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感情のない職歴

就職先が決まり、平和だったニート生活がまもなく終わりを告げようとしている。

昨年末に退職し、転職活動を本格的にはじめて約5ヶ月。
年齢的・キャリア的にそう簡単にはいかないとは思っていたが、加えて長引くコロナ禍でより厳しい状況の中、書類審査すらほとんど通らず、正直、ちょっともうダメかもしれないと思っていた。
気ままなニート暮らしは思った以上に楽しく、手放したくない気持ちもあるが、貯金がかなり減ってきていることもあり、無事就職まで漕ぎつけたことに今は安堵している。

活動開始のタイミングで転職エージェントにも登録したので、履歴書用に写真を撮影したのだが、前職入社時の写真と比較して、自分の老け込み具合に驚いてしまった。
2年間でこんなになるほどしんどかったのか、と。

前の会社に勤めている間、自分の存在価値を感じられないことが本当につらかった。
仕事には真面目に取り組み責任を果たし、上司に相談しても仕事ぶりはまったく問題ないと言われ、それでも自分自身は何の手応えも得られない状況が、苦しかった。
自分なりに問題解決のためにどうすればよいのか必死に悩み考え、訴え続けた。
でも、そんなことは関係ない。
履歴書には、会社を2年で辞めたという事実が記されるだけだ。
書類に淡々と列挙される事実に、私の感情が入り込む余地はない。

面接では必ず「なぜ前職を辞めたんですか」と尋ねられる。
至極当然の質問だ。
訊かれると分かっているから、もちろんこちらもそれなりの回答を用意していく。
それはある一定の理解を得るために整えられ、負の部分はできるかぎり削ぎ落とされる。
私が抱えていたさまざまな重みを失った、面接用の退職理由。
表面的には納得した顔をした面接官に、「簡単に辞めるんじゃないか?」とさらに探りを入れられる。
そう思われても、仕方ないとは思う。
「仕事には真摯に真面目に取り組みましたし、自分が感じていた問題については上司に何度も相談もしましたが、毎日死にたいと思うほどしんどかったので辞めました」なんて、言うわけにはいかないから。

もう死んでしまいたいと泣きながら、それでも懸命に仕事をしていたあの頃。
もう少しがんばるべきなんじゃないか、がんばれば何かが見えてくるんじゃないかと戦っていたあの頃。
仕事を辞めたこと、転職を決めたことは、私にとって全然簡単なことなんかじゃなかった。
それでも私が2年で会社を辞めたという事実は、何の感情を持つこともなく、ただ機械的に職歴に刻まれ続けるのだ。
自分の抱える問題を解決できなかったこと、しんどさに耐えられなかったこともまた事実ではあるけれど。
どこか悲しく、やりきれなさを感じてしまう私がいる。

新しい職場でどれだけがんばれるかは正直、今の段階ではまったく分からない。
今度こそ転職は最後にしたいという思いは強いが、前の会社にもそう思って入社したので、あまりあてにはならない。

私の前途に、そしてこのつたない文章を最後まで読んでくださった方にも、どうか幸多からんことをと願うばかりである。

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