〇 クロスカントリー:GPSバリオと計器飛行
皆様、お疲れ様です。
パラグライダーが趣味のよねけんです。
これからクロスカントリーフライトについて自分の考えを書いていきます。
今回は「GPSバリオと計器飛行」です。今回は無料記事です。
前回から読む クロスカントリー:グライドパス 「どこまで到達するか」(有料記事)
題名がクロスカントリーから始まっている記事は自分と同じレベルのパラフライヤーを対象としており、マニアックでガチな内容です。
ご承知おきください。
今回のお題はバリオ(※1)です。ある程度の本数を飛んだB級生は手にする機器ですね。これまで複数回の記事で出てきたキーワードは「滑空比 (対地滑空比)」です。話題に上がった記事は下記の4本でしょうか。
<クロスカントリー専門>
・アクセルワーク :対地滑空比が重要 (有料記事)
・グライドコース :目標に真っすぐ飛ぶこと
・グライドパス :どこまで到達するか (有料記事)
<パラグライダーな日々>
・パラグライダーな日々 「ギアとしてのパラグライダー:機体」
よくもまぁ「滑空比、対地滑空比」を連呼したものだと思いますが、これらの記事で出てくるこの滑空比を測るにはGPSバリオ(※1)が必要になります。
パラグライダーの計器飛行?
自分が所属させてもらっている獅子吼高原パラグライダースクールだと、JHFで言うところのB級生で40~60本を飛んだあたりでバリオを購入することが多いです。僕の場合は36本目からGPSバリオを使って飛んでいたようです。(手書きのフライトログが残っている。) これぐらいの本数を飛ぶと、そろそろソアリングが出来るようになるため、高度の変化、上昇風帯を知るために必要になるからです。最初は高度と上昇率と上昇を知らせる電子音しか使わないですね。
実際にはGPSのデータが残っていて、どこをどんな経路で飛んだかなどGoogle Earthなどで3D(※2)で見ることができます。また、GPSのデータをフライト中に使うことで、予め設定した場所へのナビゲーションや、上空の風速風向を計算して表示したり、対地速度、これまでの記事で上げてきた対地滑空比も表示されます。もちろん東西南北の方角や、機種によってはGフォース(※3)の値も取れたりします。
GOTO設定を使えば目的地の方向、距離が示されます。クロスカントリーフライトでは目的地やコース取りを行うためタスク機能でデータを予め登録しておいてナビゲートをさせることもあります。もちろんレースでも使いますが使い方は割愛します。
自分が日頃からやっている使い方
日頃のフリーフライトでの使い方は主に二つです。GPSバリオのGOTO設定を使います。
1. GOTOでランディングをセットしフライトする
遠くまで飛びたいけどランディングに戻れるか・・・という場面はフライト本数が増え、スキルが上がると直面する場面です。そんな時、ランディングをGOTO設定の目的地に指定しておくと、絶えずランディングに到達するために必要な対地滑空比が表示されるようになります。
獅子吼だと南の高圧電線を越える位置まで来ると、遠くに来たなという気持ちになります。この付近は800m越えの山があり、大体その上を飛ぶので高度は800m以上です。この地点はランディングから2.5kmぐらい離れているので、高さと距離が相まって遠くに感じるのだと思います。ちなみにピタゴラスの定理で3次元における距離は2.62kmです。JHFでいうところのNPなりたての人にとっては「遠い・・・ランディングが小さい」と不安になります。でも、ランディングに到達するために必要な対地滑空比は3.13です。パラグライダーの対地滑空比が6と仮定すると、実は全く問題はなくて、そのまま戻っても高度417mでランディングに到達できます(※4)。
GOTOにランディングを設定しておくと、戻るのに必要な対地滑空比と、自分の現在の対地滑空比の双方がリアルタイムで表示されます。それを上回る範囲で飛べばランディングに戻れる確率が高くなります。補足の説明として図でも示します。
ランディングに限らずですが、パラグライダーが目的地に到達できるかどうかは、必要とされる対地滑空比を上回ってフライトできるかできまります。下回ると到達できないことが図からわかると思います。また、必要な対地滑空比を上回ることは、到達できるかだけでなく、どれだけ高さのマージンがあるかということも示しています。
2. 初見のエリアでランディングをセットする
まあ、これはどこにランディングがあるか分からないと困るので、必ず入れるようにしています。特に獅子吼はテイクオフの前にすぐランディングがあるので、遠くにランディングがある状況に不慣れです。パイロット証を取った直後に一人でソラトピアさんにお邪魔したことがありますが、飛び出したら眼下にランディングが沢山あって、どこがソラトピアのランディング? でっかい吹き流しがあったけど分かりましぇーん! となり、GPSバリオの矢印を信じて飛んだことがあります・・・。(ソラトピアさん、その節はお世話になりました。)
GPSバリオの見方
自分が使っているのは「SKYTRAXX2.0 PLUS」です。既に後継機がでているので新規では買えないようです(※5)。画面の中央にGZとGZTの表示があります。GZが自機の対地滑空比、GZTは目的地に必要な対地滑空比をリアルタイムで出してくれます。これを見ながら飛んでいます。また、右に目的地の方向を示す矢印がありますが、初見でランディングが見つからない場合はこの矢印を使って飛びます。
クロスカントリーフライトでの使い方
