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「防風林の向こうのお屋敷に、お化けが出るよ」 ミカちゃんちでスマブラした帰り道でユウリちゃんがそう呟いた。隆明(たかあき)は『おやつにしなさい』とお母さんから持たされた茹でトウキビを齧る手を止めた。 「それって、あれ?」トウキビの穂先でユウリちゃんちの畑の先に聳えるカラマツの植え込みを指す。植え込みよりもっと手前、たわわに実るトウキビ畑の途中から陽炎が昇り、黒い松葉もその奥に建つ赤いサイロめいた尖塔もしっとり揺れている。 「ばっかでー、ユウリ。そんなの居るわけないじゃん