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新型コロナウイルスに関して考えたことまとめ

はじめに

手をきちんと洗っていますか? 不要不急の外出をしていませんか? 密閉・密集・密接の「3密」を避けていますか?

新型コロナウイルス感染症が日本を含め、世界中で猛威を振るっています。4月23日現在、日本国内での感染者数は累計約1万2000人(患者数は約1万人、退院者数は約2400人)、死者数は累計287人と、依然として増加傾向にあります。世界では、感染者数が累計263万人、死者数は18万人以上となっています。

安倍晋三首相(政府新型コロナウイルス感染者対策本部長)は4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条に基づいて、7都府県に「緊急事態宣言」を発令しました。さらに16日には、対象区域を全都道府県に拡大しました。現時点では、宣言の期間は5月6日までとされています。

専門家は、これ以上の感染拡大、そして医療崩壊を防ぐために、国民の「行動変容」が必要だと訴えています。通常より「8割程度」人と人との接触を減らすことができれば、感染拡大を抑制することが可能だと考えられています。

手を洗う、手指消毒をする、「3密」を避ける、咳エチケットを徹底する――。国民一人ひとりが強い意識を持って感染拡大抑制に一丸となって取り組む必要があります。特に、感染しても無症状や軽症が多いとされ活動が活発な若者は、無自覚のままウイルスを拡散している可能性があります。「既に感染している」との認識を持って、家に居るようにしましょう。

記事上部に、note運営が新型コロナウイルス感染症関連の全記事に掲載している注意書きがあります。「公的機関による一次情報をまず確認しろ」と言っています。その通りです。

本記事では、信頼できる出典・引用先をなるべく掲載するようにしていますが、本記事も含め、新型コロナウイルス感染症に関連する情報に触れるときは必ず、厚生労働省首相官邸内閣官房お住まいの地方自治体が公表している関連情報等を確認することを、僕の方からも強くお勧めます。

また、全国の医療従事者、感染症対策に携わる専門家や保健所関係者、地方自治体関係者、その他、感染拡大抑制のために働いている全ての人、国民の生活維持のために働いている全ての人などに対して、改めて、感謝と敬意を表します。

■ カバー画像=クラスター対策班Twitterアカウントアイコンより

「クラスター対策班」とは

厚生労働省内に設置された感染症の専門家からなる組織。感染拡大を早期に終息させるためには、疫学的に「クラスター」と呼ばれる感染者集団が次のクラスターを生み出すことを防止することが極めて重要であるとの観点から、
1)患者クラスター発生の発見
2)感染源・感染経路の探索
3)感染拡大防止対策の実施
をクラスターが発生した自治体と連携しながら中心となって行う。

前置きが長くなりましたが、この記事では、新型コロナウイルス感染症に関して考えたことをまとめています。芸大生としての視点で考えたこともあります。長いですので、目次から気になった項目に飛ぶのが良いかもしれません!

「新型コロナウイルス感染症」どう略す?

本記事ではこれまで統一して「新型コロナウイルス感染症」と呼称していますが、みなさんは普段「コロナ」などと略して呼んでいると思います。

世界保健機関(WHO)や法律の条文、政府機関、メディアではどのように呼称され、略されているのか気になったので調べてみました。

1)世界保健機関(WHO)

WHOは2月11日、「新型コロナウイルス感染症」の正式名称を「COVID-19(coronavirus disease 2019)」とすると発表しました。「COVID-19」は、感染症の名称で、この疾患の原因ウイルス「新型コロナウイルス」の正式名称は「SARS-CoV-2」と命名されています。
これが、世界共通の正式名称ということになります。

ちなみに、厚労省HPに掲載されている「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」と、ぬまがさワタリさんのnote「イラスト図解! これが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)だ」では、コロナウイルスについて分かりやすく解説されているので、是非ご参照ください。

これまでに、人に感染する「コロナウイルス」は、7種類見つかっており、その中の一つが、昨年12月以降に問題となっている、いわゆる「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」です。 このうち、4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占め、多くは軽症です。残りの2種類のウイルスは、2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」です。

厚労省HPより

2)法律の条文

(これ以降、本記事では「新型コロナ」と略します)

新型コロナはその名の通り「新型」ですので、過去に蔓延した歴史はありません。ということは、感染症の予防などについて定めている「感染症法」にもその記述はありません。

しかし、3月16日に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、「特措法」とする)が改正され、2009年の新型インフルエンザの流行を受けて2012年に成立した特措法の規定が、新型コロナにも適用されることとなりました。

