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新型コロナウイルスワクチンにマイクロチップは入っているか?-ワクチンに関する噂を検証する。その1。

新型コロナウイルスワクチンに関しては、さまざまなおどろおどろしい噂が流れています。
曰く、マイクロチップが入っていて5Gに接続されて操られる、ワクチン接種痕に金属製のものが貼りつく、スパイクたんぱく質により不妊になる、mRNAによってDNAが書き換えられる、フリー〇ーソン(あるいはイル〇ナティ)による人類支配である等、たくさんあります。

コロナワクチンデマ

今回は、その噂のうち「マイクロチップが入っている」「5G接続される」に関し、自分のための検証として調べた範囲を記します。
なお、改変・意味が変わるような部分的な引用をしないかぎり、この記事をご自由に引用・URL引用していただいて結構ですが、この記事で検証に利用している先様とこの記事には一切の関係はございませんので、この記事に関しての問い合わせ等を先様には行わないでください。

ワクチンの中にマイクロチップは入っているか?

まずは、マイクロチップについておさらいです。
マイクロチップは、例えばSUICAやPASMO等の、交通系カードに内蔵されています。改札機にかざしてピッと読み取って、料金を引き落とします。
実はこの「ピッと読み取る」のが重要で、カード内部に電池がないのにも関わらず動作するのは、カードリーダーからの電波を受信して電源としているのです。
電波を受信するためにはアンテナが必要で、交通系カードは実はこのようになっています。

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情報の記録について|三和ニューテック株式会社」から画像引用。

また読み取り距離は、規格によりますが2mm~70cmまでであり、規格化されていない70cm以上数メートルの距離の読み取りができるものもありますが、そのためにはRFタグと組み合わせる、アンテナや電源を追加するなどの必要があります。

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非接触ICカード|ジーエルソリューションズ株式会社」から画像引用。

生体に対して使われるマイクロチップもあります。
犬や猫、家畜などに対して、あるいは人間に対しても希望する人が実験的に、マイクロチップを埋め込んでいます。こうしたマイクロチップは生体に悪影響を及ぼさないよう、また内部の電子回路を錆びさせないよう、ガラスのカプセルに入っています
このカプセルは、専用のショットガンで打ち込まれます。

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犬と猫のマイクロチップ・完全ガイド~仕組みやメリットから副作用リスクまで」より画像引用。

つまり、マイクロチップが動作するためには、ICチップ本体に加えて、その本体よりだいぶ大きなアンテナが必要であり、その情報にアクセスするためには専用リーダーが必要となり、その範囲は70cm以内です。
加えて、生体に適用するには、生体を害しない素材で、中の電子回路回路を保護する必要があります。

新型コロナウイルスワクチンに対して使われる注射針は、一例をあげると、以下のようになります。
・針の外径: 0.50mm
・針の内径: 0.25mm
・針の長さ: 25mm
新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種に必要な皮下注射針・筋肉注射針の提供について|ミサワ医科工業株式会社」より引用。

どう考えても、この注射針に、マイクロチップは通りません。そもそもこのようなチップがシリンジに入っていたら、誰もがすぐにわかります。
なので、新型コロナウイルスワクチンにマイクロチップが入っているというのは、まったくのでまかせということになります。

ではナノチップなら注射針を通るのか?

マイクロチップが注射針を通らないことを示すと、ではナノチップなら通るのではないかと反論が出てくるかもしれません。

ナノチップ

ナノチップとは、実は、上で述べたようなマイクロチップの小型版を指す言葉ではありません。コンピューターやスマートフォンの心臓部にはCPUという装置が必ず入っています。コンピュータの心臓部分です。パソコンを購入するとき、IntelのCore-i 7だとかCeleronだとか聞いたことがあるかもしれません、それはCPUの商品名です。
このCPUは、見た目は数センチ四方の、剣山をさかさまにしたような四角い物体ですが、中心部のダイと呼ばれる部分に、ものすごいたくさんの数の半導体が入っています。入っている数が多ければ多いほど性能が良くなります。
数センチ四方にたくさん詰め込むためには、中の半導体を極小にする必要があります。この極小の半導体ひとつぶひとつぶが、ナノチップです(現時点で10~5ナノであり、数か月前に2ナノ半導体をアメリカIBM社が発表しました。)
決して、ナノサイズの非接触ICチップではなく、注射できるようなものでもありません(数センチ四方の板の上に植え込まれているもので、上にファンがついていることもある)。

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情報機器と情報社会のしくみ素材集」より画像引用。

ワクチンを忌避する人が、人々を支配するためにワクチンの中に入れられていると唱える「ナノチップ」とは、日立製作所の超小型非接触ICチップ「ミューチップ」を指していると思われます。
このような画像を、ワクチンを忌避する人がよく挙げているのを見ます。

