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歌ってみたのミックスって何してるの?

こんにちは。Yomogiです。

今回、数少ないTwitterのフォロワーさんから「歌ってみたのミックスに関しての記事書いてほしい!」とリクエストを頂きました。

正直、そんな擦られすぎて摩擦係数ゼロの記事を今書くか…?とも思ったんですが(ごめんなさい)
そもそもnote始めたての自分がネタを提供してもらったんだからありがたく書け!って話でした。

なので今回は、歌ってみたのミックス師さんって何してるの?というのを書いていこうと思います。

読むと分かるもの

  • ミックス師さんって何しているの?

  • プラグインって何使ってやってるの?

  • お願いする時の注意点ってあるの?

何してるかって話なので、やり方とかの話はあんまり触れてません!
それはまた別の記事にて。
※よく使われるプラグインはご紹介してます。

それでは行ってみましょう!

歌ってみたのミックスって何やってるの?

大体こんな事やってますというリストがこちら。

  • 音程・タイミング・音量補正

  • ノイズ除去

  • イコライザーやコンプレッサー等の音質調整

  • リバーブやディレイ等の空間系処理

  • ボーカルエフェクトの追加

  • ハモリ生成

あんまりこういう事いうと誰かに怒られるかもですが
「オケと歌をなじませるだけ」は、個人的にミックスとは言わないです。

わかりやすいように一個ずつ分解していきます。

音程・タイミング・音量補正

頂いたデータのピッチ(音程)を修正して正しい音程に補正したり、発声のタイミングの修正を行ったりします。
また、言葉の音量の調整を行ったりします。音割れは直せません。
ボカロの調整したことがある方いらっしゃいましたら、あのイメージに非常に近いです。

ミックスで一番時間がかかる箇所です。
ですのでミックス師さんもここで大きく金額を取ってる方が多いです。

ちなみに音痴でも全部直せます。場合によってはケロっちゃう事を許容して貰えれば。
※最近めいちゃんさんがやってらっしゃいましたね

ピッチやタイミングがあってる人は100%いないです。断言します。
なので恥ずかしがらずに送ってください。
もしくはご自身で修正したデータをミックス師さんにお送りください。

ミックスする人は、頂いた音源を聞いて嘲笑うとか下手くそが!とか言いませんし思いません。
どうすれば素晴らしい作品になるのか考えて実行が基本スタンスです。
言う人はミックス向いてないし、そういう事言ってる人には頼まないほうがいいです。

定番のプラグイン

サードパーティ製プラグインを使うこともあれば、DAWに付属の補正プラグインを利用することもあります。
結構方法は色々あるのですが、有名なものをご紹介します。

Celemony - Melodyne

補正ソフトとしては一番高いけど一番やれることが多いし、めちゃくちゃ便利。(StudioEdition以降の話)
Studio oneにもデフォルトでついているので(EditorEdition)今は利用ユーザーが一番多いんじゃないですかね…。
マルチトラックでいじれる上に和音補正も可能。
単一トラックであればEditorEditionでだけで良いかもです。

Antares - Auto-Tune

昔はこれしか無い…って感じでした。
今でも質の高いケロケロボイスを自力で作る場合はこれ一択。

Waves - Tune

元値が高いですが、ずっとセールやってるので大体¥5,000で買えます。
やれることが昔から変わってない印象ですが、調整系はミックス師さんにお願いすると高いのでこれを購入して自分で修正する…というのは全然有りだと思います。

Cubase(DAW)付属 - VariAudio 3 ※Artist/Proのみ

確か11からだったと思うのですがめっちゃ使いやすくなりました。
正直Melodyneいらないんじゃないか…くらいの質になってます。
なのでCubaase所持ユーザーは不足のVariAudio 3で良いかと思います。

Logic Pro X(DAW)付属 - Flex Pitch

自分はLogicユーザーなので本当はオススメしたいですが、直感的ではないのであまりオススメはしません。
慣れれば細かいことも結構できますが、その学習コストを割くのであればお金で解決したほうが良いかと思います…。

プラグインAppendix

補正ツールは複数使うのをオススメします。
Melodyneでは取ってくれないけど、Tuneなら取ってくる…といった事があるのでMelodyneで調整して更にTuneに入れてとかやると少しだけ質上げることが可能です。

