見出し画像

リンダキューブがわからない

 みんな、メリークリスマス!

 最近、『リンダキューブ アゲイン』を遊びました。

 なんとなく『高機動幻想 ガンパレード・マーチ』を遊んでいた時に「へぇ、アルファってこういうタイトルもあるんだ……」と思っていたのもあったり、何度かオススメされていたのもあったり……とにかく、一度やってみたかったタイトルでした。

 そして結論から述べてしまえば、タイトル通り「リンダキューブがわからない」に尽きます。……いや、面白かったよ? だけど、こんなに「わからないゲーム」だと思わなかった。たしかに尖ってるゲームは大好きだけど、ここまで行くと「わからない」が真っ先に来る。

 なので、全体的に「わからないなりの感想」という感じの記事です。今日、クリスマスですから。ケーキでも食べながら適当に読んでください。




MERRY XMAS

 このゲーム、大前提の「手に入れるところ」からなんだか大変だった。まず、いろいろなサイトを見ても、そもそも売っていなかったりした。で、なんとか発見できたと思ったら中古で「4500円」という値段を提示されてひっくり返りそうになった。リンダキューブアゲイン……レアソフトか!?

 追々詳しい方に聞いたところ、「4500円は結構安い方」と言っていた。マジかよ。これでも割と安い時期にリンダキューブを買えたらしい。

 そして実物のソフトが届く。まず、説明書の段階でクセが強い。イカしたイラストになんだかよくわからない手書きのコメントが添えられていて、最初は「え、これマジで誰かが説明書に落書きしてる中古引いたのか……?」と困惑した。でもイラストはめちゃくちゃ良い。絵が最高。

絵がめちゃくちゃ良い

 実際に触り始める。
 第一印象、「悪趣味なポケモンだなぁ……」という感じ。

 だけど、徐々に徐々に「そもそもゲーム全体が変」なことに気がついてくる。なんかサンタの恰好した弟が出てくるし、一生クリスマスの音楽を流している街が出てきたりする。怖い。怖いよこのゲーム。

 このゲームを遊び始めた初日、私は「なんだかゲームが不気味すぎてちょっと体調が悪くなる」という今までに味わったことのない経験をした。そこで気づいた。「あぁ、1日中リンダキューブをやっていたらきっと理由もなく体調が悪くなるぞ」と。なんか身体に倦怠感がまとわりつく。

 だからもう、リンダキューブをやるのは1日に2~3時間くらいと決めた。すごい、かえって健康になっているんじゃないか? 「現代人に効く!リンダキューブ健康本」みたいな本でも出そうかな?

 そして動物も気持ち悪い。

 「ノミ」と言いながらショッカーの怪人みたいな化け物が出てくるし、「シマウマ」と言いながら女神転生の悪魔みたいな化け物が出てくるし、果てには「ゾウモツ」というもはや動物の枠を超越した何かが出てくる。

 リンダキューブの基本的な目標は「たくさんの動物を集めること」。だからもう、ゲームを進めるためには嫌でも気色の悪い動物をたくさん見なくてはいけない。ここも含めて「遊んでいると徐々に体調が悪くなる」を訴えたい。本当に少しずつSP(精神ポイント)が削られている気がする。

 しかも段々、「えっ、こんなの全然イルカじゃないですか」と感覚がマヒしてくるのだからおそろしい。目の前にいるのはイルカに似ているだけの四つん這いの化け物なのに、全然イルカの原型を保っている気がしてくる。

 しかもこれで「ゲーム部分はちゃんと面白い」のが厄介だと思う。「厄介」と言い切ってしまうのはなんだか気が引けるけど、もうここばっかりは「厄介」と言い切らせてくれないだろうか。

 ポケモンのように動物を収集し、モンハンのように集めた動物たちで装備を作る。出没する動物は地域や季節によって変わり、「ほどよい攻撃力で倒さないと捕獲できない」という駆け引きの要素もある。

 リンダキューブ……ゲームとして面白いんだよ!

 あんなに体調悪くなるのに、ゲームは面白い。なんだこれは。リンダキューブが……リンダキューブがわからない! タイトル回収!!