スマートダスト

元ネタは、それぞれこちらこちらです。以下にスクリーンショットも挙げます。

元

チケットや有価証券の番号を内部に書き込んで用紙に漉き込むなどの利用を考えて開発されたミューチップは、心臓部は下図のように0.05ミリメートル四方、それに周辺装置を合わせて、上記のITメディアの記事にあるように、0.3㎜×0.3㎜のチップとなりました。
デマ画像では0.15㎜となっているのは、0.25㎜の注射針の内径を通ることが可能である、と言いたいのかもしませんが、実際は製品発表当初0.4㎜×0.4㎜、その後改良により0.3㎜×0.3㎜(ただしアンテナなし)、アンテナを内蔵した製品が再び0.4㎜×0.4㎜、そして先に申し上げた通り、生体に適用するとすればガラス等のカプセルに入れる必要がありますから、どう考えても注射針を通らないのです。

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世界最小クラスのICチップ『ミューチップ』発明の背景」より引用。

しかしこの商品データは2003年のもので、それから18年も経った今ではもっと小型の、アンテナやカプセル含めても0.25㎜より小さい非接触ICチップが製造されているのではないか、とおっしゃるかもしれません。

残念ながら、ミューチップはもう作られていません
毎月1億個、代金10億円を継続的に発注してくれる顧客でもいない限り、製造できなかったのです。
もう存在しないもの、ワクチンに混入とか絶対に無理です。

もし体内に埋め込まれたとして、どう操るのか?

疑い深い人たちは「いやそれでもビ〇・ゲイツあたりが大量の資金をかければ注射針を通るようなICチップだって作れるに違いない」というかもしれません。
ではそういうチップを体に埋め込んだとして、どのように人を操るのでしょうか?5Gに接続されるのでしょうか、それとも人工衛星からの電波でしょうか?

5G基地局にしろ人工衛星にしろ、交信するためには電力が必要です。
非接触ICチップは、電池を内蔵していないので、中のデータを読み書きするには読み取り装置が近くになければなりません。上に書いたとおり、読み取り装置との交信が発生した際の電力を読み書きに利用し、読み取り装置との通信可能距離は長くて70cmです。
5Gの基地局は500mごとぐらいに設置されていますが、500mではいくらなんでも「ピッ」と読み込みはしてくれません(それに非接触ICチップ読み取り装置でもありません)。
スマートフォンは基地局との間で常に交信を行っていますが、あのサイズのバッテリーがついていても、数時間も使えば、バッテリーが消耗するのは誰もが知ってることです。
注射針の中を通るような小さな小さなチップにバッテリーを内蔵するというのはいくらなんでも無理です。

またICチップは、情報を保持しているだけの状態のときは電気を使いませんが、陰謀論を唱える人のように「情報を収集して送信する」「情報を書き換える」「操る」などの何か積極的なことをするとしたら、やはり電気を使います(人体に対してそれができるか、またできるとしてもセンサーなど何かの機能がある場合さらにサイズが大きくなることはこの際置いておいて。)
GPSのように位置情報を数秒に1度発信するだけでも、電力は必要です。
鍵や財布につけるスマートタグタイプのものでさえ、普通のリチウムイオン電池交換、ないし内蔵電池1年ぐらいの使い捨てです。そして電池の大きさはもちろん0.25㎜以下ではありません。
そう考えると、マイクロチップをコロナワクチンに混ぜて人体に打ち込むのも無理、そんな極小マイクロチップを人体に埋め込んむ手段があったとしてそれで何らかの操作をすることも無理、ということになります。

おそらく、ICチップが何らか人体に作用を及ぼすという考えは、シリコンチップの微弱な電流で損傷した皮膚の組織を再生させるという2017年のこの実験によるものだと思われます。
コイン大のシリコンチップから情報を皮膚細胞に注入、治療に必要な細胞へ変換させることに成功したというこの実験は、画期的なものですが、実際にその場でシリコンチップを患部に当てて電気を流す必要があります。
人体に埋め込まれたチップを遠隔で操作するには、まだ人類の英知は足りません。

さらに言えば、5G通信が利用するミリ波は、体内に届かせるには非常に不向きな波長です。
水分に非常に弱く、多くが熱になってしまいます(その仕組みを利用したのが電子レンジです。食品中の水分を温めて食品を加熱しています。)また人体の表面で反射してしまったりもします。
なので、閉鎖された環境で非常に強いミリ波を人体に当てれば、体内を凝固させてしまうことはできるかもしれませんが、体内に埋め込まれた機器と通信するのには向かないということです。

まとめ

ワクチンの液体中にマイクロチップを入れることは大きさ的に無理で、昔存在した「ミューチップ」でも針の内径より大きくなるので、何らかのマイクロチップを注射で体内に入れることは不可能です。
また何らかの方法で体内にチップを入れたとしても、5G電波等の手段で通信するだけの電源が確保することは不可能です。
とりわけ5Gは、体内の機器と通信するのに不向きな波長でもあります。
よって、ワクチンにマイクロチップが入っている、5Gに接続されるというのは、明らかにあり得ないということになります。