ノイズ除去

ここで行うのは以下となります。

  • リバーブ除去(あのお風呂とかカラオケで歌った時の響く感じ)

  • ハムノイズ除去(ブーンみたいな機械音)

  • クリップ・ノイズ除去(大きい音出しすぎた時のブチブチ、バチバチ)

  • 歯擦音除去(所謂ディエッサー)

などなど、ここで上げたのはよくあるノイズですが、もっといっぱい色々とあります。
こういったノイズを除去する作業です。

基本的にここではお金はいただかないです。
RX持ってる場合はテンプレ設定に突っ込むだけで大体終わらせてくれます。
終わらない場合は使い方間違ってる可能性あるので注意です。

ここでお金をいただく場合はがあるとすれば…
「どうしてもこのテイクで行きたいけど結構難解なノイズが…」
ってときに、めっちゃ細かくノイズ除去の設定を行った場合はご相談の上お金をいただくことがあります。
それでもノイズ取り切れないことありますけどね…。
(よくあるのがサイレン音・犬の声・子供の声等の環境音とかカラオケの店内放送とか)

ちなみに結構高額ですがライブ配信者の方も余裕があったら購入しておくと、配信中にリアルタイム除去プラグインとして利用できるのでオススメです。

ただ、めっちゃPCの力を求めてきますのでお気をつけください…。

定番のプラグイン

ノイズ除去に関しても、色んなプラグインがありますが大体iZotpeかWavesの二択かなーと個人的には思います。

iZotope - RX

下準備としてノイズ除去をした音声データを基本的に使いますが、相当難しいノイズ以外はRXにドラッグアンドドロップで終わります。

ほんとすごい。
設定すれば勝手にやってくれるし、ちゃんと設定すれば音質も悪くないし
どの結果がお好み?つって3つくらい聞いてきてくれるし、それを複合的に使うこともできる。音声への影響も少ない。
ネックは高いこと…。

もし購入考えていらっしゃったら、夏とか黒金とかを狙うのがオススメです。

Waves - Clarity VX Pro

6バンドEQで帯域ごとにリダクションの設定ができるので
決まった帯域のノイズやクリッピング、ディエッサーを行うことができるEQ。
Wavesにしては高いですが、性能も良いです。
ただ、結構音質へアプローチしてくるので玄人向けだと思います。
若干クセがあって、もしバウンスの際にあんまり働いてくれなかったらオフラインバウンスじゃなくてリアルタイムバウンスで実行してみてください。

イコライザーやコンプレッサー等の音質調整

今回EQとコンプ、その他ExciterとかDelayとかプリアンプとかを一緒くたにしているのは

話し始めると終わらないからです

ここはミックス師さんによって個性が一番出る所で、各々の売りが明確に出る所だと思います。

EQで音質の調整をし、コンプレッサーでダイナミクスを調整して…といったことをここでしていますので一番音が変わる部分になります。
高音を上げて音抜けを良くして、コンプで各帯域の圧縮をいじって…みたいな。
なので、素材を一番調理する所であることを覚えておいてください。

正直、音楽に精通していないと逆に指示も出せない所かなと思います。
「こもってる」「キンキンする」「浮いてる」とかあると思いますが、それを伝えた所で治ってこないことが多いかもしれません。
それがその人の味の可能性もあるので…。

なので、何度お願いしても自分の思ったとおりの音にならないときは
素直にミックス師さんに別の人にお願いする旨を伝えたほうがお金も時間も安い
とお伝えしておきます。

ただ「下手くそで…」とかそういう事はもちろん伝えてはいけません。
何度も言いますが、それがその人の味の可能性があるので「ミックスが合わなかった」とお伝えしてあげてください。
下手って言われると心傷つくんで…。

Yomogiオススメのプラグインについて

ここではYomogiが愛用しているプラグインをいくつか記載しておきます。

Neve 1073 Preamp & EQ

魔法のプラグイン。
再現度すごいですし、音も綺羅びやかになります。
良い意味でとってもニーヴです。
※人によっては好みじゃないので、一回目の提出の際に声が…って言われたら素直に外してます

