「くものアンダーソン(1)」 はらまさかず

「アンダーソン! アンダーソン!」
くものアンダーソンは、朝っぱらから大声で呼ばれました。
呼んだのは、かりんさんです。
かりんさんは40さいぐらいの女の人です。アンダーソンと同じ部屋に暮らしています。
といって、かりんさんとアンダーソンは、そんなに親しいわけではありません。『アンダーソン』という名前も、かりんさんが勝手にそう呼んでいるだけです。
かりんさんは、ベッドのなかで上を向いたままです。
アンダーソンは、かりんさんのそばにいきました。
「アンダーソン、あんたに、おねがいがあるの。
あんたと仲がいいわけじゃないけど、ここであたし以外に、ちゃんとした生き物っていったら、あんたしかいないのよ、ごめんね。
あたしね、どうやらぎっくり腰をやっちゃったみたい。動けないのよ。で、スマホは机の上。助けも呼べない。訪ねてくる友達もいないしね。きっと、このまま死んじゃうわ。
それで、無理だとは思うけど、クモのあんたに頼んでるわけ。どれだけ、せっぱつまってるかわかるでしょ。ねえ、なんとかして、私を助けてくれない?」

さあ、どうしよう。
アンダーソンは、困ってしまいました。
助けてあげたいのはやまやまですが、なにせ自分は小さなクモ。人間を助けるなんてできるのでしょうか。
アンダーソンは途方にくれてしまいました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?