 こうやって「ポケモンみたいにモンスターを収集しながら、モンハンみたいに装備を作るゲームなんだぜ!」と骨子の部分だけ説明すると、ものすごい先見の明があるゲームな気がしてくる。普通にいま遊んでも楽しいのだから、ゲームの完成度は本当にすごいと思う。

 やはり、「狂気に宿るカッコ良さ」というものは確実に存在していると思う。それを、数年前に遊んだ『ドラッグオンドラグーン』というゲームで実感した。おかしさを面白がってるというより、行き過ぎた尖りっぷりが生み出す「カッコ良さ」には、どうやっても痺れるしかなくなってしまう。

 最初はあんなに「遊んでいるだけで体調が悪くなる」とは言っていたものの、Aシナリオの中盤辺りからこの「狂気のカッコ良さ」に魅了されていったような気がする。ナイフを持ったサンタクロース。立ち尽くすリンダ。ホラーテイストだけど、どこか乾いていて空虚な映像。カッコいい。

 リンダキューブは、ここの「ビジュアルの鮮烈さ」においては圧倒的なゲームだと思います。だって普通サンタの殺人鬼とか出ないじゃん……。

リンダかわいいよね

 そして同時に、この辺りから「こんなん絶対現代で移植無理じゃん」とも思い始める。アーカイブには残ってるけど、この名作がNintendo SwitchやらPS5やらで遊べないのは怠慢なんじゃないのかと。移植されていれば中古で4500円も払わなくて良かったんじゃないのかと。そんな考え、傲慢だった。

 移植も、リメイクも、リマスターも多分無理なんじゃないだろうか。単純に現代の倫理だと難しいよこんなの! ゼノギアスとかガンパレとかとは全く別の意味で「これ復活無理でしょ」タイトルだよ!!

 もし、これで次回のニンテンドーダイレクトあたりでリンダキューブのリマスターが登場したらアルファ・システムに向かって五体投地をしなければいけないんじゃないか。この記事を読んでいてリンダキューブを未プレイの方がいたら、急いで遊んだ方がいいと思う。

 いつソフトの劣化で遊べなくなるかわかったもんじゃない。
 いつアーカイブが終わるかわかったもんじゃない。
 いつこの世からリンダキューブが消えるかわかったもんじゃない!

 そして「狂気のカッコ良さ」と「絶対移植無理じゃん」を一手に担う存在、「ネク」。Aシナリオはひたすら彼が暴れる。暴れに暴れて、なんかいい感じに退場していく。一応、リンダキューブだと彼が一番好きなキャラ。

 ただ、何をもって「ネクが一番好き」と定義しているのか、自分でもよくわからない。イカれたカッコ良さなのか、なんだかんだ兄とリンダを慕っている人間臭さか、それとも矢尾一樹の名演か……。正直、自分もネクのどこが好きなのかよくわからない。だけど、ネクが一番好き。

 もう、自分でもよくわからない「一番好き」なのだ。まさに、リンダキューブがわからない。全く言語化できない「好き」がそこにある。おかしくなっているのは自分か!? それとも、このゲームか!?

このシーン好き

 愛し合う2人は いつも一緒!!
 やっぱ! それが 何より
 幸せだって 俺は思うゼ!

 は???????????????????

 まぁ……まぁヒュームがラスボスなのはなんとなくわかりましたよ。でも奥さんと合体してると思わないじゃない。これリアル合体じゃない。脅迫電話がかかってきて「あぁ、電話越しに奥さんが大変なことに……」と思っていたら、当の夫に大変なことにされていると思わないじゃない。

 このあと滅茶苦茶愛し合う2人はいつも一緒した。

 これ……戦う前のヒュームが完全にイカレちまってるのが本当に怖い。何が「狂気に宿るカッコ良さ」だ。前言撤回や前言撤回! リンダは……リンダはどういう気持ちなのよこれ……「親の情事を覗き見てしまった」以上の凄惨な現場があるのかよ!!

例のムービー出た時、流石にリンダと表情一致しました

あーあ、どうして こんなことになっちまったんだろう……

ヒューム・バーニング

 こっちのセリフじゃボケ!!

 少なくともAシナリオを遊んでいる時、自分は「鬱っつーんですかァ~ッ グロっつーんですかァ~ッ」とやや舐めた態度を取っていたと思う。だけど、ネクが暴れ始めてから、明らかにゲームの様子がおかしくなってくる。

 徐々にお話の起承転結やテーマ性もめちゃくちゃになってきて、なぜか遊んでいる側の自分が「おいこれ……このゲームどうすんだよ!!」と、先行きの見えなさに怯え始めていた。本当の意味で、「今どこに向かっているのかわからない」という暴走列車の乗客のような恐怖を感じてしまった。

 しかも、冒頭に提示された要素から「なるほど、この箱舟と動物の秘密に迫っていくゲームか」と勝手に想像していたゲーム内容が、全く出てこなかった。ひたすらサンタと夫婦愛の話が続いて、Aシナリオは終了。なんだこれ。リンダキューブは……リンダキューブはどこに向かってるんだ!!

