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令和にドラッグオンドラグーンを遊んだ


現実じゃやっちゃダメで、ゲームの中だといくらでも出来るものってな~んだ?

答えは「人殺し」です。


ドラッグオンドラグーンはそんな現実では出来ない事をいくらでも出来るテレビゲームの可能性を追求した最高の人殺しゲーム!

こんな誰がどう見ても面白くなさそうなもたもた無双ゲームの様相を呈しているドラッグオンドラグーンですが、恐ろしい事に段々とこの地上戦が楽しくなってきます。

ファストトラベルが存在しないニーアレプリカントにややキレていたわがまま令和キッズの私ですら、徐々にこのドラッグオンドラグーンの何とも言えないもたもた無双にハマっていたのですから、ここの謎の面白さは間違いありません。


剣を振るモーションがしょぼすぎて全然強そうに見えない主人公、終わっているカメラアングル、パリィもクソもない平凡なバトルシステム………どこをどう切り取っても面白そうに聞こえません。

しかしこれが面白く感じてくるんです。戦場に流れ続ける不協和音のBGMをバックにただ淡々と敵を斬って殺す。もっさりしているからこその異様な作業感の中ただ無心で兵士を斬り殺す。飛び散る血飛沫、転がる兵士の死体、地面にこびりついた血の池、次の兵士が来る。黙って斬り殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す………


こんな事をしている内に段々とハイになってきます。
斬殺、虐殺、撲殺、圧殺、抹殺、滅殺、瞬殺、鏖殺。

向かってくる兵士をただ全員殺す。ありとあらゆる手を尽くして殺す。


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こんな殺しまくりゲームの最高にして最悪な主人公の名前はカイム。
幼い頃に両親である国王を目の前でブラックドラゴンに惨殺されてからというものの、敵国の帝国に対する憎悪と復讐心で帝国軍を殺すことに生き甲斐を覚えている。

まあざっくり言うと趣味兼ライフワーク「人殺し」の男だ。

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必要以上に殺すもんだからもう味方からも総ツッコミを受けるぐらい殺すのが大好きな男の子。


プレイヤーに操作されるカイムは帝国軍を殺すことに生き甲斐を覚えている、カイムを操作するプレイヤーは敵を殺すのが楽しいしカイムの経験値が溜まって更に敵を素早く殺せることが楽しい。まさにwin-win。

というかもう、少しでも「最初はクソだった地上戦が何かちょっと楽しい。もっとこの殺戮の狂気の中で生きたい」と思ってしまった時点でカイムはプレイヤーであり、プレイヤーはカイムなのだ。

究極の主人公憑依型ゲームがここにある。
「人殺し」を通じてプレイヤーとゲーム内の主人公が繋がり、一心同体となって敵を殺す。これほど楽しい事がありましょうか?



しかしまあ、流石にここまで殺してばっかりだとプレイヤーも勢い余ってPS2まで破壊しかねないので投入される癒しが我らがドラッグオンドラグーン最大のヒロインこと「アンヘル」だ。

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主人公のカイムと契約を交わし、契約の代償として声が奪われてしまったカイムに代わり気持ちを代弁したり、カイムへの理解力の高さでフォローに回ったり、憎悪に駆られすぎて無謀にもドラゴンに突撃していくカイムを身を挺してかばったり、いちいちムーブがヒロインすぎる。

そもそもの仲間が裏山でマスターベーションをしていた男・口を開けば罵詈雑言が無限に飛び出すCV宮村優子の妖精・純粋に頭がおかしくなっている出会い頭に首を絞めてくる女・母からの偏愛により自分だけが愛されて虐待を受ける妹を守らなかった兄・ハゲとロクな奴が一人も居ないパーティ構成なので、消去法でアンヘルが常識人枠になってくる。


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そして後年のニーアレプリカントの白の書やニーアオートマタのポッド042にも受け継がれていく恒例の「人外萌えキャラ」の初代でもある。