LA-2A Compressor & Limiter

定番過ぎて言うこと無いですが、アタックが遅いのでボーカル向き。
グレーは結構早いので、ロック系が合います。

Pultec Passive EQ

こちらも定番過ぎて言うことないです。
刺しただけで音のキャラが代わり、真空管のサチュレーション感が付加されて美味しいところを持ち上げてくれます。
選択した周波数を同時にブースト/カットでき、絶妙な相互間を生み出してくれる最強のPEQ…

SSL Native Vocalstrip 2

2022年に登場して一世を風靡した、とりあえず刺しとけばなんとかなるSSLのチャンネルストリップ。
下地作りに最高で、ハイパス・非対称ノッチ・エアバンドの3bandEQなど兼ねており、直感的にわかりやすいUIもしてます。
初心者さんにもオススメです。

リバーブやディレイ等の空間系処理

お風呂!カラオケ!って感じを付与するリバーブとやまびこ効果を付与するディレイ。

ここも結構人によってこだわりがあったりしますし、音楽的表現にもよく使われます。

流行りのインターネットオーバードーズ。
最近ミックスしたのですが、ディレイとリバーブをつかって色々な表現をしてます。
※EQでの声質変更とかディレイ、エコーなど随所に散らばっており勉強になるので耳コピオススメです

すこーしだけボーカルにかけることで、オケとの馴染みがよくなり
ディレイをかけると奥行き感が出る。
どんな楽曲にも大体使われているし、上下左右奥手前の広がりをもたせる重要な役割を持ってます

が…使い方を間違えると風呂場になるのでご注意を。

定番のプラグイン

リバーブも人によって使っているものは千差万別ですが、今回は昔からの定番系からいくつかご紹介します。

Fabfilter - Pro-R

言わずもがな、大定番プラグインです。
機能とUI/UXがとても良く、リバーブの仕組みがいまいち良く分からないという初心者の方でも気づいたら慣れていたくらいUXが素晴らしい。直感的に操作できるのでオススメです。

Waves – Renaissance Reverb

通称「Rverb」ってみなさんが言ってるリバーブがこれです。
当たり前ですが、昔は業界標準だったので質は高いです。
Wavesなのでコスパもよく複数種類のリバーブが利用できるのでオススメ。
パラメーターも細かく設定できて追い込めばちゃんと狙った音が出せます。

iZotope - Neoverb

iZotopeの得意なAI処理が入ったリバーブ。
読み込んだトラックを元に自動でパラメータを設定してくれます。
AI精度は…高くないというか、そもそもリバーブってかなり個人の主観がはいるので無理だろうなーとは思います。ロックにそんな強いリバーブいらんだろ…とか。
ですが、雑に読み込んで適当にパラメータ上げ下げするとそれなりになる品質なので今後に期待。

Waves - H-Delay

大定番で正直これがあれば大抵事足りる…というくらい優秀なディレイプラグイン。
コスパも抜群で音質も綺麗。デジタルとアナログの良いところ取りを謳っており、まさにその通りな所。
Yomogiも未だメインはこちら。もう10年位は使ってます。

Fabfilter - Timeless3

こちらも定番のテープディレイ。
Fabfilterのリバーブと同じことを言いますが、とにかくUI/UXが優秀。気づいたら使いこなせているタイプ。
音はヴィンテージタイプのテープディレイなので、サチュレーション感が程よく出せたりゴリっと行くことも可能。
デジタルですがアナログ感もあるので、テープディレイはこれ一本で困らない気がします。

ボーカルエフェクト

ボーカルエフェクトとは、無線機みたいな声とかテクノ系の声の加工とかちょっと早送りの声とかなんかそういうのです。
聞いてもらうが易し。この動画みたいなこと。

たまに曲によっては必要となる程度で、大体がEQやディレイ・リバーブで対応できます。たまにボコーダとかオクターバとか上記の動画のようなボーカルエフェクト用のプラグインを使ったりして対応します。
よくあるミックス依頼の曲で説明すると…

ヴィラン / シャーチャ&ヘノラク

どうせなら自分でMIXしたやつから…。
薄くサチュレーションかける為にテープサチュつかったりEQで調整したり…。

SEKAI NO OWARI / Habit

こちらとかはやりようによってはオクターバとかボコーダ、ピッチシフターでできますがボーカルエフェクター使ったほうが簡単にできます。

めちゃ対応難しいし、表現するには色々な音作り知ってないと駄目ですが
こういう曲の歌ってみたMIXはめちゃくちゃ喜ばれます。

定番のプラグイン

iZotope - Vinyl

見た目まんまの事ができます。
スクラッチやローファイ感をマシマシにしたりとその用途に関しては完璧にできる上に、曲制作でもかなり出番が多いプラグイン。
無料なので持っておいて損はないと思います。

