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【基礎教養部】「親ガチャ」に代わる表現を考えてみよう:『笑いの哲学』(木村覚)を読んで

「親ガチャ」というワードが瞬く間に世に広まり、炎上(?)したことは記憶に新しい。親ガチャとは、子どもがどのような親の元に生まれてくるか選べず、人生の境遇はまったく運次第、という考え方を指すインターネットスラングである。人間に対してSR(スーパーレア)N(ノーマル)のように価値判断を下してみると、普段やっているソシャゲの如く、ノーマルに生まれたものはどう逆立ちしてもスーパーレア産には勝てないのだ。そんな諦観を表現した言葉として「親ガチャ」はとにかく強烈だった。 流行った当時の

    • 否定レトリック分類を試みてみた『柔らかな頬』【J LAB 基礎教養部】

      私は桐野夏生の小説が好きなのだが、その最たる理由が彼女の文体である。特に『OUT』以降に見られる三人称での語り口は人物の心情や背景を鋭く読者の胸に印象付け、その点で私も大いに勉強させてもらっている。その中でも今回は同氏の文章によく見られる否定表現について、『柔らかな頬』の文章を引用したものを自分なりに分類しようと試みた。 本当は『柔らかな頬』の内容に関して記事を書けたら良かったのだが、あまり上手にまとめられる自信がないというか、本文の終盤からそのまま受け取れるメッセージ以上

      • 「甘えの構造」(土居健朗)【J LAB 基礎教養部】

        この本は終始「甘え」に関連して人間や社会を分析しようと試みている。ここで筆者が言う所の「甘え」とは、『甘えてんじゃねぇよ』みたく使われるような、意志薄弱な人に対する情けなさ、を指す概念ではない。それは「甘ったれ」であると筆者は言う。 なんと本書では「甘え」とは、人間の健康な精神生活に欠けてはならないもの、とされている。この本の初版が発行されたのは1971年、つまり半世紀前のことであるが、現代社会における用法とはかなり異なることが分かる。端的に言ってしまえばそれは、他者と同一

      【基礎教養部】「親ガチャ」に代わる表現を考えてみよう:『笑いの哲学』(木村覚)を読んで

      • 否定レトリック分類を試みてみた『柔らかな頬』【J LAB 基礎教養部】

      • 「甘えの構造」(土居健朗)【J LAB 基礎教養部】