「くものアンダーソン(2)」 はらまさかず

くものアンダーソンは、かりんさんにやる気だけでも見せようと、ドアの方へ歩いていきました。そして、玄関のゆうびん受けのすきまから、外へ出たのです。
といっても、小さなくもなので、そんなに遠くまで助けを呼びにいけません。アンダーソンは、帰り道がわからなくならないように、少しずつお尻から糸を出して歩いていきました。
マンションの外は危険がいっぱい。アンダーソンにとっては、小石も岩のような大きさです。アンダーソンは、外を歩くのは苦手です。フーフーいいながら歩いていると、道のまんなかに、太った猫がだらしなく寝ていました。
声をかけられないように、アンダーソンがそっと、横を通り過ぎようとすると、
「おい!」
猫が太い声でいいました。
「はい」
「お前、どうしたんにゃ?」
「えっ」
「糸、出したままだぞ。こまったことでもあったか?」
猫はのっそり立ち上がりました。
「はい、実は、うちのかりんさんが、動けなくなっちゃって。マンションに閉じこめられているんです」
アンダーソンがそういうと、太った猫はニタッとわらい、
「お客さま、おまちしておりました」
といいました。

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