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いまさらながら年末調整について その2 裏技編

その2からして裏技編です。

いや、でも、筆者はれっきとした税理士・公認会計士として顕名で記事を書いていますので、下手なことは書けません。

が、所得税法の条文を読むと、ん?と思えることがあるので、ちょっと書いてみるものです。書いてみますが、そう考えているのは単に筆者の理解不足に起因している可能性も十分あります。

題して・・

これだと、年末調整をしなくて済む…?


所得税法上、年末調整をしなければならないのは、
「給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で」とあります。

つまり、扶養控除等申告書の提出を受けていることが前提となります。
扶養控除等申告書、業界的には通称〇扶(マルフ)と呼ばれています。(以下「マル扶」と表記します。)

これがなにかということについても、所得税法にキチンと規定があります。

(給与所得者の扶養控除等申告書)
第百九十四条 国内において給与等の支払を受ける居住者は、その給与等の支払者(…略…)から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、当該給与等の支払者を経由して、…略…所轄税務署長に提出しなければならない。

主語 :居住者が 
目的語:申告書を 
述語 :提出しなければならない 
となっています。

そして、「当該給与等の支払者を経由して、所轄税務署長に」となっています。

実際は、所轄税務署が管轄の居住者(給料等の支払いを受ける人)からその書類の提出を受けていたら、税務署が物理的にパンクします。そのため、税務署長に求められるまでは給与支払者(以下「会社等」とします)が保存するとされています。(所得税法施行規則76条の3)

上位規定の法律で「税務署に提出する」としているのに、その下位規定である施行規則で「とりあえず会社等がもっとけ」とするのは、法律の作りとしてアリなのかよとも思うのですが、そこは措いておいて、ともかくここで重要なのは、

あくまでマル扶の提出義務者は居住者(給料をもらう人、従業員)である、という点です。

ということは、会社等がすべきことは、
従業員に対し
「給料をもらう以上は、所得税法の規定でマル扶を提出しなければいけないことになっている」
と案内するまでのはずです。
(案内することが義務であるかどうかも論点になりそうですが)

マル扶を出す出さないは、会社等ではなく、従業員の問題です。

一方、会社等にとっては、マル扶を提出されていないと、毎回の給与支給時において、源泉徴収税額表の乙欄を用いて源泉税額を算出する必要があります。乙欄は、税額が高くなっていますので、従業員にとっては毎回の給与の手取りが減ります。

そして、「給与所得者の扶養控除等申告書を提出し」ていないので、会社等は、年末調整をしません。

ここで繰り返しますが、マル扶を出していないのは会社等ではなく従業員の問題です。

・・・ということは?

・・・本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。


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