Waves - OVox Vocal ReSynthesis

定番のボーカルエフェクト。
シンセとかに慣れてないと操作もワケワカメでかなり学習コストがかかりますが、とりあえずプリセットで遊んでみて学ぶのが良いと思います。

iZotope - VocalSynth 2

こちらもOVoxと同じ用な感じです。
違いは音質になると思いますが、どっちも一長一短なのですがUIはこちらのほうが幾分マシかなと思います。

ハモリ生成

最後ですね。
ハモリ生成。これは基本的に人力が多いです。
前述の音程・タイミング修正で利用するツールを使って複製後にハモリにピッチを移動していきます。

一応ハモリを自動で作ってくれるツールとかあるんですが、使ってる人あんまり居ない気がする…。
というのも、3度5度ハモリだけっていうのが今の世の中少ないので
対応しきれないんです…。
和音がめっちゃ流行ってるので、そうなってくると自分で作らないと行けないんですよね…

こういうのです。

ただ、ハモリ部分だけなので正直そんなに難しくはないですし時間も掛からないです。

※ハモリツールの紹介は有りません

お願いするときの注意点・気をつけてほしい事・よくある事

そんなに多くはないです。

  • 歌の頭出しはできる限りしていただけると助かります

    • ピンポイントで切れてるデータだとタイミングが微妙にずれてたりして初期設定が非常に面倒臭いです…。いや、いいんですが…。

  • コンプやEQを通す時は事前に教えてもらいたいです

    • 正直通さないデータの方がやりやすいです

    • ちなみに音源データ見ると通っているかどうか分かるので…。

  • 音割れやノイズは可能な限り無しでお願いします

    • 前述のノイズ除去の所で少し話しましたが、無理なものは無理なのでそこはご理解ください

  • マイクに近づきすぎたり、マイクGainが高すぎる状態でヘッドホンやスピーカーからオケ聞いて歌録すると、うすーくオケも入ってきてコンプで上げたときに大変なことになるのでお気をつけください

  • ご自身で録音したデータは一度内容の確認をお願いいたします。

    • できればイヤホンやヘッドホンで大きめの音で確認してもらったほうが、音割れやノイズ等に気づきやすいので。スピーカーだと住宅環境によっては小さいので気づきにくい

  • 過度な期待はしないでください

    • ミックスは魔法じゃないので、歌がうまくなったりはしません。

たまにご自身のEQ・コンプ機材を使って録音してくる方がいらっしゃいますが、あれは同じスタジオでテイクができる環境があるからこそ機材を使って良いものができます。

歌う方とミックスする方で違う思想・別々でEQやコンプを使うと破綻しますのでお間違いないように。

また、ハードのコンプは使い方を間違うと、ダイナミクスのない盛り上がりに書けた状態になるので、すごくミックスするときに苦労します。
※事前にミックス師さんとお話し合いの元使うのであれば問題ないかと思います!

こんなもんです!

大体の問題はコミュニケーションミスなことが大半だと個人的には思っているので、どういった方向性でミックスしてほしいのかとか
細かく方向性確認するとか細かい連携をして、仲良く良いものを作って行きましょう!

おわりに

今回は「歌ってみたのミックスって何やってるの?」という話をさせていただきました。

少しはミックスってこういう事してるんだーって言うのがわかって頂けましたら幸いです。
擦られまくってるネタですが、こうやって書いてみると自分の為にもなりますね…。
そしてミックスするのって大変ですしお金かかるなーって気持ちで書いてました。

でも色々な人と作品を一緒に作り上げていくクリエイティブはとてもおもしろいです。
これからも沢山のミックス師が生まれて、歌い手が生まれていく廃れない文化だと思います。
日本だからこその文化だなー。

Yomogiも恐れながらミックスを請け負っております。
実績公開・非公開どちらもお受けしておりますので、よろしければTwitterやDiscordなどでご一報ください。


それでは。

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