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異類純愛譚。【映画】「クイーン・コング」(1976/2001)

原題「Queen Kong(1976)」は、そのまんまの映画である。イタリア・イギリス映画である。えっ、パロってレベルじゃない、ってビックリする。

映画「クイーン・コング(2001)」は、吹き替え企画ありきである。豪華声優で愉しめる。とされる。もう好事家向けであるとしか云い訳できないレベルに仕上がっておる。

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2度目のリメイク版「キング・コング(2005)」を観て、えっ、そもそもの「キングコング(1939)」ってこんな映画だったのかっ、って驚いた憶えがある。美女を攫ってエンパイアステートビルに上って、複葉機と対決するッてだけのイメージだったけど、それはほんとに終わりの終わりで、物語は髑髏島へ渡って巨大猿を捕まえて戻ってくるッてお話なのである。しかも島では恐竜との対決(?)があったりして「ビーストウォーズ・超生命体トランスフォーマー」(1996)の元ネタってこれなんだ!? ってな感じでびっくりした。勝手な偏見とイメージってこわい。なお「キングコング」1回目のリメイクは「クイーン・コング」と同じ1976年の公開である。こっちは見てない。

こんなの男性差別よ!

映画「クイーン・コング」より

女流監督ルースの映画作りは厳しい。ガッツある男優が見つからないのである。どいつもこいつもへなちょこだ! そんな彼女は「愛」が足りないと、ロンドン市内で俳優探し、そして偶然見つけた男、レイを酔い潰して袋に詰めて船に担ぎ込み、いざアフリカ、ジャングル・ロケへ! なんやかんやあってロンドン市内を大猿が暴れる。

おやおやおや。ざっくりしたあらすじを抜き出すと酷い映画みたいだけれども、酷いは越えると「すごく酷い」になって「なんかすごい」に昇華される。錯覚でしょうか。いいえ、娯楽です。

映画「クイーン・コング」は雌雄逆転キングコングとの説明で事足りる。のだが、観るべき部分はとても多い。ギャグだのパロだのと思ってはいけない。冒頭で映画「キングコング」のポスターを盗むシーンからして、真っ向から元ネタへぶつかりにいった作品と見られる。

サメ映画なるジャンルの始祖にして嚆矢「ジョーズ」が1975年、翌年にこんな映画を作っちゃうところがまたええじゃないかである。'79年には「エイリアン」まで登場しちゃうんだから70年代も後半って実はすごいんじゃね? とか思う。

とは云え、吹き替えの強さがあってこその側面も否定できないので、評価は難しい。セリフのないシーンまで吹き替えセリフを入れてるのだからして、もうこれ別作品じゃん? みたいな。だから1976年の映画であり、2001年の映画でもある。

んー。でも、やっぱパロなんよなぁ、ギャグなんだよなぁ、銅鑼に「KONG GONG」って書いてあったりするんだから終始ジョーク映画なんだろなぁ、とか思うのだけれども、時代的にもテーマはウーマンリブ運動を背景にした作品で、70年代の空気を感じようじゃないか。

「ブラジャーつけさせないのならこのショーは中止だ!」

映画「クイーン・コング」より

ああでもね、クイーン・コングの着ぐるみだけは、ほんとにびっくりするほど安っぽいのよ。擁護できないレベルでひどいのよ。でも、そんなところもたまらなく好き。種を越えた愛を描いた映画である。


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