では特措法において、新型コロナはどのように呼称されているのでしょうか。以下の通り条文の一部を抜粋しました。

附 則 抄
(中略)
(新型コロナウイルス感染症に関する特例)
第一条の二 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。第三項において同じ。)については、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律……

その他の関連する政令等でも同様の記述がみられます。

法令では、定義がとても重要です。あやふやな記述では、意志的な法解釈が行われ、法令がなし崩し的に運用されてしまう恐れがあります。

特措法の条文でも、新型コロナの定義がしっかりと明文化されています(括弧が二重になってて多少読みにくい!)。

まず、「新型コロナウイルス感染症」を引き起こす病原体を「ベータコロナウイルス属のコロナウイルスに限る」と医学的に定義しています。さらに、「令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る」としており、このコロナウイルスの発生時期についての記述もあります。

こう記述することにより、例えば、30年後に今回の新型コロナとは別の全く新しい新型コロナウイルスが発生した場合でも、この条文の適用はできないということになります。つまり「今回のこの新型コロナだけ、この条文は適用できますよー!」ということです。

いかにも“法律の条文”ってカンジです。現実でこんな長い名称で呼ぶ人がいたら、落語の「寿限無」みたいになりそうです。

3)政府機関

既に厚労省のHPを紹介しているのでわかるとは思いますが、日本政府の公的機関等が新型コロナを呼称する場合は、本記事と同様「新型コロナウイルス(感染症)」としています。首相や官房長官、閣僚らが国会で答弁する際は、僕たちが一般に呼称するのと同じく「コロナ」などと言っているかもしれません。

4)メディア

メディアも同様で、基本的には「新型コロナウイルス(感染症)」としていますが、テレビ等で解説をする場面などでは、「新型コロナ」や「コロナウイルス」、「コロナ」と言っているのが見受けられます。

僕がおもしろいと感じたのは、Yahoo! ニュースのヘッドラインでの略し方です。

Yahoo! ニュースのヘッドラインは、必ず13.5文字以内で書かれます。人が一瞬で認識できる限界の文字数なんだとか(この短さゆえの「見出し詐欺」が起こるのね)。

この見出しに「新型コロナウイルス感染症」と記載すると、12文字埋まってしまいます。必然的に略さなくてはなりません。よく見るのは「コロナ」、余裕があると「新型コロナ」、最近ではわざわざ記載することなく「感染」だけの記載が多いですね。

そんななか、一度、「新型」とだけ記載した見出しを見かけたことがあって、「攻めたなー」と思わず感嘆の声を漏らしてしまいました。確かに、今の時期に「新型って何の話?」となる人はいません。「コロナ」より1文字少ないし、Yahoo! ニュース編集部としては救世主だったことでしょう。

僕は個人的には「コロナ」とは呼称したくありません。「コロナ」という名前が入っている会社が多数存在しているし、実際そういう企業が風評被害を受けています。なるべく「新型コロナ」と言うようにしています。「新型ウイルス」も良いかもしれません。

僕は「正式名称厨」なのでこんな記事を書いてしまいますが、どうでもいい人にはどうでもいい話です。どちらにせよ、手は洗おうな!

大学生、バイト収入が減ってピンチ!

大学生の中には、経済的に厳しく、学費や生活費をバイトで稼いだお金で支払っている人も多いと思います。そうした事情を抱えている学生も働いているであろう飲食店などでは、政府や都道府県からの外出自粛要請で客足が減ったり、休業要請で開店できず、シフトが減らされたりしている事例が多くあるようです。

バイト収入が減り、ピンチに陥ったら……!

1)奨学金新制度を活用する

学費が払えなくなってしまったら、まず大学事務に相談学費の分割納付や納付猶予の制度が各大学にあるはずです。相談せずにあきらめて休学・退学の道を選んではいけない!!!