ではクロスカントリーフライトではどう使っているかですが、以前の記事にも書いた通り、グライド中の対地滑空比の確認や、アクセルワークで対地滑空比を調整したりしてます。
また、最初の瀬女高原へのクロスカントリーフライトでは、飛んだことのない空域を飛ぶため、タスク登録機能を使って中継ポイントを入れておいて、ルート登録をしていました。ただしシリンダーは500mとかの大きな単位にしています。どの方向に飛べばいいのかを知ることが目的なので、その空域に達したらアラームが鳴り次のエリアを指し示すので十分だからです。最初はシリンダーを200mとかにしていたんですが、高度が十分あるので次のエリアに行きたいのに表示が切り替わらないので使いづらかったので変更しています。
ただ、一度、瀬女高原に行ってしまうと地形が頭に入るので、2回目は使っていませんでした。
一つ問題になるのはクロスカントリーフライトで対地滑空比を目的地に行けるかどうかの判断に使うか・・・は微妙です。これまでさんざん「滑空比がぁ」とか「対地滑空比で到達できるか分かります!(キリッ)」とか言ってて矛盾してね?とか思われましたかね (ニヤリ)。
少し言い訳をすると、クロスカントリーフライトの場合、必要な対地滑空比を示してくれても意味がない場合があります。例えば、獅子吼高原から瀬女高原へのクロスカントリーフライトで、最初の難関である手取川第三ダム越えで考えましょう。上記のタスク設定は高さの低い雲龍山付近をセットしています。示した通りの対地滑空比で飛ぶと手前の山の斜面に突っ込むことになります・・・。また、山の尾根を通っている高圧電線も考慮しないといけません。少なくとも僕が持っているGPSバリオは障害物があるから無理だとまでは判断してくれません。でも、そういった処理もしてくれるGPSバリオは存在しますし、Android端末であれば、XCTrackというGPSバリオのフリーソフト(※6)があり、地図で行ける行けないを示してくれます。
じゃ、なぜそれを使わないのか? それは飛んでいる時の僕の処理能力を超えるからです(笑) やってみたら、そこまでの沢山のパラメーターを見ることが無理でした。また、到達できるかどうかは最初のフライトプランを考えるときに、どれだけ高度を獲得するかを決めるときに考えていますし、グライドパスを見ていれば、おおよそ分かるので到達可能かの情報として使わないことにしました。でも、最適な対地滑空比をキープするという視点では使ってはいるんですけどね。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回も長文になりました。
まだまだパラグライダーな日々は続きます。
【注記】
※1:GPSバリオ
バリオの正式名称はアルチバリオメーター。昇降計。気圧を計測して現在のパイロットが上昇しているか下降しているのかを音とグラフや数字で知らせてくれる計器。このバリオにGPS機能が追加された機器のこと。フライトの軌跡だけでなく、目標となる地点へのナビゲートや、自分がどれだけの対地速度、対地滑空比で飛んでいるかも示される優れもの。
※2:Google Earthなどで3D
フライト後にバリオ内で生成されるkml形式ファイルやigc形式ファイルを使うと3Dで軌跡を表示してくれます。また、実際の動きをトレースするサイトなどもあります。https://www.sportstracklive.com/ja
※3:Gフォース
パイロットに掛かったGのこと。「戦闘機のパイロットは旋回時にGが掛かり、5Gに達する・・・」とか言っているやつです。このGを計測するセンサを搭載しているバリオもあります。使い道はスパイラル降下の時にどれくらいのGを受けたかを見るのに使う場合が多いと思っています。最低3G以上がスパイラル認定されるとかされないとか。でも、経験上、3G未満だとハイバンクって感じになりますね。なお、スパイラルの練習はインストラクターさんの指導の下で行って下さい。
※4:高度417mでランディングに到達できます
実は獅子吼のランディング上の標高は約150mです。なので、高度417mであっても、対地高度は267mなので、普通は高度処理になっちゃいますね。複雑なので書かなかったのですが、GPSバリオの必要対地滑空比の計算では、海抜0mで計算はせず、高度差で計算しています。必要対地滑空比が表示されたらそのまま使っても大丈夫です。
※5:後継機がでているので新規では買えないようです
後継機はSKYTRAXX2.1です。液晶画面の大きさはそのままにBodyが小さくなっています。ただ、Gフォースのセンサがなくなっていたり、必要対地滑空比が表示されないように仕様が変更されています。Gフォースセンサはともかく、必要対地滑空比は残して欲しかった・・・
※6:XCTrackというGPSバリオのフリーソフト
Facebookなどにコミュニティーがあったりします。中古の安いAndroid端末をSimなしで使えばGPSバリオの端末に早変わり。GPSだけだと高度計測に誤差があるので、これだけだと実用的ではないです。GPSはXY方向の計測精度は高いが、Z方向は弱く、以前、自分がやった実験では数十mの誤差がでちゃいました。このため気圧計を搭載した端末か、USBかBluetoothで外部の気圧センサを追加する必要があると考えています。この辺は書き始めると終わらないのでこれぐらいにしておこうかと・・・
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