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俳句幼稚園企画~忘れられないあの人

色々考えたけど忘れられない人が思いつかない。
そこまで濃厚な恋愛も人付き合いも無いもんだ。
忘れているだけかも知れん。
で、二十代半ばに通っていた居酒屋のお父さんとお母さんが唯一思い出される人かな。
前に記事で書いたことあるけど、改めて。

立ち退きを耐へた居酒屋温め酒

たちのきをたへたいざかやぬくめさけ

時は平成一桁年。
東京はバブル崩壊の爪痕が至るところに現れだした。
倒産、破産、リストラ。
それを免れても、ボーナス減、残業代カット、昇給なし。
そんな時は居酒屋で憂さ晴らし。
すくない小遣いで行ける店はたかが知れている。
「季節料理 ◯◯屋」
建物は古い二階建て。白い暖簾に磨りガラスで店内は見えない。
高いかも…
ガラガラガラ、
「はい、いらっしゃい。」
小さいお母さん。多分70オーバー。
カウンターに10席位に、あとは長机に丸いすで30席弱かな。
「いらっしゃい。」カウンター向こうでお父さん。お母さんより年上だと思う。
店内は混んでいて、四人席たまたま空いてた。
ビールから始まり、冬だったので牡蠣鍋と寄せ鍋の2種類手書きのメニューに。
牡蠣鍋頼んだ。一人前千円以下だったので二人前頼んで足りなければ追加だなと。
ステンレスの鍋に山盛りの牡蠣。
赤味噌溶かしながら食べる。
旨い!旨すぎる!
刺身や唐揚げ、その他お腹いっぱい食べた。
特に煮魚は絶妙の味付け。
金目の煮付け食べて、あまりの旨さにご飯ないの?って聞いたら自分達の食べるご飯出してくれた。
牡蠣鍋もうどんで締めたと思う。
日本酒の熱燗も進み良い酔いでお会計。
四人で一万円いかない。
安すぎる!

当然、常連になったけど早く行かないと入れない店。
ライバルは台東区役所と上野警察。
定時であがって店に来られるとうちらより早く店に入れる。
うちらが行く7時くらいはピークタイムだったので入れない事もしばしば。

お父さんとお母さんに聞いてみた。
夜「なんでこんなに安いの?」

母「身内だけでやってるのと、借金ないから。」

父「バブルの頃、売ってくれ売ってくれってしつこかったけど自分達が食べていければ良いから売らなかった。」

そう、その店の周りは虫食いの空地がチラホラ。地上げ屋ってのはホントに居たらしい。

でもね、お父さんが日比谷線で籠担いで築地に仕入れに行ってる。
そして、お客さんが安く食べられるような値段の物しか仕入れて来ないの。

勤務地変わって暫く行ってなかったけど三年ぶりに尋ねたら。
お父さんもお母さんも
「いらっしゃい、久しぶりだね。」
覚えててくれた。

そして、三年前に1/3ほど残していたボトルの「いいちご」が出てきた。

でも、やっぱり歳には勝てず。
その後、すぐに閉店してしまった。

いつもニコニコのお父さんとお母さん。

もう一度、あそこの牡蠣鍋が食べたいな。

https://note.com/ichigo94/n/nb711faeeb1a3

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