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爽快怪盗モノ。【映画】「ダブルバウンド」(2003)

「デッドプール&ウルヴァリン」の公開(24年7月)が楽しみです。

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映画「ダブルバウンド」は、俺ちゃんこと、デップーの中の人、ライアン・レイノルズ主演のカナダ映画である。

この映画、ジャケットとタイトルで多分に損をしている。なんだよ「ダブル」で「バウンド」って。なんだよそのキレーなおねーさんとレーザーって。どんな映画か、ちっとも分かんのである。おお、勿体ない! 今こそ、ぼくはこの作品をレコメンドしたい。

ちなみに、タイトルとジャケ絵で成功した事例は「バス男(2004)」だと思ってる。ブルーレイ化の際に原題通り「ナポレオン・ダイナマイト」に戻ったけれども「バス男」のインパクトは強い。ちっともバスな映画ではないのだけれども、素敵な青春映画なのでもっと話題になって欲しいと願っているが「刺さる人には刺さる」という意味深のようで中身のない評価に落ち着くのは致し方あるまい。なお、ここで云う「成功した事例」とは、作品のポテンシャルと評価のバランスである。相応である的なニュアンスと思って下さい。

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映画「ダブルバウンド」は、強盗モノである。ルパン三世という一大コンテンツがある我が国でこれが話題にならないのはなんと勿体ないことであるかっ。

原題は「Fool Proof」、日本語では「バカ避け」と身も蓋もない訳になる。これは「うっかり誤操作しても誤動作しないための仕組み(しかけ)」である。本編では「絶対完璧」と訳されている。

物語の主役は、思考実験「フールプルーフ」、それは強盗計画を練り、予習し、問題を把握する、ある種のサークル活動的なことをしている男女三人組である。

実在の宝石商に侵入して宝石を盗み、逃げ出せる時間は? 階段の上り下りで使う体力は? 警備員は何時頃に何分くらい不在? 警備システムはどこの何という型を使ってる?

計画は緻密で、階段の上り下りには踏み台を使って時間を計って……そこまでする「頭の体操」はあくまでも「仮定」であり、だから彼らに「実践」はない……のだか、ある日、その計画のファイルが紛失し、あろうことかその「計画」通りに宝石商へ強盗が入る。そして、傲岸不遜な男から「君らのことは知っている」と招待を受け……主人公サイドは窮地に陥りる。

そこで彼らはある仕事のオファーを受ける。もちろん、強盗の仕事である。もちろん、断われないのである。何故なら紛失した宝石商強盗計画ファイルは、彼の男の手にあるからだ! そして「お遊びの時間」は終わり(不承不承ながらも)「実践」の時が始まる……。

この「どうにもならない状況」への落とし方がいいのである。

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この映画、本邦未公開作らしく、なかなか低予算的な画だったりするのだけれども、悪役にはドラマ版のエルキュール・ポワロ役のあの人(デヴィッド・スーシェ)が配役されており、それがとても良くって、だから安っぽさはさほど感じない。「そうはならんやろ」みたいなツッコミがないこともない。その小道具、何…? みたいな。が、それを差し引いても爽快感が勝るので「Bohemian Like You」のイントロで始まるエンドクレジットが流れる中で「いいエンタメを観た」って気分になれる。はず。きっとそうだ。

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強盗モノなら同年にリメイクされた「ミニミニ大作戦(2003)」がある(こちらもタイトルで損をした作品と思ってる)。さすがに、お金を多分にかけた分だけ派手な画が楽しめる。ストーリーもばんばん進む。俳優も聞いたことある人ばかりだ。スパイダーマンも出てる。ナンデ? けれども、低予算映画からしか得られえないモノってのがあるっ思う。例えば、カナダの冷たい空気の中、顔を寄せ合って相談するシーンは、いまにも洟を垂らしそうで、頬っぺたと鼻を真っ赤にして、ああカナダの冬って厳しいんだなぁって思っちゃったりして、どうして撮影決行しようと思ったのかなぁメイクさん洟を拭いてあげてとか思わないでもないんだけれども、なんだかそういう画面がぼくの中でグッときた。きませんか。きますよ、きっと。観たら分かってもらえると信じてる。

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タイトルとジャケットに惑わされないで欲しいと思うのだけれども、こういう輸入映画特有のカルチャーも嫌いじゃないのである。
届いて欲しい人に届かないのは本末転倒であるが、そういうことも含めてなんだから愛おしく思っている。


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