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福島県昭和村をめぐるエッセイ 「考えたのは意外なところで」

旅は大体思いがけないところで発見や気づきがあると思う。それでこそ旅なのだ!と誰か が言っていたような。そんな僕の発見や考えたことを五つの文章にしてみました。

都会をいつ離れたと実感するのだろうか。。

郡山から磐越⻄線に乗り込んだ。ローカルないわゆる単線で、二両の車両には既に座席を埋める人々が乗っていた。 「開く」のボタンがやけに誇張的な車両は乗っていて楽しい合図である。乗り降りする人が少ないのでボタンを押さないと開かないシステムなのだ。車内の冷房が効きやすいので快適である。都会の結露するほどの満員電車とは訳が違う。

ずっと、ずっと、 山の中と畑を縫うように走る電車は同じ顔ぶれを終点まで運んだ。会津若松で電車を降りると図らずとも今回旅を共にする方々と顔を合わせて集合できた。景色もそうであるが、こうした規模の小ささを実感することが都会を離れたと思うタイミングである。



不便って比較するから不便なのか

まだ若々しい緑が目立つ山道を走りながら、レンタカーに乗って昭和村を目指す。もちろん、会津若松から昭和村まではバスか車である、長旅だああ。冬に雪が降る地域は一⻫に芽吹く植物が織りなす独特の景色が楽しい。新緑色の植物がブワッと萌えている。

昭和村は冬には雪がずっと積もり、陸続きにして孤島と化すそんな村であるという。アクセスが著しく制限される、 そう聞くと「不便」だと思ってしまう。僕は思い立ったらいつだってコンビニに行けるし、 大抵は一日あればどんな物でも買えるし届く。そんな当たり前と比較してしまうから「不便」 と思うのだろうか。「不便」とは物事を比較することで生まれてくる言葉なのだろう。きっと村の方々は僕の思う不便さとは異なる感覚があるのだろうと考える。そう考えていると都会を離れてあらゆる事が不便に思えてしまっている自分がとても怖くなる。



避けられないことが多いのではないか

小学校も、中学校もずっと同じ顔ぶれ。気まずくなる出来事がひとつあればその思い出とずっと生きていくことになる。村に新しく引っ越せば、その噂は次第に広がる。近所のコミュニティのお茶会に顔を出さないといけない。村に住むとは、「避けられない」を必ず伴うのではないだろうか。

毎年クラス替えが実施される、学校を選ぶ事ができる、マンションの隣の部屋の人の顔を知らない、そんな生活を送っている人間にとってこの「避けられない」 は非常に厳しい特性なのではないだろうか。一度も家を出ずに1週間以上過ごす事ができる、出社しなくとも仕事ができる、選ぶことのできる選択肢がたくさんある(ありすぎる) 現在において、「避けられない」特性から何か考える事ができるのではないだろうか。


避けられないことを前向きに捉えてみる

僕はいつでも逃げる事ができる。何か言い訳に困れば、「電車の遅延です」、「別の急用が入ってしまって」などといくらでも探す事ができる。隣人トラブルに遭えば引っ越す事ができる。友人との付き合いも選べる。もしかしたらあらゆる事に逃げ場がある境遇において 「避けられない」事が前向きな価値を持つこともあると考えることは大切なのかもしれないと思う。

逃げ場があることを否定したい訳ではないし、むしろ積極的に捉えている。しかし、逃げ場がありすぎることは人間を誘惑し続けるのではないだろうか。ご近所さんや学校の友達といった「避けられない」コミュニティにおいては必ず配慮が伴う。配慮は大変なことかもしれない。しかし、人間が主体性を持って社会に参加をすることはずっと求められているし大切なことであると理解している。

僕は Zoom で授業を受けるより、現実の教室で授業を受ける方が断然良いと思っている。Zoom では画面はいつでも消せるしいつでもサボれる。ある種、「避けられない身体性」を持った現実の教室での授業は緊張感が担保される。 今、「避けられない」事に関する価値や意味を考えることは大切なのではないだろうか。



心を交わすための態度

昭和村には「とある宿」という民宿、ゲストハウス?がある。とある宿を営むまゆみさんの人と関わる態度に、人柄に、とっても興味を持った。 あえて自分の至らない面をさらけ出して他人のハードルを下げるスタンスに感動したのだ。自分のプライドや権威を守るのではなく、あえて隙を見せる、無防備になる、そんな勇気ある 態度が分け隔てないコミュニケーションを生み出していると僕は感じた。

お互いに立場が異なるときはどちらかが配慮や忖度する状況が起きる。もちろんそうした配慮が必要ではあるが、取り払いたい場面もあるはずだ。お互いに円滑にコミュニケーションをしたいときは、まず互いのバリアを取り払うべく自分がまず無防備になるべきである。その上で会話のリズムを合わせる、そういうものだと思う。


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