しかしそんな屈強なレッドドラゴンの見た目に反したキュートさから生まれるギャップだけでなくカッコよさも同時に兼ね備えているのがアンヘル。



アンヘル単体のカッコよさというよりもカイムとアンヘルの両方の声優を担当しているピーター氏の演技の圧倒的なカッコよさに依る所が大きいとは思うのだが、プレイ前に「ピーターって誰?えっ?あのテレビでたまに見かけるオカマの人?」と思っていた自分の首を鉄塊で刎ねるぐらいにはとにかくピーター氏の演技が最高。
もう好きすぎて「答えろ!契約か?死か!?」を見出しにしちゃってます。


そんなアンヘルとの絆を深め合いながらドラッグオンドラグーンは進む。

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もうゲーム中盤でカイムの事が大体分かってしまっているアンヘル。


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ブラックドラゴンに両親を惨殺された過去を知り復讐にノリノリで乗ってくれるアンヘル。


目の前でフリアエを殺された怒りで我を失いそうになるカイムを制止する献身的ヒロインアンヘル。

このゲームには一応フリアエというヒロインが居るのだが、終盤に突入する頃にはアンヘルはドラッグオンドラグーンヒロインレースにおいてフリアエを4周遅れぐらいに追い込んでいる。


もう終盤にはカイムとアンヘルの関係性はドエライ事になっている。

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いやここの「カイムはドラゴンの首をそっとさすり、勇気付けた」とか狂う!あんなに人を殺してばっかりだったカイムがふと見せる優しさ!!


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そしてアンヘルもカイムの存在に不思議な心地よさを覚える。
いや流石に「逆にお前ここまで気付いてなかったの!?」とアンヘルの純真っぷりに驚いてしまうが、もはや私からは何も言うまい。

末永くお幸せに…





a fallen Angel never smiles
A fresh shrine will be built by the hands of the lord on top of numerous sacrifices.

そしてここからはヨコオ作品恒例のエンディング分岐が始まる。

全プレイヤーが最初に見ることになるAエンドだが、改めて全エンドをクリアしてから各エンドを見返してみると何だかんだで私はこのエンドが一番好きかもしれない。

これまで修羅と化していたカイムが消えゆくアンヘルに初めて見せる涙。
そしてアンヘルは初めてカイムにその名を告げて消滅していく。

初めて名乗る名。初めて流す涙。
最初で最後の、愛。

Aエンド以外のエンディングは悲しみや感動よりも「いくら何でも理不尽だろ!!!」が先行してしまうので、ある意味Aエンドが一番真っ当な感動のエンディングなのかもしれない。いやそうじゃないかもしれない。




flowers for the Broken spirit
A woman turned into a stake will dominate the world on the blazing plate.


Aエンドの次のBエンドから急にこれがやってくるのだからもうドラッグオンドラグーンには敵わない。タイタニックからちょっとチャンネルを替えたらAir/まごころを、君にの最大の山場が飛び込んでくるような仕打ちである。


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まあ実はこのエンディング見たの一昨日の話なんですけど、一昨日の午前にこのエンディングを見せつけられて午後からバイトに行って帰ってきたら謎の頭痛に襲われ続けたのでもしかしたら僕はもう呪われているのかもしれません。


しかし映像と雰囲気が美しいからどこか妙な清々しさがあるのがこのエンディングの不思議な所です。やたら強いフリアエとの激闘を制した結果大量のフリアエが帝都に溢れかえりそれを見つめるカイムを映して幕切れ。良い話要素なんか1個もないのにどこか狂気の果ての美麗さを見出してしまう不思議な終わり方がニーアシリーズにも多かったのですが、DODのBエンドもそれと同じ匂いを感じます。

ちなみにこの大量のフリアエはシスプリから思いついたらしいです。

ある日突然、あなたに12人もの妹ができたらどうしますか?
それも……とびっきりギョロ目で
とびっきり女性器から触手が生えていて
とびっきり尽きていて
とびっきりの杭となりし女。
しかも、そのうえ……
彼女達はみんなみんな、とびっきり!
お兄ちゃんのコトが大好きなんです……


ふざけやがって!!!!!!!!!!



an eternal farewell with your Companion
When a pitiful child challenges the hands of the lord, the door would close.