あのラスボス戦からちょっと爽やかに終わるのすごくない?


HAPPY CHILD

 もしかして、サチコって結構かわいい?

 Aシナリオをクリアした時から、「多感な時期にリンダキューブを膝に受けてしまった者は、大変な人生を歩むのだろうな」と思っていた。

 それこそガンパレを遊んだ時も、「特定の時期に芝村舞を膝に受けてしまった人は、一生芝村舞の幻影を追いかけることになるんだろうな……」と思っていたけど、こっちも「特定の時期にリンダキューブを遊んだ人は、一生リンダとサチコの幻影を追いかけることになるんだろうな……」と思った。

 多分、リンダキューブにはそういう魔力が詰まっている。自分がこれくらいの感性でリンダキューブを遊んだのはある意味幸運かもしれないし、ある意味不幸かもしれない。でも俺もサチコは結構かわいいと思う。

あーっ!お客様!お客様!!

 ここから割と真剣に話したいのが、リンダキューブの「美術の良さ」について。このゲーム、キャラデザインからイラストの使い方、アニメムービーの入れ込み方まで……とにかく「絵作り」がすごくいい。

 特に、上に載せているメニュー画面とか。一般的なメニュー画面にケンとサチコのイラストがあるだけなのだけど……なんか良い。リンダキューブの味のある絵がドドンと中央に置かれていて、すごく見栄えが良い。

 こういうゲーム全体での「絵の活かし方」が、すごくキマッてるゲームだと思います。個人的に、『ペルソナ5』を思い出すんですよね。とにかく絵作りにこだわり、プレイヤーに与える「このゲームのビジュアル」をバシッと決めているこの感じ。「リンダキューブの世界は、こんな風に描かれているから」という世界の空気感が、すごく直感的に伝わってきます。

こういうイラストひとつとっても、「リンダキューブの世界」になってると思います。

 で、その「絵作り」と合わせて徐々に気がついていったことがあります。それが、「リンダキューブは別に鬱系ではない」ということ。

 たしかにえげつないシーンも多いし、プレイしていると徐々に体調が悪くなってくる。そこは真実。でも、別に「鬱なお話が描かれている」わけではないと思います。というか、そこが面白い部分だと感じました。

 明らかに鬱系っぽいビジュアルだし、明らかに暗いテイストのアニメが流れるのに、よ~~~く俯瞰して見てみると、別に「暗い話」ではない。みんなめちゃくちゃヒドイ目に遭ってるけど、別に悲惨なストーリーではない。なんなら、みんな基本ヒドイ目に遭ってるのに割とおちゃらけている。

 この「絵作りはダークなのに、お話はそんなに暗いわけでもない」という相反っぷりこそがリンダキューブの独特の味わいを醸し出しているのではないだろうか。そんなことある? いや、そういうゲームだと思う。

 Bシナリオで描かれるサチコとエモリ博士のストーリーも、それはそれはもうヒドイもんである。エグい、グロい、ヤバいの3点張り。でも……別にこれ、「鬱な話」じゃないと思います。「辛い話」にはなってない。

 なんならエモリ博士のところから逃げ出してきたサチコ1号2号がケンの家で暮らし始めるところとか、日常アニメみたいな空気すら出てる。独特すぎる。このいろいろな意味での「コントロールされていない感じ」が、リンダキューブの味わいなのだろうか。よし、サチコでどうだ!?

 というか、結局ここに戻ってくるんですけど……やっぱりこの「リンダキューブはどこに向かおうとしているんだ」という困惑を感じている時こそが、最も「自分はリンダキューブをやっている」実感を得られます。

 絵がヤバいのに、話はそんなに暗いわけじゃない。となると、人間は何を感じるのか? 何を感じればいいのか? もう、「リンダキューブはどこに向かおうとしているんだ」しかないでしょう!? 

基本あんなん(あんなん)なのに5%くらいあたたかさを込めてくるのなんなんでしょうね

 もうね、2回目になるとちょっと慣れてきてる自分がいるんだよね。

 ラスボス、ムキムキエモリ博士。もはや後半戦からはほぼエモリ博士の独壇場だったと言えるBシナリオのラスボスとしては、あまりにふさわしいのではないだろうか。やっぱりちょっと慣れてきてるんだよね。

 そして撃破し、Bシナリオも割と何事もなかったかのように爽やかなエンディングを迎える。爽やかに箱舟で飛び立てばなんでも解決できると思ってないか? リンダキューブは、どこに向かっているんだ!?


