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1億人からワンクリックを取り去る

日本人全員から1円ずつもらうと1億円、みたいな話があった気がする。塵も積もれば1億円、悪くない話だ。

ところで日本人全員からワンクリックを取り去ったらどうなるか。我々は大して意味のなさそうなことにクリックを強いられることがよくある。

「よろしいですか?」

こう聞かれても大抵は「よろしい」。できればいちいち「はい」とか「OK」とか言いたくない。私の決定を疑わないで欲しい。

もちろんよろしくない時はある。私はよく過ちをおかす。それはそうだ。うっかり違うボタンを押してしまったり、改行のつもりで送信してしまうことがある。

だからその時は「よろしくない」とこちらから言いたい。「やり直したい」「なかったことにしてくれ」「あれは違うんだ」、そういう弁解を口走って許しを乞いたい。だからそれまでは黙ってサッポロビール。

インターネットの世界ってのは、一度綴ってしまった黒歴史は「アンドゥ」できないってことは承知している。知っているからこそ、私はワンクリックに緊張する。このボタンは押したら「送信」なんだっけ?「送信してよろしいですか?」なんだっけ?

この小さな、しかし見過ごすことのできない緊張を、インターネットが口を開けて以来人類は強いられている。日本人全員がワンクリックで1緊張したら1億緊張。塵に埋もれる1億人。すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するんじゃなかったのか。


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