Cエンドは他のエンディングの野郎共がいちいち強烈すぎるせいで若干霞んでいるような気がしなくもないが、唯一カイムとアンヘルが敵対するエンディングでもある。


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「赤子は水浴びを喜ぶ。……いつまでもさせてやりたい。しかし、季節は変わるのだ」というアンヘルのセリフからも分かるように、敵対展開でありながらもカイムとアンヘルの間にある友情とも愛情とも言える強固な関係は残されたままなのが味わい深さを増している。

そして卵を破壊し、一瞬寂しそうな顔でアンヘルの方に目をやり再び殺人鬼の顔に戻り駆け出していくカイムの一連のシーンはドラッグオンドラグーンのカッコ良さが詰まっている。




the Daffy child's wildest dreams
A weakling in an eternal solitude will eventually halt a jumping minute hand.


そして現れる大量の赤さん。
もうドラッグオンドラグーンがエヴァフォロワーである事を隠す気が微塵もなくなってきている。


アリオーシュはいつも通り頭がおかしい!
レオナールはセエレに抱き着かれて勃起!!
ハゲは発狂!!!

もう正直赤さんどうこうよりも味方の方がこの世の終わりみたいになっているのだが、個人個人が平常運転で巨大赤さんに対処した結果全部めちゃくちゃになっているのでそもそも元から全員この世の終わりみたいなパーティーだったのかもしれない。これこそがドラッグオンドラグーンの平常運転。

パーティー全員頭がおかしい連中だったので頭がおかしい状況になっても特に変わらずみんな頭がおかしいままだったという貴重な結果が得られたパターンである。




the End of dragon sphere
The world and us who were lost……

お待たせしました。みんな大好き新宿エンド。
流石にこれはあまりにも有名すぎるので知っていた。インターネットやってて「ずっとファンタジーだったのに新宿で巨大な像と音ゲーで戦うゲームがあるらしい」という話を全く聞いたことがない奴は恐らくモグリであろう伝説のエンディング。

これを発売当時にやらされたら2ちゃんねるのスレで暴れまわっていたかもしれないが、もう今となっては知らない者は少ないであろう伝説と化しているし、ここから全世界を席巻するニーアシリーズへとバトンが繋がっていくのだから何だか少し感慨深い。



いやでも音ゲー始まっちゃったら実際どうすりゃいいのよ!?
俺が最初に書いた「人を殺すことでプレイヤーとカイムが一体となる究極の主人公憑依型ゲームで~」とか音ゲー始まったら全部明後日の方向に飛んで行っちゃったでしょうが!!

何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!

この記事もこのゲームも、どう収集を付けたらいいのだ!?!?



そして最後まで抗い続けたプレイヤーを待つのは戦闘機に撃ち落され東京タワーに突き刺さったアンヘルの死体。

「答えろ!契約か?死か!?」に始まり全てを殺し尽くし全てに抗い尽くし最後に見せられるアンヘルの死骸にはどこか美しさがある。

というかもう全部カッコいい。最悪にして最高。


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だってこのゲームに最後まで付き合ったら見せられる絵面がこれですよ?この世で一番カッコ良くないですか?むしろこれをカッコいいと思う人間がこんなゲームに最後まで付き合ってしまうのか?

いやまあとにかく全部が全部最高にカッコいい。セリフも世界観もバッドエンドも全てが妖刀のような切れ味で襲い掛かってくるのだからこれに痺れない訳がない。

でももう一回やりたいかって言われたらもう二度とやりたくない。
それがドラッグオンドラグーン。

ドラッグオンドラグーンを作ってくださったスタッフの皆さん、こんな記事を見て下さった皆さん。

本当に、本当に、ありがとうございました!









ドラッグオンドラグーンは終わった。「本当に、本当に、ありがとうございました」のセリフと共にタイトル画面に戻される。

私がこのゲームから学んだことは全てを殺し尽くす。そして全てに最後まで抗い続ける。新宿での激闘を終えた私は、真っ先にPS2の電源を落とした…