ASTRO ARK

 そしてスタートするCシナリオでは、ネクもサチコもみんないい感じに幸せになっている。納得いかん。ここに来て、まさかのハッピーワールドの始まりである。全く納得いかん。これ、夢オチですよね?

 もう、Cシナリオからは村ぐるみならぬゲームぐるみで「ほぇ……?リンダキューブは明るく楽しい動物あつめゲームですが……?」みたいな顔をしてくる。俺はメリクリ異聞帯とサチコ異聞帯のことを忘れてないけどな!?

 流石に、「凄惨な展開が2度も続いた後にやってきたお待ちかねのハッピーシナリオになぜか納得がいかない」という気持ちを味わったのは初めてかもしれない。なんだこの唯一無二のモヤモヤ感は。

 で、Cシナリオを遊べば世界の謎が解明されるのかというと……それがなんとも言えない。動物の謎が明かされたような、箱舟の謎がついに回収されたようなされてないような……。なんだこの唯一無二のモヤモヤ感は。

 そんなCシナリオの目標は、なんと「100匹くらいの動物を集める」こと。最大で120匹集められるらしい。いま、史上最大の動物集めが始まる。

 ということで、流石にちょっとズルをしました。多分リンダマニアの間では有名であろう「ツバメカッター金策」というヤツですね。まずは銀行で金を借りる。オズポートでネズミを大量に購入。ミナゴでネズミを解体。出てきたツバメカッターを全部売る。そうするとお金をたんまりGET。

 さらに、ここから「プテラノ(クモチェーン)金策」に移行。ツバメカッターで13万Gくらい溜めたら特定の手順を踏んでネブールへのバードラインを開通させる。ネブールに飛んで、動物商からプテラノを購入。

 このプテラノを解体することによって、ひとつ103375Gで売りさばける「クモチェーン」がゲットできる。ただ、プテラノ解体時に確定でクモチェーンが入手できるわけではないので、適当にやっていると赤字になる。

 だからクモチェーンを確定でゲットできるフラグやら手順やらを確立しなければいけないのだけれど……ここで困ったのが、「どの攻略サイトも微妙に手順が違う」ということ。なんなら、リンダキューブの場合は個人ブログの攻略すら参考にしなければならない。

 そこでようやく見つけた手順が、「肉屋に2回話しかける→腐肉が出るまでネズミを解体→プテラノ解体→再度腐肉が出るまでネズミを解体→プテラノ解体→腐肉出るまで解体→プテラノ解体→右下の階段を上ってフラグリセット」のワンセット。これで、クモチェーンを必ず3本入手できる。

 アタシなんで令和にフラグ探しなんかしてんの?????

 まぁ、とにかくこれを繰り返して……最初に300万Gくらいを入手しました。そのお金でプテラノを20匹購入し、「プテラノの長槍」を2本製作。圧倒的な攻撃力で序盤から大暴れです。土台のシステムがしっかりしているから、こういうゲーム的な楽しみ方もできちゃうという。

君たちは救世主じゃない!勇者でもなんでもない!
世界を救うことはできないのだ!
何をやっても絶対に隕石は止まらないし、8年後には必ずネオケニアは滅びて、ゲームは終わっちまうのだ。絶対にネオケニアは滅ぶ!あと8年だ!!

『リンダキューブ アゲイン』説明書

 この説明書に書かれているセリフを見た時、最初は「お、おう……」と思った。「まぁ、いわゆるアンチRPGというやつかな?」とか思っていたんだけど……もはや「アンチ」の枠で括ることすらできないのが『リンダキューブ』だと思う。ぶっ飛びすぎてて。

 やっぱりゲームは、ストーリーとシステムが常に同居している。だからどうしても、「ゲームっぽいストーリー展開」があると思う。あっちにおつかいに行けだとか、こっちでボスを倒せだとか……。なんだか、「ゲームのストーリーのお作法」みたいなものがある気がしないでもない。

 しかし、『リンダキューブ』はそのお作法をすべてぶっ壊していたような気がした。「おっ、ここからシリアスになるのかな?」と思ったら普通にギャグが始まり、「なんかほんわかしてるな……」と思ったら信じられないグロシーンが飛んできたりする。この「囚われなさ」こそリンダキューブ。

 この「君たちは救世主じゃない!勇者でもなんでもない!世界を救うことはできないのだ!」という説明書の漫画に描かれていたセリフ、Cシナリオでようやく理解に至った。たしかに、ここまでぶっ飛んでたらこれぐらいフカされても何の文句も返せない。初めから「世界を救えないRPG」として作られているゲームなんて、中々すごくない?