そして、2020年度から進学・進級する学生向けの奨学金新制度を活用するのも有効な方法の一つ。この新制度は、授業料や入学金の免除・減額や給付型奨学金の給付が行われます。新型コロナの影響で家計が急変した世帯の学生も対象になります。また、緊急採用の奨学金(第一種奨学金/無利子貸与)と応急採用の奨学金(第二種奨学金/有利子貸与)もあります。
詳細は以下のリンクより。

2)休業手当を請求する

今度は、出ていくお金を減らすのではなく、もらうはずだったお金を取り戻す方法です。

アルバイトでも労働者です。労働者の権利は当然法律により守られています。労働基準法第26条には、「使用者の責に帰するべき事由」による休業の場合には、会社が休業手当(平均賃金の6割以上)を支払わなければならない旨が規定されています。シフトが減らされた場合も同様です。

今回の自粛要請(法に基づく休業要請は別かも)で休業した場合でも、経営判断と解され、「使用者の責に帰するべき事由」にあたります。

と言っても、会社側も経営が苦しく、休業手当なんて払えないのが実情です。そこで、国は雇用調整助成金制度(事業者が雇用の維持を図るために休業手当に要した費用を助成する制度)の要件を緩和し、緊急対応期間を設けています。これを活用すれば、事業者が労働者に支払うべき休業手当の多くを国が助成してくれます。

一度、自治体や最寄りの労働局にある電話相談窓口に相談してみるといいです。

バイト先が休業手当について何も連絡をしてこなかったら、こうした法律上の義務や助成制度を示して、休業手当を請求しましょう。もし、拒否されたら、労働基準監督署に駆け込むしかない!

以下、参考記事です。

一応、学生に限らず、新型コロナの影響で収入が大きく減ったりした場合などの支援策についてよくまとまっているサイトをご紹介しておきます。


オンライン授業でも授業料変わらず!?

新型コロナの影響で、大学に多くの学生を集めて対面授業を実施することができなくなりました。多くの大学は本年度前期の授業開始を遅らせ、オンライン授業を実施すると決めました。

オンライン授業実施で、多くの学生が疑問に感じたことがあります。それは、

「授業料は変わらないのか?」

というものです。大学に通えないのだから、大学の施設は利用できない。僕たちが通っている芸大・美大には対面指導を中心とする演習系の授業がありますが、オンライン授業になるとそれらが例年のようには受けられません。

例年より確実に授業の質は落ちてしまいます。決して大学が悪いわけではありませんが、客観的事実として質は落ちます。そもそも通信制ではない大学である以上、通学して対面での授業に価値があることは明確です。

例年より授業の質が落ちるとなると、授業料はどうなるのか。学生は、減額されて当然と考えます。

この減額を求める理由は、経済的に厳しいからではなく、「授業内容に見合った授業料を!」という当然の主張に基づいています。

では実際に、大学に授業料を一部返還せよ、と要求するにはどうすればいいのでしょうか。どういう理論で攻めればいいのでしょうか。

1)そもそも授業料とは?

ものすごく根本的な話から始めます。僕たちは授業料を大学に支払っているわけですが、何の対価としてお金を払っているのでしょうか。まあ、「授業」の対価なんですが、最高裁判決に以下のような記述があります。

(大学の授業料等は)一般に,教育役務の提供等,在学契約に基づく大学の学生に対する給付の対価としての性質を有するものと解され

最判平成18年11月27日民集第60巻9号3437頁[不当利得返還請求事件]

つまり、授業料は「入学時に契約した授業内容の対価」ということになります。これだけ読むと、「僕たちが入学した時に大学と契約した内容の授業が行われないのだから、対価として支払っている授業料の一部が返還されて当然」という主張が通ると思います。

2)法的なハードルは高い

しかし、別の最高裁判決を見てください。これは、「説明・宣伝された教育内容の一部が変更され実施されなくなったことが、不法行為かどうか」が争われた裁判です。不法行為であれば、債務履行等の請求ができます。

 (裁判要旨)
学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容や指導方法の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に教育内容や指導方法の変更につき裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものである場合に限られる。

 最判平成21年12月10日民集第63巻10号2463頁[教育債務履行等請求事件]

つまり、説明・宣伝された教育内容の一部が変更され実施されなくなったことが不法行為と認められるには、

①教育内容全体の中での当該教育内容の位置づけ
②当該変更の程度
③当該変更の必要性、合理性等
以上の事情に照らし、
④当該変更が学校側による教育内容や指導方法の変更につき裁量が認められていることを考慮してもなお
⑤社会通念上是認することができないものである場合に限る

と、これらのハードルを越えなければなりません。①や②が、今般の新型コロナの影響によるオンライン授業化には当てはまる可能性がありそうですが、オンライン授業化は感染拡大防止のために行うという必要性と合理性がありますし、そもそも大学には変更をする裁量があります。また、オンライン授業化が社会通念上是認できない変更とは言えないでしょう。

