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音声チャットルームの隣人感

Twitterの音声チャットルーム「Spaces」を聞いた。文字のチャットのように「ルーム」があって、そこに「入る」ことができる。だけど少し違和感があった。なぜか?

Spaces で喋っている人たちは同じ「ルーム」とはいえ別々のところで喋っていて、それぞれの音響「空間」が異なっていた。別々の音響空間から聞こえてくるそれは、同じ部屋で喋っているのとは異なる体験だった。

特に口との距離、マイクの指向性が異なると、すごく近くのところでペチャペチャ喋っているのと、遠くからノイズが抑制されたいい声とが混じって頭が混乱した。異質な空間が自分のところに多数侵食してくるような感じがあった。

ポッドキャストもそうだけれど、音声メディアでマイクに気を使ったりノイズ対策するのは、それが単に音として良いものであるというだけでなく、そのノイズによってリスナーの空間を乱してしまわないようにという配慮があるのだと思う。仮に綺麗な音だったとしても、スピーカーの環境音が自身の環境とミスマッチだと、「隣人感」は得られないのだろう。

ではどうしたら同室感、隣人が喋っている感じが得られるのだろうかと考えると、双方の音響空間を揃えることが大切なのだと思った。とはいえ音響空間は各人で異なるから、最大公約数としての静音が選ばれるのだろう。

しかしこれが一歩踏み込んで、リスナーと同じ音響特性を持った空間でスピーカーが喋っているような音を提供できたとしたら、これまで以上にリアルな体験が得られるのではないだろうか。例えるなら今まで何もない空間にホログラムのように浮かび上がっていたスピーカーが、まるで目の前で語りかけているかのように自室の音響とよく馴染んだ声で語りかけてくるのではないか。

プロジェクションマッピングが物理空間をスキャンするように、音声メディアもリスナーの物理空間をスキャンする時代がくるのかもしれない。来たらいいなと思う。

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