全人格を否定している。その裏返しの効果として、大谷翔平の純粋無垢と「受難」が強調され、大谷翔平の神聖シンボルへの崇拝と敬畏が、恰も国民運動のように日本中で精励されている。疑念を差し挟む者は暴力的に排撃される。誰もが、FBIの説明を信じるように半強制されている。

第四に、重要な疑問点として注目され議論されるべきだと私は思うが、FBIは水原一平を不正送金の銀行詐欺だけで訴追している。なぜ窃盗罪ではなく銀行詐欺罪なのだろうか。現在まで、窃盗で追起訴したという情報は聞かない。そして、早くも司法取引という話が出ていて、何やら出来レースの雰囲気を醸し出している。最初に、日本時間 3/21 早朝の時点で、ド軍が水原一平を解雇したときのチーム大谷の弁護士の発表では、「大規模な窃盗の被害に遭っている」ので「当局に問題を引き渡している」という説明になっていた。「引き渡している」という表現が微妙だが、普通は、被害届を出すか刑事告訴するという意味だ。すなわち、事件は窃盗罪だったはずで、事件の被害者は大谷翔平だったはずだ。ところが、蓋を開けてみれば、被害者は銀行になっていて、捜査した警察が世間向けに報告した中間総括からは窃盗が除かれていた。これは奇妙で不審な点ではないか。

現在まで、大谷翔平が水原一平を窃盗で告訴したという事実は聞かない。5/9 に予定されている水原一平の罪状認否も、銀行詐欺の容疑についてである。捜査当局の発表の後、ニューヨークタイムズが記事を出し、3/20 夜にソウルのホテルの地下会議室で協議が行われ、水原一平が大谷翔平に「肩代わり」の問題解決を求め、大谷翔平が拒否したという話が浮上した。私は、これは当局がリークして書かせたストーリーであり、真実を隠蔽する情報工作だと考えている。会議の場に水原一平の妻が同席していたとあり、それは事実だろう。推理するなら、これは当日の何時間か前に(ミスで)公にした「肩代わり」説を否定して、「窃盗」説に切り換えるための全体ミーティングで、水原一平の解雇と訴追のシナリオを含む重大決定だったから、妻を同席させる必要があったのだろう。水原一平はその措置を受け入れ、大悪人となる過酷な運命を選択したものと思われる。大谷翔平を守るために。

水原一平が債務を告白して肩代わりを懇請し、大谷翔平が渋々容認していたというのが、この事件の真相なのではないか。胴元への借金を返すために二人はビッグマネーが必要で、だからド軍に移籍したり、NBやポルシェや dip と大口契約する進行になったと想像する。最後に、水原一平はミーティングの後すぐに帰国の途につき、空港で捜査官から聴取を受けたという話になっている。出来すぎと言うか、手回しがよすぎないか。それ以上に、水原一平の弁護士がマイケル・フリーマンという刑事専門の著名弁護士で、連邦検事を務めたキャリアがあり、司法取引を得意としている点である。報酬も高額だろう。どうしてこんな弁護士を(解雇されて一文無しになった極悪人の)水原一平が個人で雇えるのか。あり得ない。これが第五の疑問点だが、謎解きは簡単で、弁護士を用意したのはド軍とチーム大谷で、費用も工面してやっているのだろう。

つまり、何から何まで出来レースなのだ。FBIも猿芝居を演じる役者である。合衆国権力機構全体の総力を上げた壮絶な猿芝居だ。すべては大谷翔平を守るため。アメリカ資本主義のシンボルを守るため。


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