これにより、オンライン授業化に変更されたからといって、その分の授業料を大学に返還させる法的な根拠は乏しいと言わざるを得ないと思います。

3)学則は返還を認めていない

そもそも、多くの大学の学則では、休学以外の理由で、既納の学費を返還しないと定められていると思います。入学時に誓約書にサインした以上、返還はかなり厳しいでしょう。

4)大学側の事情

例えば、大学の施設を利用できないのなら施設費は返してほしいと学生が求めても、通学が再開するまでの施設維持費は当然かかるわけです。

また、オンライン授業化に対応するために、教職員は例年より激務をこなしていることでしょう。しかし、給与は変わらない。

こうした、大学側の事情というのにも、僕たち学生は意識を向ける必要があると思います。大学と学生が不必要に対立しても意味がない。

経済的に苦しく、学費納付が困難な場合の話ではありますが、僕は、大学に直接学費の減免等を求めるのではなく、国や自治体による大学への交付金や助成金を求めることのほうが効果的だと思います。

実際に、野党・国民民主党の玉木雄一郎代表は、経済的に苦しく学費が払えない学生、また、経営に不安を感じている大学への支援策として、 国から大学への交付金や助成金の交付・増額を政府に求めていくことを表明しています。


5)では言いなりか

だからといって、「授業内容に見合った授業料を!」という主張を引っ込める必要はありません。

本年度前期は確かに、納付する授業料と実施される授業内容は釣り合いませんが、4年間というスパンで考えればいいのです。

まず前提として、本年度前期のオンライン授業をできるだけ例年の授業の質に近づけるよう大学に求めます。そして、後期以降に振替授業等を求める。また、余剰分の授業料を、学生に有益な形で還元することを求める。大事なのは、4年間で受ける授業と4年間で支払う授業料を釣り合わせることです。

学費は高額です。私立だろうが国公立だろうが。そうした授業料と授業の質について考えることはものすごく大事なことだと思います。自分が支払った授業料は適切に使われているか。この意識は、税金の使い道が適切かどうかを考えることと似ているし、納税者・有権者となったときに必要なものだと思います。

以下、参考記事です。


改正著作権法前倒し施行へ

昨年度後期、知的財産法の講義を受けていたので、オンライン授業と改正著作権法の関係についても触れたいと思います。

政府は4月10日、新型コロナの感染拡大を受け、教科書などの著作物をインターネットなどによる遠隔授業で使用できるようにする改正著作権法を28日に施行する政令を閣議決定しました。

そもそも著作権法では、権利制限規定(著作権者の権利を制限する=著作権(禁止権等)が及ばず、無許諾・無償で利用できる旨の規定)として、「私的使用のための複製」(第30条)、 「引用」(第32条)、「学校その他の教育機関における複製等」(第35条)、「営利を目的としない上演等」(第38条)などがあります。

現行著作権法でも、 第35条の権利制限規定により、必要と認められる限度において著作物を無許諾・無償で利用できます。しかしこれは、著作権者の利益を不当に害することになる場合を除きます。これまでは、対面授業での「複製」と対面授業(主会場)を遠隔地(副会場)へリアルタイムで配信(遠隔合同授業)するための「公衆送信」は認められていました。

しかし、リアルタイムではないオンデマンド授業で講義映像や資料を送信したり、教員の目の前に生徒がいない形でのリアルタイム配信授業をするなど、無断で行う遠隔合同授業以外の公衆送信は違法でした。ですので、これらを行おうとすると、いちいち著作権者に許諾を得る必要があったのです。これでは、著作権者側も利用者側も手続きが煩雑で、教育の情報化が進みません。こういった経緯から、第35条の権利制限規定が見直されることになり法改正がなされました。

改正著作権法は2018年5月に成立しています。一定の補償金を「授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS)に支払えば、無許諾で著作物を利用できる仕組みにしました。法律の規定上、公布の日から3年以内に施行する予定でしたが、補償金の額などを巡って関係者間で協議が続き、施行の日にメドが立っていませんでした。

しかし、新型コロナの感染拡大により、オンライン授業(遠隔合同授業以外の公衆送信)はもはや必要不可欠となり、一刻も早い同法施行が求められていました。そこで、SARTRASも20年度に限り、教育機関側から補償金を徴収しない特例措置を導入することを決めました。

