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ぴかぴかの華金

四月一週目の華金の街は、ぴかぴかのリクルートスーツを着た新卒のひよこ達でいっぱいだ。

知り合ったばかりの同僚と夜の都会を闊歩して飲み屋を探す事が新鮮でワクワクしているのだろう。
大学通りにある大衆居酒屋ぐらいしか入ったことが無い子も居るんじゃなかろうか。
懐かしい、私もそんな頃があったなあ。

尤も私の同期は全員男性で、同期飲み会のような物も一度しか無く、あっという間にほとんど辞めてしまい、残った一人とサシ飲みに行くのも気が引けるし(彼女持ち)、その一人も辞めてしまったのだけど…。

そんなぴかぴかの夜の街を横目に入社n年目NOTぴかぴかの私は一人で颯爽と街を歩き、手頃で美味しいお気に入りのパスタ屋で夕飯を食べ、百貨店を物色していた。

私は店員さんに話し掛けられるのがめちゃんこ苦手だ。
理由は明白、会話スイッチが入ってない時に話し掛けられると脳が対応出来なくて挙動不審になってしまうから。
スイッチさえ入ればある程度会話出来るんだけど…ほ、本当なんだからね…
("ある程度"としか言えない辺りコミュ障感が拭えない)

商品を見つつ店員さんに話し掛けられないように絶妙な距離を取り、こちらを見ていたら流れるように目を逸らし、ス…と移動。結局何も買わずに店を出る。
買い物に行っても8割こうなる。
おかげで話し掛けて来ないお店でばかり買い物することになる。ユニクロ、お前しか勝たん。

GWに学生時代の友達と遊ぶ約束があるので、ひやかし半分で色んな靴を試着していた。販売員さんを巧みに(諸説)スルーしながら。
すると上階の閉館アナウンスが鳴った。
え、もうそんな時間?とスマホを取り出そうとモタついてると、ベテランっぽい販売員さんに「この階はまだですよ」と話し掛けられ、流れるように「何かお探しですか~」と聞かれる。

くっ…逃げられない!

対人スイッチが入らないままぎこちなく応対した。
探している靴のタイプと、自分の普段の服装と好みの形状の靴を伝える。

すると一発でしっかり私好みの、しかもかなり履きやすいものをおすすめしてくれた。(幅広甲高でなかなか合う靴を見付けにくい)
「他にも色々試着してみます~」と言って似たような形の靴を複数試着したが、どれもこれも幅がきつくて履けなかった。
あ~やっぱりあれじゃん。さっきの販売員さんに声をかけた。
その後色違いで少し悩んだ私にきっぱりと理由を告げながら「こっちがいいです」と勧めてくれて、なるほど、と納得してお買い上げ。

これがベテラン接客業の成せる技なのか~…と感動しつつ売り場を後にした。
なんだか足取りが軽い。ほくほくした気分。
久々に百貨店で、それなりのお値段の、見た目も機能面も気に入る物を買うことが思いのほか嬉しかったらしい。
普段はドの付くインドアなのだけど、今週末はこの靴を履いてお出かけしたいな~、なんて。

ぴかぴかの靴を持って閉店寸前の百貨店を出る。
丁度飲み会終わりのぴかぴか新卒たちがあちらこちらでこのまま帰る?二件目行く?とふわふわしていた。

ようこそ、ぴかぴか達。
大人は大変だけど案外楽しいぞ。
中堅社員に片足突っ込んでる私でも、ぴかぴかの靴を買って浮足立ってるぞ。

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