 あらゆるRPGを4像限分布図で区分した場合に、なんかもう明後日の端っこあたりに置かれるのが『リンダキューブ』なのではないだろうか。『UNDERTALE』とか『MOTHER』とかよりぶっ飛んだ場所に置かれるRPGなのではないだろうか。というか、このゲームを区分できるのだろうか。

 そしてハッキリ言えば、「支離滅裂」なゲームでもある。この作品を「支離滅裂」と言わないのなら、「支離滅裂」という言葉は何のために生まれてきたのか。だからもう、「こんなに支離滅裂なゲームやってられるか!」と思わなくもなかったりする。

 だけどその一方で、「ここまで悪趣味と荒唐無稽を突き詰めたら最高にカッコいいじゃん?」をずっとぶつけてくる。このふたつの狭間を永遠に反復横跳びしているゲームだから、もうこっちの認識が歪んでくる。

 最終的に、「あれ?リンダキューブってクソゲーじゃない?」「あれ?リンダキューブって最高のゲームじゃない?」が、脳内で何度もスイッチした。こんな気持ち、中々味わえない! で、このスイッチを繰り返した挙句の果てに辿り着いた解答こそが、「リンダキューブがわからない」である。

 つまり、「評価不能」ということ!
 もっと簡単に言えば「間違いなく楽しいけど、“出来が良い”か“出来が悪い”かで区分してはいけないゲームだと思う」ってことです。いや、でも俺はリンダキューブを理論的に分析できる人間の方がヤバいと思うよ。

何気に公式の120種捕獲マニュアルも買いました
いや、この絵を手元に置いておきたくってね……

 その上で、ひとつのゲームの中に「毒キノコを食べながら書いたんじゃないかと思うストーリー」と「やればやるほど単純に出来が良くてハマるゲーム」が同居している。ここが一番のミソだと思う。

 たとえばめちゃくちゃなストーリーにつまらないゲームがついていたら、特になんとも思わない。逆に、やたらと出来がいいシステムに、しっかり面白いストーリーがついていても、特になんとも思わない。だけどリンダキューブは、「ストーリー(狂気)」と「ゲーム(理性)」が悪魔合体している。

 ある意味「なんでこんなストーリーを作ったのに、ゲームはこんなにしっかりしてるのよ」とも言えるし、「こんなにしっかりしたゲームなのに、なんでストーリーがこんなことになってるのよ」とも言える。まぁ実際の開発事情は色々あると思うので、あくまで「そういう面白さ」ってことで。

 ゲームは、あらゆる創作物の中でも特に「理性」が求められるものだと思う。理知的でなければシステムは作れず、理論がなければ仕組みは生まれない。なぜなら、ルールで縛るのがゲームだから。プレイヤーを縛るための「縄」としてのルールは、やっぱりロジックがなければ作れない。

 ……で、その根底にある「ルール」の上に、いろいろな希望やら性欲やら情念やら狂気やらを載せていく。『リンダキューブ』もそういうタイプのゲームかもしれない。すごくシンプルだけど、これを「ひとつの作品の中に詰め込む」のがヤバい! ゲームってそういうものかもしれないけど、これをシンプルにやりきってしまうとリンダキューブが出てくる!!

 だからもう、プレイした感想もすごくシンプルです。
 「こんなゲームやったことねえ!!」に尽きます。

 こんなのやったことない。だから判定不能だし、この未知の面白さは理屈で説明しようがない。なにが面白い? なにがすごい? いや、よくわからない。イコール、「リンダキューブはよくわからない」ということです。

 記事内で何度も何度も書いていた「リンダキューブはどこに向かっているんだ」という素直な感想、あれこそが私のすべてです。「この舟はどこに向かっているんだ」という未知への困惑と期待を抱えたまま、宇宙まで飛んで行ってしまった。そういうゲームです。でも、そこがいい。

 この「よくわからなさ」を味わえるのが、あらゆる創作物のいいところだと思います。基本的に「未知」をぶつけられる。その困惑を抱えたまま、なんとか自分の中で噛みくだく。この工程が面白い。この困惑を引き出してくれるなら、間違いなくいい作品だと思います。

 リンダキューブ、面白かったです。
 わからないから、面白いと思います。

 では、最後もシンプルに終わります。
 リンダキューブが…………………わからない!!

 みなさま、年の瀬はヒュームとアンのように仲睦まじくよいお年を!!