こうして、改正著作権法は前倒して施行されることが決定し、オンライン授業への法的な環境整備が進んだというわけです。

以下、参考記事です。

芸術文化が軽視されている今、振り返るべきこと

芸大に通っているが(今は自宅だけど)、僕が在籍している学科は、編集やライティングを学ぶところです。あまり「芸術家」という分野ではない気がします。しかし、周りの学生は、それぞれが追い求める「芸術家」になるために日々学んでいます。そういった環境に身を置いていると、自ずと「芸術文化」についての話題や情報が耳に入るようになります。

新型コロナの影響で、ミニシアターへの客足が減りあるいは休館になり、舞台公演や展覧会は中止になり、ライブハウスは「クラスター」の発生場所になってしまった。こうした施設を経営している人たちのほとんどはフリーランスです。当初、政府によるフリーランス向けの支援はかなり手薄でした。首相の薄っぺらい演説では飯は食えません(強い要望を受け、支援策は強化されました)。

また、この緊急時において、芸術文化は「不要不急」であるという見方さえ広がっているのも確かです。

ドイツのメルケル姉さんが「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」との演説をぶちかまし金をばらまいた一方で、日本の文化庁長官様様は「日本の文化芸術の灯を消してはなりません」「明けない夜はありません」とポエムを発表しただけで、具体的な補償内容には一切触れませんでした。あんなに繊細な歌いだしの井口理がTwitterで鋭く突っ込んでいたのは記憶に新しいでしょう、みなさん。

(ドイツが芸術家に優しいのは、再び美大落ちのチョビ髭男に不満を持たせてしまうことを恐れているに違いない!)

戦争などの緊急時、最初に制限・規制対象になるのは芸術文化だということは、歴史が証明しています。先の大戦では、表現物は検閲され黒塗りに、音楽・映画は戦意高揚の道具として利用されました。でも平時では、「クール・ジャパン」といって日本の長所であるとアピールするんです。非常に都合がいいですよね。

政府からも社会からも、芸術文化は軽視されている。これは、この「コロナ禍」が証明してみせた歴然たる事実だと思います。

悔しい思い、そして怒りを覚えている芸術家は多い。でも、ここで振り返ってみたいことが僕にはあります。

芸術文化の人間が、他分野・他業種を軽視してきませんでしたか? ということです。

最近で言えば、まだ国民一律現金をするのかしないのか、議論の途中だったころ、「お肉券」や「お魚券」を配布する案が自民党内で検討されているという一部報道がありましたが、芸術文化・フリーランスへの支援を求めていた人たちはこれに対し猛烈に批判しました。「ここにきて利権優先か!」「私たちへの支援は!?」と。

確かに、まずは生活支援をする段階で消費喚起になる商品券等の配布案は、感染症対策としても最悪ですし、そのほかの支援がまだ不十分の段階では、あまりにもばかげているように感じます。しかし、農水産業だってこの新型コロナの影響で困っているはずです。農水産業の業界団体が自民党とのパイプを生かして、なんとか救ってもらおうと陳情すること自体は何も間違っていることではないはずです(しかしそれを真に受けて本当に政策にするのは次元が違うけど)。

なぜ「確かにみんな困っているよね。でも、」という話ができないのか。なぜ「お肉券」「お魚券」を必要以上にバカにした態度で揶揄するのか。自分たちが困っているのに、「お肉券」のその奥にいる困っている生産者の存在を想像できないのか。僕は、芸術家たちの批判のトーンにどうしても納得いきませんでした。

原発事故のときもそうです。芸術家や文化人たちの多くは「反原発」の立場をとっています。「原発をいますぐ止めろ」「原発をなくせ」と官邸前でシュプレヒコールをあげた彼らは、運転停止・廃炉によって経済的打撃を受けた原発の関連会社や立地都市のあらゆる産業で働いている人に、支援の手を差し伸べましたか? 原発関連全体をもはや悪のように見なして、軽視していませんでしたか?

公共事業も同じです。「人からコンクリートへ」などという標語にのせられ、政治家と癒着した土建屋は悪だというメディアにのせられ、どんどん潰れていく地域の建設会社に支援の手を差し伸べることなんてありませんでした。

芸術家は、良くも悪くも理想主義者だと思います。芸術文化と国からの助成金の関係など、「あいちトリエンナーレ」などで表面化した問題では専門家でしたが、政治・外交・経済など、専門外の分野では基本的に理想を語っている印象です。別にそれでいいんです。日本周辺の安全保障環境の変化は気にしないで「沖縄に米軍基地はいらない」。放射能は恐ろしいから「原発いらない」。法律の条文なんて読んでないけど「戦争になる。憲法を守れ」。ムダは仕分けで減らした方が良いから「コンクリートから人へ」。連敗している選挙の総括はろくにしないで「アベはやめろ」——。

芸術家たちは理想を語っているなかで様々な人を見捨てきました。しかし、その見捨てられる番が自分たちになると口々に叫ぶんです。

「助けて! というか助けろよ!」と。

特定の業種はメディアに弱者・ 味方認定され、強者・敵認定された業種は見捨てられてしまう。この国でよく見られる分かりやすい構図です。芸術文化の人間も、その敵を一緒になって棒でぶん殴っていたんです。その棒で将来の自分を殴っていることも知らずに。

芸術文化は尊い。芸大で学んでいる身として強く思います。しかし、優位に立っているわけではない。決して偉いわけではない。他の分野やどんな業種も同じように尊い。そこに同じ人間が、汗水たらして働いている限り、絶対に尊いんです。それを忘れてはいけないと思います。

「自粛・休業要請するなら補償しろ」問題が示すもの

まず、この記事とツイートをご紹介したいです。

この記事を読んでもらえれば、僕の思っていたことは全てわかってもらえるんですが、少し具体例を出して説明したいと思います。

一番のポイントは、この記事を書いた佐々木俊尚さんがTwitterでも引用していますが、

今求められているのは、悪をただ糾弾するだけでなく、構造の改修を考え、全体最適化をつねに念頭に入れたメディアであり、そういう報道を支えていく人たちである。

という部分です。

佐々木さんは見事にこの国のメディアと国民の問題点を言語化したなと思います。全体最適化、ざっくり言えば日本全体を良くすることですが、これを目指すには、ただ悪を糾弾しているだけではだめで、構造そのものを改修しなければならない(そういうことを念頭に入れたメディアや国民が求められている)、ということです。

これは、新型コロナで政府や都道府県から出されている自粛・休業要請と補償の問題に当てはめて考えることができます。

3月下旬、新型インフル等対策特措法に基づく政府・都道府県新型コロナ対策本部が設置される以前から、「お願いベース」と呼ばれる法律に基づかない「自粛要請」が行われていました。特措法に基づく緊急事態宣言が発令された後は、法律に基づく「外出自粛要請」(第45条1項)や「休業要請/指示」(第24条9項、第45条2項/第45条3項)が行われています。

しかしどちらにせよ、自粛や休業をした事業者への直接的な補償はされていません。国民には一律10万円の現金給付が行われますが、事業者への補償については、都道府県が国からの交付金等も活用して「感染拡大防止協力金」などの名目で支給される10万円~100万円にとどまっています。

しかし、これは仕方ないことでもあります。特措法は私権制限に慎重な立て付けになっており、海外のようないわゆる「ロックダウン(都市封鎖)」のようなことはできません。住民や事業者に対してはあくまでも「要請」や「指示」しかできません。罰則規定もありません。

そうなると、国民への強制力がないのに補償はできません。政府が補償をするという法的な枠組みは存在しないのです。

確かに、政府が「補償をする!」といって金をばらまければいいですが、予算も民主主義です。国会での審議を待たないと予算は執行できません。政府の強権発動や国民の私権制限を、戦後一貫して「平和憲法」のもとで避けてきたのが日本です。それを国民も求めてきました。

しかし、「政府ははやく補償をしろ!」という声は絶えません。

この問題でいう「構造」とは、「政府に補償義務を負わせる規定がない特措法」であり、「悪」とは、「補償をしない政府」になります。

全体最適化、つまり「苦しんでいる事業者への補償を速やかに行う」ことを目指すには、「悪=補償をしない政府」をただ糾弾するだけでなく、「構造=補償規定のない特措法」を改正(改修)して補償規定を創設することが求められている、ということになります。

メディアにとっては「悪」を批判する方が目立つ。しかし、本当に全体最適化を目指しているのなら、「構造」の改修をしないともうどうにもならないはずです。それこそが国民の利益になると思います。

メディアや国民、それに「構造」の改修をしなければならない当事者である国会議員までもが「悪」の糾弾に躍起になっているいますが、そろそろそんなことはやめて、有効な解決手段をとってくださいなという話なんです。

だいぶ長くなりました。

これ以上の感染拡大、犠牲者の増加、経済の衰退、人々の疲弊が進まないように、僕たち一人ひとりの行動変容が求められています。

手を洗って、家に居ようね!!!!!!

#StayHomeSaveLives



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